Millennials:ピクニック・ブームを狙え!

Thursday: MILLENNIALS NOW

ミレニアルズの今

パンデミックによって屋内で過ごしづらくなった若者のあいだで、「外」が重要なキーワードになっています。Z世代の新ミームによる影響、簡単にパーティができるサービスなど「新しいピクニック」のカタチを追います。

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穏やかな日差しと吹く風が気持ちよい季節、米国人にとっては、ピクニックで友人や家族と余暇や週末をゆっくりと過ごすのが定番です。全米レクリエーション・パーク協会(NRPA)が2019年に発表した世論調査によると、同年夏、地元の公園やレクリエーション機関が主催する屋外レクリエーション活動に参加する予定だと答えた米国人は91%にも及びます。

なかでも家族や友人と公園に集まってゲームやピクニック、バーベキューをする人は58%を占めるほど、大多数が「ピクニック好き」。ミレニアル世代に至っては62%にも上っており、彼らが外で過ごすのを好んでいることがわかります。

しかし、今年はロックダウンや外出制限により、彼らの外出する機会は格段に減りました。ロックダウンが緩和されたあとも外で集まる人数は各州で制限され、かつてのように自由に集まるのが難しくなりました。

こうした状況下でも、屋内よりは安全とされている屋外で楽しみたい……そんな願いを叶えるために今、若者たちは「新しいピクニック」のカタチを見出し始めています。

SOCIALIZE OUTSIDE?

屋外こそ安全

1692年版の『Origines de la Langue Française』には、ピクニックの語源はフランス語の「pique-nique」に由来していると言及されています。

1950年代のピクニック
1950年代のピクニック

この言葉は、レストランで食事をするグループの参加者がそれぞれワインを持ち寄ることを意味していました。そこから「参加者が食べ物や飲み物を持ってくる」というコンセプトがそのまま残され、ピクニックとして使われています。

狭義のピクニックは「遅い朝や昼間にとる朝食(ブランチ)」を指しますが、昼食会や夕食会といったイベントとして開催されることもあります。

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コロナ下における安全性はどうでしょうか? 専門家は、ウイルス感染のリスクは屋内よりも屋外の方がはるかに低いと話していて、友人との時間を過ごしたいのであれば、外で集まる方がよいと言います。

「外は間違いなく屋内より安全ですが、重要なのは外でどう過ごすかによります」と、比較免疫学者でダートマスのマサチューセッツ大学の生物学教授であるエリン・ブロマージュは『The New York Times』に対して述べています。

日本のある研究では、新型コロナウイルスに感染する確率は、屋外よりも屋内の方が 20 倍近く高いことがわかりました。屋外での集会では、空気の流れがウイルスの飛沫を分散させ、日光によってウイルスの一部を殺すためリスクが低くなるとされています。また、開放的な空間では、ウイルスが濃縮された量で蓄積されて吸入されるのを防げると、レスター大学のウイルス学者ジュリアン W. タン博士は話しています

とはいえ、外であっても密集した空間になってしまえば意味がないので、少人数で集まることが重要になります。

REMAIN CONNECTED

ミレニアルは祝いたい

誕生日にバチェラー・パーティ、あるいはプロポーズ、結婚、そしてベビーシャワー。ミレニアル世代は、今まさに人生の大切な節目を迎えています。パンデミック下であっても、何か別の手段があるならばイベントを実行したいと思うのも当然です。

とくに“経験を大切にする”とされる同世代にとって「お祝い」ができないのは、非常に残念なことでしょう。

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ミレニアル世代からの支持を集める『Refinery29』は、800人以上の読者を対象に調査を行いました。

その結果、44%が自分の住む州以外で行われるデスティネーション・ウェディング(海外挙式やリゾート挙式のこと)に参加したことがあり、33%が過去1年間に誕生日パーティに参加したことがあることがわかりました。また、5人に1人が、お揃いの衣装や写真撮影を伴う“インスタ映えする”ようなグループ旅行に参加したことがあると回答しています

ミレニアル世代は、なぜここまでイベントへの参加にこだわるのでしょうか?

