Culture:Gen Zが変える美容業界

Culture:Gen Zが変える美容業界

Deep Dive: New Cool

これからのクール

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プチプラ、多様性、ジェンダーレス、サステナブル、DIY。これらキーワードを自ら体現しているのが、Gen Zです。彼らのこの考え方がいま、美容業界をも変え始めています。

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ザラ(Zara)は、初のビューティーコレクションである「ザラビューティー」(ZARA Beauty)を発表。このコレクションは、2021年5月12日(日本では13日)から、オンラインと一部の店舗で発売中です。肌の色や性別、年齢、そしてスタイルを問わず、個性美を尊重できるトータルメイクアップの実現を目指したコレクション。プロダクトはアイ、リップ、フェイス、ネイルで構成され、すべてのアイテムで130色以上のカラーバリエーションを展開。成分はクルエルティフリーをはじめクリーンな製法を採用し、ほぼすべてがレフィル可能だといいます。

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Image: PHOTO VIA ZARA

「プチプラ」「多様性」「ジェンダーレス」「サステナブル」は、まさにGen Zのライフスタイルに欠かせないキーワード。では、美意識ということになると、Gen Zはどうその他の世代と異なっているのでしょうか?

NATURAL IS THE NEW NORMAL

自然体を愛する

企業に対しても透明性を求めるといわれるGen Z。同様に、自身の見た目や個性も偽りのない姿を表現しようとします。かつてミレニアル世代の「つくられた」世界観でフィードが埋められたInstagramですが、Gen Zの存在感が増すなかで、愛着を堂々と強調する、まったく新しい世界観が広がりました。

Gen Zは、編集されていない「自然な自分」を投稿します。欠点や違いを「隠す」のではなくむしろ「称揚する」という新しい基準を切り開いています。多くのセレブリティやインフルエンサーも、自身の失敗や葛藤について弱音を吐き、一方で時代遅れな美の表現を取り沙汰するなどして、この変化を促していますこちらの記事では、Gen Zの「ダサかわいい」好みをトピックにしています)。

同じことが、美容に関しても言えます。とくに十代の若者たちは、従来の価値観に添った「美しい顔」をつくることにこだわらず、自分の欠点を強調することがトレンドになっています。メイクアップとビューティーのインフルエンサーであるThreeMillionは、『Refinery29』に対して次のように語っています。「もはや従来のように美しく見られることに関心がないのは、間違いありません。認められようとして美の基準に合わせる必要はないのです」

自然体のメイクがトレンドにあるということについて、Gen Z向けニュースレター「High Tea」のライターであるアリス・オフェリア(Alice Ophelia)とフェイ・メイドメント(Faye Maidment)は、「パンデミックによって、多くのティーンエイジャーは以前のように従来のカバーメイクをしなくなった。『意図的なエフォートレス』が流行している」とコメント。また、MAC Cosmeticsのグローバルシニアアーティスト、ドミニク・スキナー(Dominic Skinner)によれば、「多くの人がコンシーラーで隠そうとする赤みや疲れ目は、10代の若者たちにとってはカウンターカルチャー的な反発となる」と、『Reifinary29』に対して述べています

Diversity and Inclusion

多様性と包括性

スウェーデンのフィンテック企業クラーナ(Klarna)の最新レポートは、Gen Zの消費者が最も重視するブランド価値は「多様性と包括性」であると結論づけています。ソーシャルメディア上では、@aaron___philip@joannedion_などのインフルエンサーたちが、標準的な美の認識に「挑戦」することで、より広く受け入れられ、メインストリームになっています。

美容業界がいま目指しているのは、白人中心ではなく、より包括的になること。化粧品ブランドは、さまざまな肌の色に合わせて、ファンデーションの色のバリエーションを増やしています。

英国の小売業者Superdrugが発表したレポートによると、英国の黒人およびアジア人女性の70%が、主要ブランドが「自分たちに対応している」とは感じていないそうです。

そうしたなかで生まれたのは、リアーナ(Rihanna)が手がけるブランド「フェンティビューティー」(Fenty Beauty)の50色のファンデーションシリーズ「Pro Filt’r」の大ヒット。有色人種の女性が有色人種の女性のためにつくった、ヴィーガンで手頃な価格のスキンケアブランド「フォーク・ビューティー」(Pholk Beauty)の創設者であるニャンビ・カッチョーリ(Niambi Cacchioli)は、「南部でアフリカ系米国人として育ったわたしは、美の理想や主流の製品から疎外感を感じていたので、自分でつくってみました」と、ブランド設立に関して『WSGN』に対し述べています。ほかにも、「Danessa Myricks Beauty」「Beauty Bakerie」といった有色人種向けのブランドが多く展開されています。

