Millennials:Gen Zは「集って」働きたい

MILLENNIALS NOW

ミレニアルズの今

Quartz読者の皆さん、こんにちは。若者たちは今、ビジネスにカリスマを求めてはいません。より身近な個性とコラボレーションし、個から“コレクティブ(集団)”を形成しているZ世代。彼らの働き方の変化と、その裏側にある心理を考察えます。

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ボーダレス化する社会、ギグ・エコノミーの普及、そして、専門家でなくても個人が誰でもサービスを開始できるパッション・エコノミーの始まりなど、若者の働き方は多種多様になっています。

特に、Z世代(1995年または1996年以降に生まれた世代)は大不況期に成人を迎えたミレニアル世代とは異なり、記録的な低失業率好調な経済のなかで生きていました。

2019年、Z世代は世界人口の32%、つまり地球上の77億人のうち24億7,000万人を占める世代となり、ミレニアル世代とベビーブーマー世代をそれぞれ上回りました

米国においては、2020年の有権者の10人に1人がZ世代(約2,400万人)。11月の大統領選で投票する機会をもつことになる彼らの政治的な影響力は、今後数年間で、着実に拡大していくことになるとも予測されています。

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Image: 6月21日、米タルサで開催されたトランプの集会にて。REUTERS/LEAH MILLIS

デジタルテクノロジーが進化し、仕事のやり方はさらに柔軟になるなか、その大きな変化を担うことになるZ世代は、今、実際にどのような働き方を求めているのでしょうか?

Common Humanity

物理的なつながり

まず、Z世代は、あらゆる世代のなかで人種的・民族的に最も多様性があります。2018年時点で、米国におけるZ世代の白人の割合は52%、25%がヒスパニック系、14%が黒人、6%がアジア系、4%がその他の人種です。

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また、高学歴でもあり、高校中退の割合は低く、大学進学の割合が高くなっています。さらに、常にオンラインな状況で生活するデジタルネイティブで、“スマートフォンが登場する以前の世界”の記憶がほとんどないのも特徴です。

それゆえ、コミュニケーション能力や寛容性に優れているのは自然なことですが、興味深いのは、物理的な場におけるコミュニケーションも大事にするということです。

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2017年、国際インターン・リーダーシップ会議(IILC)で行われたZ世代を対象とした調査は、興味深い結果を示しています。

まず、Z世代の90%が、仕事やチームとの交流において、何らかの人間的な要素に対する関心を示しています。彼らは「協力的でチームワークのよい環境」を、職場においては「オンラインやソーシャルメディアでの接触を超えたポジティブな関係」を求めているといいます。

また、63%が「チームで仕事をする際に多様な教育・スキルレベルをもつ人々と一緒に仕事をすること」が最も重要であると感じており、さらに20%が「異なる文化(民族・出身)背景をもつ人々がいることがチームにとって最も重要な要素である」と考えています。

“つながり”を大事にするその姿勢は、今回のパンデミックで図らずも促進されたリモートワークのなかでも重視されているようです。

ソフトウェア会社Smartsheetが米国で働く1,000人を対象とした2020年4月の調査によると、Z世代のうち48%が「リモートワークに切り替えてから同僚とのコミュニケーションが困難になった」と答えています。ミレニアル世代の46%が同様に回答していますが、対するX世代は35%、ベビーブーマー世代は36%でした。

REUTERS
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別の調査も、若年層がリモートワークに苦戦していることを示唆しています。

不動産や投資運用を専門とするサービス会社JLLが3,000人の労働者を対象に行った2020年6月の調査では、労働者全体の58%が「オフィスが恋しい」と回答しているなか、35歳未満の労働者はさらに高い、65%という割合を占めています。

若年層には独身者の割合が高く、社会的な人付き合いから離れ、孤独な時間を過ごしている可能性が高いと考えられます。常にデジタルでつながっているようにみえるZ世代ですが、その実、生活の大部分を占める“働く時間”においては、人とのつながりを必要としているのです。