人間関係の研究を専門とする社会学者のジェシカ・カルビーノ博士は、「ミレニアルズは、教会へ行くこともなく、故郷からも遠く住んでいる人が多いので、人間関係が希薄になっているといえます。そのため、自分のコミュニティを確立し、つながるためにイベントに参加したいと思うのです」と話しています。

ミレニアル世代は友人同士のコミュニティをキープするために、ピクニックのような身近な「集まり」そのものを特別なものとして捉えているのかもしれません。

#Cottagecore

Z世代とピクニック

ミレニアル世代とも異なる価値観をもったZ世代でのピクニック熱をさらに盛り上げている要因として、「Cottagecore(コテージコア)」も挙げられます。

Cottagecoreとは、「Cottage(田舎小屋)」+「core(中核・熱狂的な)」を組み合わせた造語で、田舎の生活をロマンチックに解釈した美学およびその暮らし方を意味します。自然に囲まれた場所やコテージでノスタルジックなワンピースを着てピクニックをしたり、刺しゅうをしたりお菓子を焼くなど、自然と一体になることでその世界観を楽しむトレンドです。

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ゴシックでクラシックなものへの偏愛をソーシャルメディア上で共有する「Dark Academia(ダークアカデミア)」がパンデミック下で流行しましたが、Cottagecoreも同じく、もともとはTumblrから始まったミームです。主にZ世代からの支持を受けていますが、現在知られているスタイルが確立されたのは2018年後半。今やTikTokで#Cottagecoreを検索すると、38億回も再生されています。

DazedDigital』によると、一部の人たちはCottagecoreに対して「白人の農園主が先住民から土地を奪った歴史の時代を、ロマンティックに描いている」と指摘していますが、このミームが魅力的なのはあくまでも「現実からの逃避するファンタジー」である点にあります。「コテージコーラー」たちは、差別が横行していた過去から目を背けているわけではありません。あくまで、より安全でより包括的な空間としての世界観を再構築していると、記事は述べています。

いささか現実離れしたCottagecoreのスタイルは、先日、話題になったLirika Matoshi(リリカ・マトシ)の「ストロベリードレス」を着用し、ファンタジーに浸る若者の姿にもつながるものがあります。Z世代がピクニックを“特別なもの”として楽しんでいるという現状に、Cottagecoreのムーブメントは無関係ではないでしょう。

PICNIC RENTAL

ピクニックをレンタル

こういった若者世代の気持ちやトレンドを汲みながら、感染リスクの低い屋外でのピクニックをさらに楽しむものとして今注目されているのが、「ポップアップピクニック」です。

ポップアップピクニック・サービスと呼べるビジネスが展開されており、場所さえ決めてしまえば、どこでも簡単に非日常を演出する“特別なピクニック”を開けます。イベントとしてのピクニックを楽しむなら、ピクニック用品のレンタルのほか、フードやテーブル用品のセッティングを依頼。近くの公園で友人とゆっくり過ごしたいなら、フードや食器、ブランケットなどのピクニックセットをそのままデリバリーしてもらうサービスを利用することができます。

Business Insider』によると、レストランでの食事にまだ不安を感じるので、「外」にこだわる人が多くいるといいます。そのため、ピクニックレンタルや“安全に社会的に距離を置く”ための屋外ダイニングセットがトレンドとなっているようです。

まず、ロサンゼルスを拠点とするThe Picnic Collective(ピクニック・コレクティブ)。同社はピクニックレンタルという比較的新しいビジネスに目を向けています。彼らの顧客は主に20〜30代の女性で、人生の節目を祝うための新しい方法を探していると話しています。

PHOTO VIA THE PICNIC COLLECTIVE
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The Picnic Collectiveでは、ロサンゼルス、サンディエゴ、オレンジカウンティ、ラスベガスでサービスを展開。ロサンゼルスでは、自身でカスタマイズしたピクニックスタイルを、最初から最後まで完璧にセッティングしてくれるオプションも提供しています。料金次第で、写真撮影やヨガクラスなども追加も可能。また、ピクニックバスケットのみのデリバリーもあるので、自宅の庭で手軽にピクニックをしたいときでも簡単に利用できます。