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Image: PHOTO VIA PHOLK BEAUTY

男性も美容に興味をもつなかで、「ジェンダーニュートラル」な考え方も浸透しています。また、性的に見られないように体の線が隠れるようなオーバーサイズを好んで着る、アーティストのビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)も大人気。#Metoo運動もきっかけとなり、これまであった「女性はセクシーに魅せなければならない」という概念はGen Zにとっても大きく変化しています。同じことがメイクにも当てはまるのは、当然といえるでしょう。

CLIMATE CHANGE

環境問題への意識

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サステイナビリティへの関心は、Gen Zに深く浸透しています。それは、彼ら・彼女らが生まれ育ってきたのが、とりわけ人類の地球や他の生物種に与える影響が目に見えるようになってきた時代だから。ニールセン(Nielsen)の2018年グローバル調査によると、Gen Zの80%が「企業は環境に貢献すべきだ」と強く感じており、米国では68%のGen Zの買い物客が環境に配慮した買い物をしているといいます。

この意識は、もちろん美容にも影響しています。VIGAとOC&C Strategy Consultantsによる2019年の調査では、Gen Zの27%が繰り返し使える商品を好んで購入し、37%が本当に必要なものだけを選んでいることが分かりました。リコマース業界は現在、ファッションだけでなく美容にも広がっており、オンラインプラットフォームのポッシュマーク(Poshmark)、イーベイ(eBay)、グラムボット(Glambot)では、ユーザーが美容製品を再販できます。

また、Gen Zは、他のどの世代よりもアニマルウェルフェア(動物福祉)を優先し、植物由来の食生活を好むなど、倫理的価値観をライフスタイルに取り入れています。米調査会社モーニング・コンサルト(Morning Consult)の「2018 Consumer Trends in the Food and Beverage Industry」レポートのデータによると、18〜21歳の米国の消費者の29%が、商品に「ビーガン」という言葉があると魅力的だと主張しているのに対し、ベビーブーム世代では14%にとどまっています。なお、ヴィーガン化粧品の世界市場は、年6.3%で成長し、2025年には208億ドル(約2.27兆円)に達すると予測されています

Expensive Doesn’t Mean Better

プチプラでかまわない

ところで、Gen Zはどのくらいのお金を美容に投資しているのでしょうか?

投資会社のパイパー・サンドラー(Piper Sandler)が発表したレポートによると、米国のGen Zの女性が1年間に美容に費やす金額は、368ドル(約4万円)で、内訳はコスメが168ドル、スキンケアが140ドル、フレグランスが60ドルとなっています。ちなみに、スキンケアの需要はパンデミックを機により増加。「おうち時間」が増えたほか、多く(とくに女性)がマスクにフィットするようなメイクを心がけるようになり、「マスクネ」(Maskne)のような肌トラブルに対処できるようにするためといえます。

しかし、若い消費者が美容に使うお金が少ないのは、必ずしもその所得が限られているからではないようです。「安いものが必ずしも悪いわけではありません。同時に、高いものがよいとも限らない」と、15歳のRogelio Munoz-Francoは『The New York Times』に話します

また、Gen Zの美容消費者の62%が購入前にアイテムについての詳細をチェックするという調査結果も。実際の口コミも非常によく利用されていて、87万5,000人以上のメンバーが参加するRedditのフォーラム「SkincareAddiction」でアドバイスを共有しています。

ほかにも、「Skincare by Hyram」のチャンネルを運営するクリエーター、ハイラム・ヤーブロ(Hyram Yarbro)は、ベラ・ソーン(Bella Thorne)、スカイ・ジャクソン(Skai Jackson)、マディソン・ビール(Madison Beer)といったセレブやインフルエンサーのスキンケア習慣に対する「突っ込んだ」意見や、製品レビュー、成分に関するチュートリアルなど、テンポのよい動画でティーンエイジャーを魅了してきました。とくに、パンデミック中ではスキンケアに対する興味が高まったため、現在では455万人のチャンネル登録者がいます。とくに、「The Ordinary」や「Inkey List」といったプチプラなコスメのレビューに力を入れたこともチャンネル数の増加につながった理由だといいます。「成分は嘘をつかない」と『The New York Times』に語るヤーブロは、正直なレビューで若い視聴者の信頼を得ているのです。

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Image: PHOTO VIA YOUTUBE OF SKINCARE BY HYRAM