The Power of Parental Influence

親のX世代の影響

調査機関Center for Generational KineticsのZ世代に特化したコンサルタントであるジェイソン・ドーシーは、「Z世代は“本当に”違う」と話します。そして、 その動向は親であるX世代の影響を大いに受けているとも述べています

1965~1980年頃に誕生したX世代は、その働き盛りのときにリーマンショックを体験しています。そして、それゆえに、子どもにあたるZ世代に対して堅実な生き方を教えているというのが、ドーシーの見立てです。

一般的に、年齢が高くなればなるほど経済観念が育つものと思われますが、調査会社CivicScienceによると、同じZ世代でも、18〜24歳に比べてより若い18歳未満の層の方が、むしろ「自分は家計に対して責任がある」と考えていることが明らかになっています。

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お金に堅実な彼らは、働くことに対しても我慢強いのかもしれません。Deloitteの調査によると、ミレニアル世代の約4人に1人は、現在の仕事について「評価されていると感じられないため、今後2年以内に今の仕事を辞めるかもしれない」と答えていますが、同じ理由を挙げているZ世代は、15%に過ぎませんでした。

また、Z世代はミレニアル世代と比較して収入の大部分を貯蓄しているようで、家計管理アプリ「Mint(ミント)」やお釣り投資アプリ「Acorns(エイコーンズ)」のようなツールを使って貯蓄そのものを楽しんでいる可能性が高いともされています。

こうしたZ世代の慎重な性格は、他の面でも表れています。Kantar Consultingの最高知識責任者であるブライアン・ギルデンバーグは、Z世代は 「年配のような若者グループ」だと断言しています。

彼らは飲酒量が少なく、薬物の摂取量も少なく(有害とは考えていないマリファナを除く)、セックスの回数も少ないというのがその理由ですが、実は、ここにはX世代との類似点を見出せます。X世代の多くはエイズの流行やナンシー・レーガンの「Just Say No(ただノーと言おう)」キャンペーンを経験し、セックスやドラッグを危険視していました。

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Image: レーガン夫妻、1994年。REUTERS/MIKE THEILER

「ベビーブーマー世代は『過保護(helicopter parent)』であり、我が子の世代であるミレニアルズを、意図的に自分たちとは違うタイプに育てようとしてきました」と、前出Center for Generational Kineticsのドーシーは述べています。

「一方のX世代は、Z世代が楽になることを心から望んで堅実に育てたと言えます。彼らは、自分の子どもたちにミレニアル世代のようになって欲しくないと思っているのです」

INDEPENDENT AND POSITIVE

GenZは失敗を恐れない

慎重な姿勢をもつ一方、Z世代は、その起業家精神の豊かさでも特徴づけられます。

調査・コンサルティング会社Millennial Brandingによると、高校生の4人に3人近くが「いつかは起業したい」と答えています

仕事で成功するために、何が必要なのか。Z世代は「知識」よりも「ふさわしい取り組み方」をもつことが成功の鍵だと考えています。調査では、Gen Zの70%が、特定のスキルや専門知識よりも、好奇心旺盛でオープンマインドであると思われることが重要だと考えています。

彼らは新しいチャレンジも怖れません。最近の報告書によると、Z世代の80%が、プロジェクトの中で学習し、イノベーションを生み出すためには失敗を受け入れるべきだ考えています。さらに、そのうち97%が「継続的に、または大きなプロジェクトやタスクを完了したあとに」フィードバックを受け取ることを望み、63%が「1年を通して、タイムリーに建設的な」フィードバックを受け取たいと考えています。

その背景には、Z世代が日々新しいシステムやプラットフォームを学び、適応するよう常に訓練されていることもあるのでしょう。適応力の高さゆえに長期間の集中力に欠けるともいわれますが、新しい情報が入ってくるたびに自分の考えを編集する能力の高さは明らかです。

