Wednesday: Africa Rising
躍動するアフリカ
国際世論を大きく巻き込んだナイジェリアにおける抵抗運動。その中心に女性たちの多大な貢献があったことは、しかしそれほど広く知られてはいません。EndSARSを推し進めた、ある組織の活動を紹介します。
ナイジェリアで10月8日から約3週間にわたり続いた、「特別強盗対策部隊(SARS)」抗議デモ。
誘拐、恐喝、拷問、殺人で悪名高いSARSの解散を要求する声の大きさには、対応の遅さで知られるナイジェリアの大統領ムハンマドゥ・ブハリも行動を起こすことを余儀なくされ、政府は抗議行動が始まって3日後にSARSの解散を発表しました。
政府に対してより具体的な取り組みを求め、活動を続ける抗議者たちですが、その多くが20代〜30代の若いナイジェリア人で構成されており、それぞれ階級や民族、宗教の違いを超えて集まっているのは、今回の抗議活動のひとつの特徴といえます。
さらに特徴的なのは、抗議活動の舵取りにおいて若い女性の活躍が目立っていたこと。上記に挙げた警察の残虐行為における被害者の多くは若い男性ですが、同時に、SARSは女性に対する性的暴行や暴力事件にも数多く関わっているとされているのです。
an integral part of the protest
欠かせない存在
なかでも「フェミニスト連合(Feminist Coalition)」の動きは、最も注目すべきもののひとつでしょう。さまざまなバックグラウンドをもつ女性14人からなるこの組織は、約1億5,000万ナイラ(約4,200万円)の資金を集め基金を設立。人びとの抗議の声を集め、調整する機能を果たしました。運動に参加する者たちへの医療的な支援にはじまり、拘束された人びとに対する法的支援の役割を担っています。
「自分の目を疑うほどの驚きを感じました」と言うのは、リヌ・オデュアラ(Rinu Oduala)。フェミニスト連合のひとりで、ナイジェリア最大の都市ラゴスでの抗議行動をリードした人物です。「彼女たちは抗議活動に欠かせない存在で、その存在なくして、長くは続かなかったはず」
実際に路上で抗議を唱えるだけでなく、オデュアラらは約400万ナイラ(約110万円)の資金を集めて参加者に宿泊施設や移動手段、食事などを提供し、現在はラゴスで警察の横暴を調査する司法委員会のメンバーを務めています。
サラトゥ・アビオラ(Saratu Abiola)は、ナイジェリアの首都アブジャをベースに活動しているライターです。彼女によると、ナイジェリアにおいて女性の抗議行動への参加が目立つようになったのは、2019年に開催されたセクシャルハラスメントに反対するデモ行進や、今年初めのロックダウン下のレイプ被害への抗議以降のことで、それらはいずれもフェミニスト連合が組織したのだと言います。
「ナイジェリアの女性は、戦う準備をしてきました。だから、(EndSARSの抗議行動の際も)動員するのは、決して難しいことではなかった」と、アビオラは言います。
Nigerian women activists
家父長制のもとで
ナイジェリアにおける女性活動家の歴史は、なにも新しいものではありません。ときに歴史から消し去られ、あるいは男性活動家によるアクションの“付録”として描かれることが多いものの、何世紀にもわたって積極的に活動してきました。
有名な話では、英国による植民地時代。役人がデモに対する許可を拒んだ際に、女性アクティビストのファンミラヨ・ランソメ・クティ(Funmilayo Ransome-Kuti、1900-1978)が、「ピクニック」あるいは「祭り」であると謳って地元の女性を動員したことがあります。それ以前、19世紀後半にも、ナイジェリア南東部イグボ(Igbo)では、女性たちが英国による支配に対して粘り強く請願書を書き続けたことが知られています。
yourself as a woman
まだ楽観視はできない
もっとも、変化のための戦いが権力者たちからの抑圧も伴っているのもまた事実。今回の抗議活動における資金提供源のひとつとして認識されているフェミニスト連合のメンバーは、政府の警備機関を名乗る人物からの脅迫を受けました。
抗議活動の周辺で起きた暴力行為を、彼女たちのせいにしようとする動きもあったようです。先週日曜(11月1日)には、フェミニスト連合に所属する弁護士であるモー・オデレ(Moe Odele)が、空港で理由なく出国を止められる事態が発生しています。
EndSARSの抗議活動は、国内のみならず海外でも広く支持されています。しかし、そこで発揮された女性によるリーダーシップの大きさを感じている人は、まだ多くはないでしょう。
もっとも、フェミニスト連合のロゴをデザインしたアイレ・アデリノクンのツイートはソーシャルメディア上で広くシェアされました。黄色く塗られた背景に黒で描かれた“ウーマンパワー”のエンブレムは抗議活動の代名詞のひとつとなり、数千人の支持者が自身のTwitterアカウントのプロフィール写真にも使用したようです。
ロゴと同じく、ヒジャブを着用した活動家アイシャ・イェスフ(Aisha Yesufu、1974-)が右の拳を握りしめて屹然と立つ姿も広くシェアされ、瞬く間にシンボルとなりました。
活動を続けるナイジェリアの人びとは、社会が彼女たちのリーダーシップ能力への評価が高まることを期待しています。
「以前は、多くの人が『女がどうやって抗議活動を組織できるんだ』と言われたこともあります」と言うのは、冒頭で紹介したオデュアラ。「今では、尊敬と称賛の念が芽生えているのを感じます」
一方、楽観的に考えてはいないと言うのは、同連合のメンバーでライターのアビオラ。彼女は、行動する女性に対する認識がすぐに変わるとは考えてはいません。「“女性としての自分”主体で行動し、自分自身が直面している問題についてのみ語っていては、きっと『大きなメッセージから目をそらしている』と言われることでしょう」と言う彼女は、いまだ男性は女性の権利に興味がないとも指摘しています。
headlines from Quartz Africa
今週のヘッドライン
- Googleが挑む、超高速インターネット。Google親会社のAlphabetが進める「Project Taara」は、ライトビーム(light beams; 光線)を使った高速インターネット計画。屋上など高所に設置された端末間を、目に見えない光のビームで高速データ通信するテクノロジーを提供しようというプロジェクトです。同社のアフリカ展開の一環として白羽の矢の立ったケニアでは、地元通信事業者Econetと提携し、Taara端末の敷設が始まっています。──November 11
- エチオピア、全面的な内戦状態。エチオピア最北部のティグレ州では、アビー・アーメド首相の政府軍と少数民族ティグレとの軍事衝突が拡大しています。6カ月間の非常事態宣言が出されていますが、すでに数十人の死傷者が報告されており、100万人単位の避難民が発生する可能性が懸念されています。──November 10
- バイデンとアフリカ。Quartz Africaではアフリカの国際戦略アドバイザーらに取材。「バイデン政権はトランプの対中方針を踏襲するだろう。ゆえに、米国は中国に対抗するべく、これまでよりさらに実態のあるアフリカへの関与をする」「より謙虚な外交政策をとることが想定されるため、アフリカ各国のリーダーシップを回復しよう動くだろう」などの意見を紹介しています。──November 9
(翻訳・編集:年吉聡太)
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