Deep Dive: Crossing the borders
グローバル経済の地政学
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毎週水曜夕方のニュースレター「Deep Dive」では、国境を越えて動き続けているビジネスの変化を追います。アフリカでは、音楽ストリーミングのパイをめぐるローカルとグローバル双方の動きが活発になっています(英語版はこちら)。
スポティファイ(Spotify)は2月末、アフリカ大陸の40カ国以上を含む世界86の国と地域でサービスの提供を開始すると明らかにしています。
音楽配信で世界最大手の同社は、2018年に南アフリカ、モロッコ、エジプト、アルジェリア、チュニジアの5カ国を皮切りにアフリカに進出し、さらなる成長の機会を窺ってきました。今回の動きで「これまでは地域限定だった音楽や物語を全世界に届ける」ことを助けていくとしています。
expanding internet connectivity
そこは有望な市場
スポティファイを含む音楽配信大手はアフリカに注目しており、昨年にはアップルが同地域で「Apple Music」を利用できる国を増やすと発表しました。
アフリカでは低価格のスマートフォンが入手しやすくなったことに加え、コネクテッドデバイスが増え、インターネットへのアクセスと接続速度も改善しています。また人口が急速に伸びていることも手伝い、アフリカの音楽配信サービスの市場規模は2025年には4億9,300万ドル(約535億円)に拡大する見通しです。
ロイヤルメルボルン工科大学の研究者ベンジャミン・モーガン(Benjamin Morgan)は2019年9月の記事で、アフリカ市場は特殊なため専用のアプローチが必要になると指摘しました。
スポティファイは音楽配信で世界最大手で、ユーザー数は170の国と地域で有料会員1億5,500万人を含む3億4,500万人に達しています。ただ、アフリカという特殊な市場でも成功を収めるかはまだわかりません。Apple Musicのような大手だけでなく、アフリカには競合の地場サービスが多く存在するからです。
tailored approaches
競合たちのアプローチ
#1 Boomplay
「Boomplay」は無料のストリーミングのほか、音楽や動画をダウンロードしてオフラインで視聴できる有料プランを提供しています。曲を購入することも可能で、コンテンツは4,700万本を超え、ユーザー数は昨年7月時点で7,500万人です。
Boomplayは中国のスマートフォンメーカー、伝音控股(Transsion Holding)の傘下にあり、同社の端末にはBoomplayのアプリがプリインストールされています。伝音はアフリカのスマホ市場ではシェア首位を誇ります。なお、Boomplay は2015年にナイジェリアで始まり、現在はガーナやケニア、タンザニアにも拠点があります。
#2 Mdundo
「Mdundo」はケニア発で、もとは違法ダウンロード以外の方法で音楽を手に入れるためのサービスとして2013年に登場しました。現在は配信とダウンロードの両方を提供しています。すべての曲で始めに5〜10秒の広告が流れるようになっており、2019年の広告収入は30万ドル(約3,300万円)でした。
昨年には欧州のスタートアップ向け証券市場であるNasdaq First North Growth Marketのデンマーク市場で新着株式公開(IPO)を果たし、640万ドル(約7億円)を調達しました。現在はケニア、タンザニア、ウガンダ、ナイジェリア、ガーナを中心にアフリカ全土で事業展開しており、ユーザー数は2020年12月時点で700万人に達しました。アーティストの数は8万人、楽曲数は150万曲に上ります。
#3 MusicTime
2018年に南アフリカで始まった「MusicTime」は、アフリカ最大のモバイル通信事業者のひとつであるMTNグループが運営する配信サービスです。「ペイ・アズ・ユー・ゴー(pay-as-you-go)」と呼ばれるプリペイド式で、2時間か5時間のパッケージを購入する形式になっています。インターネットへの接続とデータ料金はパッケージに含まれているため無料です。
コンテンツはアフリカの音楽を中心に4,000万曲を超え、南アフリカのほか、ナイジェリア、ガーナ、コンゴ共和国、カメルーン、エスワティニ、ザンビアでもサービスを提供しています。
#4+その他のサービス
アフリカ発の音楽配信サービスには他にも、ナイジェリアの「uduX」や「Spinlet」、ケニアの「Smubu」、南アフリカの「Mziiki」、セネガルの「MusikBi」などがあります。また、グローバル展開する大手では「Audiomack」「Deezer」「YouTube Music」「Tidal」がアフリカに進出しています。
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Column: What to watch for
越境のスタートアップ
オックスフォード大学と英アストラゼネカが共同開発したCOVID-19ワクチンへの懸念がソーシャルメディアはじめ複数のメディアで拡がり、欧州では、ワクチン何百万点が使われないままになっています。現在、欧州では少なくとも17の国々が同ワクチンの接種を見合わせていますが、「接種後に血栓ができた」とする報告には「根拠がない」と、多くの専門家が声を上げています。
(ワクチン接種を見合わせている欧州の国々:フランス、ドイツ、オランダ、アイルランド、デンマーク、ブルガリア、ノルウェー、アイスランド、オーストリア、イタリア、エストニア、リトアニア、ルクセンブルク、ラトビア、ポルトガル、スロベニア、キプロス)
欧州医薬品庁(EMA)のファーマコビジランス・リスク評価委員会(PRAC)は、「ワクチン接種を受けた人のうち、血栓症の発症数は、一般の人に見られるものと比べて高くない」と述べているほか、世界保健機関(WHO)は、「このワクチンは安全であり、健康問題との間に因果関係は確認されていない」と説明。ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のスティーヴン・エヴァンス教授(薬剤疫学)は、「このワクチンがCOVID-19およびそれに付随する病気を予防するのは確実であると同時に、ワクチンがこの問題を引き起こした可能性はほとんどない。リスクとベネフィットの双方を考えれば、このワクチン接種は非常に有効」と説明したうえで、「賢明なアプローチは、調査することです」と述べています。
(翻訳:岡千尋、編集:年吉聡太)
🎧 Podcast最新エピソードのゲストは、世界8カ国を移動しながら都市・建築・まちづくりに関する活動を行う杉田真理子さん。多様な「都市」がもつ魅力と、トレンドとなりつつあるその価値とに迫ります。 Apple|Spotify
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