ミレニアル世代にはない、Z世代に特有の真面目さと野心。とくに野心については、Z世代にとっての“人生の目標”は「お金を稼ぐこと」や「キャリアで成功すること」。これもまた、ミレニアル世代とは異なる、興味深いポイントです。

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BE COLLECTIVE

快適なコレクティブ

YouTuberをはじめ、インフルエンサーなどのより身近にいる有名な存在とともに育ったきたZ世代。そういった環境のなかで、彼らは、自分自身の才能に対して冷静で、著名人ではなく身近にいる個性豊かな人々とタッグを組み、“コレクティブ(集団)”としての存在感をつくり出します。

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個人主義と起業家精神への強い想いは、和気あいあいとしたコミュニティへの忠誠心というかたちで表れています。共通の関心をもつグループ間を簡単に行き来し、同時に複数のマクロ/ミクログループに所属するのも、この世代の特徴です(ミレニアル世代は副業をスタンダードにした最初の世代であり、実際に37%が副業しています)。

たとえば、英国発の「NiNE8 Collective」は音楽制作や、モデル業、服のデザインをするなどに特化したアーティスト集団。ジャンルにとらわれず、それぞれがもつ個性を活かし、活動しています。

フロリダのマイアミを拠点とする「(f)empower」は、多様性のある人種が集まり、女性問題や人種差別問題、環境問題などに対して幅広く取り組んでいます。また、Quartz Japanのニュースレターで配信した「African Youth」特集に寄稿してくれた「Melanin Unscripted」は、アフリカに特化したクリエイティブプラットフォーム&エージェンシーとして世界中のメディアで活躍しています。

Collective Intelligence(集団的知性)”に対する理解が深いZ世代。個人では発揮できない知性を集団で動くことで生み出す働き方は、彼らにとって理に適っているのです。

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Image: NiNE8 COLLECTIVE VIA FACEBOOK

This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

  1. パンデミック下の動画制作トレンド。ほとんどの動画コンテンツの撮影がコロナ禍でキャンセルされた一方、新たな重要が生まれています。マーケティング担当者とビデオ編集者をつなぐプラットフォームを運営するVidMobによると、ここ数カ月で求められているスキルは「既存の動画素材をソーシャル向けの広告に使える映像に再加工する技術」。同社の新規顧客数は第一四半期で前年比100%増となっており、創業者兼CEOのAlex Collmerは、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)変革を目撃していると話します。
  2. FacebookがMVストリーミングに着手。Facebookは、来月にも米国でMV(ミュージックビデオ)のストリーミング配信を始める準備をしていると伝えられました。現在はレーベルに所属するアーティストの全編をFB上で公開するのはライセンスの問題で禁じられてきましたが、昨年12月にユニバーサル、ソニー、ワーナーの3大レーベルと権利交渉を進めていることをBloombergが報じていました。ストリーミング強者であるYouTubeに真っ向から果たし状を突きつけた格好です。
  3. ソーシャルディスタンシングのモラルは“賢さ”の指標に。米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された研究論文によると、ソーシャルディスタンス(社会的距離)やマスク着用のルールを守ろうとする人々は、作業記憶(ワーキングメモリ)容量が優れているそうです。ワーキングメモリとは、情報を保持し、同時に処理する能力のことで、賢さ、理解力、問題解決力と強く相関があります。
  4. Amazonのスマートな食料品カート。Amazonは7月14日、商品追跡と精算プロセスを自動化するショッピングカート「Dash Carts(ダッシュカート)」を発表しました。これは、年内、LAエリアにオープンを予定するAmazonの食料品店で導入されます。ダッシュカートは、Amazon Goで導入されたレジなし技術の「Just Walk Out(ジャスト・ウォーク・アウト)」をもとに開発されたもの。リアル店舗でのショッピング体験を増やす同社の取り組みは、他社と一線を画すかたちで加速しています

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