Africa:「観光大陸」は立ち直れるのか

Wednesday: Africa Rising

躍動するアフリカ

ロックダウンは、多くの産業に損失をもたらしていますが、なかでも観光産業は大きな打撃を受けています。アフリカにおける損失は、甚大なものとなりました。英文記事はこちら(参考)。

Image for article titled Africa:「観光大陸」は立ち直れるのか
Image: REUTERS/MIKE HUTCHINGS

Covid-19に対するアフリカ諸国の対応は、非常に素早いものでした。国境は早々に閉鎖され、これまでアフリカを悩ませてきた結核やHIV、エボラ出血熱といった伝染病に対処してきたプロトコルが、展開されました。

その結果として、アフリカの観光産業は甚大な損失を被ることになりました。

観光産業は、大陸全体で2,460万人の雇用(総雇用の6.8%)を創出している巨大な産業です。急成長を続けてきたアフリカの観光産業は、最大1,200億ドルの損失数百万人の雇用を失う可能性があります。

worst case scenario

最悪の場合

7月、Safaribookings.comが306のサファリオペレーターを対象に調査したところ、新型コロナウイルスの影響で、オペレーターたちの90%以上が、75%以上の予約減少に直面したことがわかりました。

世界旅行観光評議会(WTTC)のシナリオでは、大陸全体のGDPに与える被害は、最善の場合でも530億ドル。最悪の場合、1,200億ドルの損失になるだろうとしています。

マンチェスター大学とケープタウン大学で研究している経済地理学者アニカ・スルマイヤー博士は、「観光産業は世界最大の産業のひとつであり、アフリカのGDPの7%を占めている」と言います。

「COVID-19の感染拡大を防ぐために国がとった封鎖対策、旅行禁止対策は観光産業に壊滅的な影響を与え、何十万人もの人々、とくに女性貧しいコミュニティの人々が職を失うことになりました」

アフリカで100軒近くのホテルを展開しているラディソンホテルグループのティム・コードン(中東及びアフリカ担当上級副社長)は、同社はできうる限り雇用を維持しようと試みたと言います。「われわれは、時間短縮や一時的なレイオフ、あるいは本業以外のビジネスにおけるコスト削減に焦点をあててきました。しかし、昨年並の業績レベルに回復するのに、2年はかかるでしょう」

tourism beyond safaris

目を見張る成長

パンデミックの発生は、アフリカ大陸全体の観光産業が世界2位になるほどの急速な成長をみせていた、まさにそのときに起きた出来事でした。

アフリカでの観光といえば、真っ先にサファリ体験が思い浮かびますが、近年はサファリ以外の観光が海外からの観光客の関心を引きつけてきました。

Image for article titled Africa:「観光大陸」は立ち直れるのか

たとえば、ガーナでは2019年に「ガーナ帰還年(Year of Return)」キャンペーンを展開(最初の奴隷線が北米に到着してから400年の節目を迎えるとするキャンペーン)。音楽祭をはじめさまざまなイベントが開催され、約100万人の観光客を迎え入れることになりました(2009年は約80万3,000人)。

また、アフリカではAirbnbのサービスが急速に拡大しており、2018年には南アフリカ・ケープタウンのタウンシップで「Airbnb Africa Travel Summit」が初めて開催されました。エチオピア航空は、アフリカ大陸内を航行する新しい路線を提供し、エチオピアの首都アディスアベバは中継地として発展、同市のボレ国際空港はアフリカへの玄関口としてドバイ空港を上回る国際ハブ空港になったのです。

Image for article titled Africa:「観光大陸」は立ち直れるのか
Image: REUTERS/SIPHIWE SIBEKO

そうした“上げ潮”の動きは完全には消えておらず、ラディソングループは7月初旬にも南アフリカ、マリ、ナイジェリア、ガーナ、エチオピアに6つの新しいホテルを完成させると発表しています。

しかし、アフリカ各国の国内での規制はもちろん、米国、英国、そして中国など従来の“顧客”からの出国が減り、業界自体はほぼ“待ち”の状況にあるといえるでしょう。

Republic of South Africa

南アフリカ

アフリカ2位の観光国・南アフリカは、150万人の雇用総雇用の9.1%)とGDPの7%を、観光産業に頼っています。

同国の観光大臣による7月の発表は、2020年の観光業による国家予算が75%減少し、43万8,000人の雇用が失われる可能性があるという、耳を疑うような内容でした。