STAY HOME, TRY SOMETHING

燃えるDIY精神

パンデミック中は、Gen ZのDIY精神にさらに火がつきました。とくに、ヘアカラーやブリーチは人気のひとつ。Mintelのレポートによると、家庭用ヘアカラー市場は、2020年の小売売上高が24億ドル(約2,620億円)を突破し、前年比で約16%の成長率を記録。“How to color your hair at home”は、2020年のGoogle検索トレンドの上位に挙げられました。Gen Zは明るい色を購入していて、セレブやインフルエンサーのあいだでもピンクに染めるのが大流行。例えばアマゾン(Amazon)は、2020年に売れ筋の美容製品のなかに、ピンクとブルーのヘアカラーを挙げています

ちなみに、なぜ派手な色を選ぶかというと、ステイホームで外出することも人に会うこともないため、普段はできない色にトライできる「絶好の機会」だったという理由があげられます

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Image: PHOTO VIA INSTAGRAM OF @kaiagerber

また、スキンケアは、すべての年齢層で最も買い物されている美容カテゴリー(ヘアケアは2位)。Klarnaの調査では、Gen Z回答者の41%が、現在最もお金をかけている商品カテゴリーは「スキンケア」と回答しています。ほかに、ワックス脱毛は若者に人気があったといいます。

なお、『Vogue Business』によると、美容ツールはパンデミックの前からすでに人気が高まっていたとのこと。リサーチ会社のスペート(Spate)によると、2020年6月までの過去12カ月間でフェイシャルスチーマーの検索数は前年比70%増、グアシャ(かっさ)などのフェイススクレーパーは33.4%増となっています。クリーンビューティ専門店「クレド」(Credo)では、昨年3月に米国でパンデミックが起こって以来、スキンケアツールの売上比率が前年の2倍以上になり、200%以上の伸びに。これはWildling Beautyのグアシャ「Empress Stone」の購入が大きく影響しているようです。

さらに、消費者はスキンケアのステップを増やしていることが分かり、とくに美容液の人気が高まっています。『Vogue Business』によると、ビタミンC、ヒアルロン酸、レチノールなどの美容液は、2020年6月までの過去12カ月間で検索数が20~40%増加。Spateによると、ナイアシンアミドの美容液は193.1%の検索数の伸びがあったといいます。トレンド調査会社WGSNのシニア・ビューティー・エディターであるテレサ・イー(Theresa Yee)は、美容液の人気は、いまでは一般的になったZoomコールで、肌の欠点が強調されてしまうという身近な理由によるものだと説明。また、スクリーンタイムの増加に伴い、人工的なブルーライトが肌に与える影響が注目されていて、Spateによると、ブルーライト用スキンケアの検索数は過去12カ月間で46.2%増加。サンケアブランド「クーラ」(Coola)のCEOで創業者のクリス・バーチビー(Chris Birchby)によると、4つのブルーライトブロック製品は、2020年3月1日以降、Amazonでは週ごとの売上が2倍になり、ブランドのサイトでは4倍になったといいます。


COLUMN: What to watch for

神秘的なコスメ

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中国の若い消費者はいま、「神秘的なコスメ」にハマっているようです。『YPulse』では、米国の若い消費者のあいだで超自然的、神秘的な製品やコンテンツの人気が高まっているとし、最新の宗教とスピリチュアリティに関する調査では、若い消費者の57%が神秘的なテーマの製品に興味をもっていることがわかりました。現在、中国の若者も魔法のようなトレンドに投資しつつあります。

『Jing Daily』によると、占星術やタロットカード、スピリチュアルな習俗への関心が高まっている中国の若者は、神秘主義への欲求を高めていて、中国の美容ブランドは神秘的なメイクアップラインを展開しています。例えば、宇宙や中国神話、西洋占術やタロットカードなど奇想天外でファンタジーな世界観がテーマのアイテムを展開するガールカルト(Girlcult)や、天使のモチーフを落とし込んだ幻想的なデザインのフラワーノーズ(FlowerKnows)などがあります。

このような神秘的なビューティトレンドは西洋文化に浸透していますが、これらのビューティコンセプトが中国の若者を魅了している理由は異なるといいます。中国では千年以上の歴史を持つ民間伝承の中で、特定の物を身につけたり、特定の特徴に似せたりすると、豊かで幸せな人生を送れるという迷信があります。つまり、中国の消費者は、高級品やファッションを購入する際に、運気を高める基準を求め、ビューティ製品にもその概念を求めるようになっています。


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