2019年3月にテキサス州・ヒューストンで誕生した「Picnics in the City(ピクニックス・イン・ザ・シティ)」は、パーソナライズされた100%満足できるピクニックを提供しようとスタートしました。同サービスでは、ピクニックの種類を選べばオーダーしたプロップスを届けてくれますが、セッティングは基本的に利用者本人で行います。

PHOTO VIA PICNICS IN THE CITY
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パンデミックによる精神的な負担を軽減するために、スタイリッシュで感覚的な体験を提供することをミッションとしているPicnics in the Chi(ピクニックス・イン・ザ・チ)。同社は、ラグジュアリーな時間を体験できるようなピクニックセットを展開しています。

Business Insider』によると、6月から7月にかけて、同社へのピクニックのレンタルリクエストは例年よりも47%増加したといいます。

PHOTO VIA PICNIC IN THE CHI
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ほかにも、ロサンゼルスを拠点とする「Bilss Beach(ビルス・ビーチ)」はビーチで楽しむピクニックを提供。ニューヨークを拠点とする「Perfect Picnic(パーフェクト・ピクニック)」ではセントラルパークやハンプトンで、簡単にピクニックを楽しむセットを見つけることができます(「ソーシャルディスタンス・ピクニック・パーティーセット」も注文できます!)。

Perfect Picnic創設者で同社社長を務めるウェンディ・ウェストンは、「ピクニックは気持ちの問題で、よい仲間と一緒にするのが重要です」と話します。ピクニックはメンタルヘルスにもよいとも言われていますが、そうした文脈においても、若者にとって親しい友人たちとの「集まり」は、欠かせないものなのでしょう。

もちろん、おしゃれでスタイリッシュな「インスタ映え」するピクニックサービスばかりではありません。たとえば、ニューヨークの公園で気兼ねなくピクニックをするなら、フードデリバリーをしてくれる「PicnicPost(ピクニックポスト)」のような画期的なサービスが使えます。ソーシャルディスタンスを保つためのピクニック用ブランケットもあります。身近なものから新しいピクニックのカタチを取り入れ、「よい仲間」と過ごして楽しみたいものです。


This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

  1. BLMのデモは平和的。ACLEDの最新の報告書によると、ジョージ・フロイドの死後、米国のBLM運動に関連した7,750以上のデモは、とくにカリフォルニア州(819件)、ニューヨーク州(430件)、フロリダ州(380件)、イリノイ州(331件)で多く起こっています。また、抗議行動の93%は平和的で、人への重大な被害や物的損害は発生していないといいます。
  2. 代替肉が本格的に中国進出する。米・カリフォルニア発のBeyond Meat(ビヨンド・ミート)が、中国市場への参入を目指し、中国東部の浙江省にある嘉興経済技術開発区に2つの生産施設を建設中です。同社の声明によると、2021年初頭にフル稼働できるよう、年内にはテスト生産を開始することを予定しています。
  3. 「透明性」が重視されるビューティプロダクトジョンソン・エンド・ジョンソン コンシューマー・ヘルスが、成分の透明性に重点を置いた取り組みを発表。2030年までに同プロジェクトに対し、8億ドルを投資することを約束しています。これは、Healty Lives Missionの一環で、100%リサイクル可能、堆肥化可能なプラスチックパッケージなどに変え、時代に見合ったサステイナブルなアプローチをして行きます。
  4. ヴァーチャルでも大成功。米・ネバダ州で毎年行われている、音楽やアートなどの総合フェス「Burning Man(バーニングマン)」が、今年はヴァーチャルで開催されました。インタラクティブなVRを使ったコンテンツは参加者からも好評だったようで、コロナウイルスによって開催できないイベントに対する良い教えになったのかもしれません。

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