南アフリカでは3月下旬に厳格なロックダウンを導入。いまだ感染拡大は止まらず、観光産業が完全に再開されるのは2021年以降になるともいわれています。

Image for article titled Africa:「観光大陸」は立ち直れるのか
Image: REUTERS/SIPHIWE SIBEKO

ホテルをはじめとする旅行業者は、混乱する政府発表に右往左往させられることになりました。6月、ラマフォサ大統領は宿泊施設の再開を宣言し、3週間後に通達を出したものの、その翌日に誤りがあったと発表、実際にはレジャー目的の宿泊はまだ禁止されていると発表したのです。

あるロッジのオーナーは、政府の支援を受けずに4カ月間閉鎖していたものの、宿泊を希望する客を歓迎していたと報告しています。他の多くの宿泊施設も、ルールを破るか閉店するかの選択を迫られていたが、同じような対応をしていました。

政府が彼らの声に応えたのは7月末のことで、そのころにようやく、州内レジャー観光の宿泊施設が正式に再開できるようになりました。

Republic of Kenya

ケニア

ケニアの観光産業は、大陸第6位。2019年時点では、国家経済の8.2%総雇用の8.5%を担っていました。2020年は、現時点でも7億5,000万ドルの損失を計上しており、年末までの歳入は、少なくとも60%減少すると予想されています。

南アフリカと同じように、ケニアも国際観光に依存しています。ただし、2013年の「ケニアショッピングモール襲撃事件」を経た同国では、国内観光市場がより発達しています。ケニアの昨年の観光収入のうち66%は国内観光によるもので、現在の状況では希望に満ちた数字といえるでしょう。

ケニアでは、確認されている新型コロナウイルス感染者数が南アフリカに比べてはるかに少なく、8月には特定の国との国境を再開する準備をしています。また、7月上旬には国内観光を再開し、1.5メートルの社会的距離やPPEの使用などを含むプロトコルを導入しています。

Kingdom of Morocco

モロッコ

アフリカ第4の観光地であるモロッコは、年間約1,100万人が海外から訪れており、2019年の観光事業は国のGDPのうち12%を占めていました。

4カ月前にロックダウンし、7月に国境を再開しましたが、それも市民および外国人居住者にのみ開かれている状況です。観光事業の専門家は、2020年は1,050万人の旅行者を失うとみています。

Arab Republic of Egypt

エジプト

パンデミックが直撃したとき、エジプトは国際的な観光事業の不振からちょうど浮上していたところでした。

3月のシャットダウンを経て、5月、国内向けの観光事業が特定の条件のもと再開されることになりました(たとえばホテルは、25%の稼働率で営業できる)。国際観光事業は7月に再開していますが、アフリカで2番目に新型コロナウイルスの確定感染者数が多いため、海外からの旅行者の抵抗は少なくないでしょう。

Image for article titled Africa:「観光大陸」は立ち直れるのか
Image: REUTERS/MOHAMED ABD EL GHANY

headlines from Quartz Africa

今週のヘッドライン

  1. 中国が支援する人工衛星。昨年12月に中国の支援のもと人工衛星「ETRSS-1」を打ち上げたエチオピアでは、9月にも2機目の衛星打ち上げが迫っています。地球観測用ナノ衛星「ET-SMART-RSS」は、中国・海南省の発射場から打ち上げられる予定で、気象パターンを分析して干ばつへの備えを強化することになります。──August 26
  2. パンデミック不況の最新データ。ナイジェリアの統計局が発表した最新の報告によると、今年の第2四半期のナイジェリア経済は前年同期比6.1%減となりました。この減少は、過去10年間で最も急激な落ち込みとなりました。特に同国経済の中心地であるラゴスでは感染者の増加が続いており、経済はまだ完全には再開されていません。これまでのところ、ナイジェリアでは52,000人以上の感染者と1,002人以上の死亡者を記録しています。──August 25
  3. マリ国民は大統領の失脚を祝う。西アフリカのマリの首都バマコでは、21日、大勢が通りに繰り出し、同国軍によるクーデターを祝福しました。マリでは18日、軍の一部兵士がクーデターを起こし、イブラヒム・ボバカル・ケイタ大統領をはじめ複数の政府関係者の身柄を拘束。ケイタ大統領らは、同日のうちに自身の辞任および議会の解散を発表していました。──August 20

(翻訳・編集:年吉聡太)


このニュースレターをシェアしたいときは、ご自由に転送ください(転送された方へ! 登録はこちらからどうぞ)。

👇のボタンでニュースレターをTwitter、Facebookでシェアできます。Quartz JapanのTwitterFacebookでも最新ニュースをお届けしています。

🎧Quartz JapanのPodcastは“耳で聴く”グローバルニュース。最新エピソードでは「女性のウェルネス」について語り尽くしています。。