Startup:StockXの野望

StockX’s ambitions have always been bigger than sneakers.

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毎週、世界のスタートアップの新たな動きを伝えている月曜日。今日は再販プラットフォーム「StockX」のCEOへのスペシャルインタビューをお届けします。原文はこちら

Products representing categories that sell on StockX including a Jordan 4 sneaker, a video game controller, a KAWS collectible toy, and a basketball trading card
StockX’s ambitions have always been bigger than sneakers.
Image: StockX

スニーカーは、StockXのビジネスにとって文字通りの「核」。2016年に「モノの株式市場」を謳ってサイトをローンチした際、「完璧な“入り口”となる商品」として取り扱ったのがスニーカーでした。米デトロイトを拠点とする同社の評価額はいまや38億ドル。スニーカーは、この高い評価を獲得するのに最も貢献したアイテムなのです。

しかし、StockXの野望は、常にクツよりも大きかったのです。

ユーザーが求めるあらゆる種類の商品を、株式市場と同じ入札モデルと価格の透明性を利用して売買できるStockX。このオンラインマーケットプレイスでは最近、スニーカー以外のカテゴリーが急成長しています。

Branching out, reaching more

伸び続けるStockX

同社のシニアエコノミストであるジェシ・アインホーン(Jesse Einhorn)によると、この1年間で販売台数・販売金額ともに最高を記録した商品は「PlayStation 5」でした。また、「Xbox Series X」やグラフィックカードなど、その他のエレクトロニクス製品の売上も急速に成長。コレクターズアイテムやトレーディングカードなどといったカテゴリーも伸びているようです。

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CEOのスコット・カトラー(Scott Cutler)によると、StockX社が今後も拡大を続けるためのカギとなるのは、スニーカー以外の分野に手を広げること。そして、米国外のより多くのユーザーを獲得することだといいます。2020年は、パンデミックの影響を受けながらも好調に推移し、サイト上で販売された商品の総額は、前年の約10億ドルに対し18億ドルに達しました。今年はすでに、2億5,500万ドルの新たな資金調達を行い、世界で11カ所目となる鑑定センターをオーストラリアに開設。IPOを検討しているとも噂されています。

Quartzでは、eBay、Stubhub、ニューヨーク証券取引所などで務めたのち2019年にStockXにジョインしたCEOのスコットに、StockXのこれからについて話を聞きました。

Interview with Scott Cutler

PS5、NFT、パッション

──StockXには、スニーカー以外にどんな勝機がありますか?

いま流行りのカルチャーカテゴリーには大きなチャンスがありますね。2016年時点で掲載していたのは、17ブランド6,000種類の商品です。それがいまでは500以上のブランドから12万5,000の商品に拡大しています。

新しいカテゴリーとしては、例えば第4四半期に導入した〈エレクトロニクス〉では、マイクロソフト、ソニー、アップル、(チップメーカーの)Nvidiaなど、あらゆるブランドから300以上のアイテムが登録されています。〈コレクティブルズ〉は、それとは別の、エキサイティングなカテゴリー。このカテゴリーでは、2019年にトレーディングカードを取り扱い始めましたが、2020年には同カテゴリーでの売上が4,000%も急増しました。StockXが注目しているのは、そのような次世代の消費者とつながりの深いカテゴリーです。

──StockXはスニーカーの再販プラットフォームとして知られています。ところが、昨年の販売総額のトップ2に並ぶのがゲーム機だったというのには驚かされますね。

すごいですよね。PS5は、世界中で30通りの価格設定で発売されました。対するStockXは、基本的に「集中型」のマーケット。どの売り手も最低価格で購入することができます。ブランドによっては、世界は「分散型」であると考えるブランドもあります。一方のStockXは、世界中の誰もが平等にアクセスできるプラットフォームを提供しています。これは、まったく新しいパラダイムといっていいのではないのでしょうか。

ブランドもこの流れを理解し始めていると思います。ほとんどのブランドや小売業者は、まだこうした体験を提供できていませんが、StockXのユーザーの目の前には経済的な機会やアクセスがあるのです。

──StockXでは、オルタナティブ資産というべき商品も多く取り扱っています。なかでも特に注目されているのがNFTですが、その点で何か意図するところはありますか?

あらゆるアプローチから、それを考えています。例えば、購入しても手元に残らないような商品であるなら、StockXが「在庫」として保有しておくこともあるでしょう。その場合、それは買い手にとって「トレーディング」に近い体験となります。また別の商品の話として、売り手は商品をStockXの倉庫に入れておけば、その商品をすぐに発送することも可能です。StockXでは、当初から多くの人が「分数取引」や「現物資産のデジタル表示」を好むであろうと考えていました。わたしがニューヨーク証券取引所で働いていたころの話ですが、石油の実際の消費量を調べてみると、タンクに入ることも精製されることもない石油の実際の取引額は消費量のほぼ100倍にもなるのです。コモディティやこうした商品が金融商品のように取引されるようになれば、消費者や投資家にとって大きなチャンスが生まれるでしょう。

──「スニーカーの先物取引」が行われるようなことは起きますか?

その可能性は十分にあります。指数、先物、デリバティブ、スニーカーのデジタル表示、またはスニーカーの「端数」のシェア。ブロックチェーンベースの技術を使って、現物商品のデジタル化が進むのは、とてもエキサイティングです。

──StockXは米国外で急成長しています。グローバル展開をどのように行っていますか?

現在のところ、世界200以上の国と地域でサービスを提供しています。グローバル展開はわたしたちにとって重要な課題です。

世界中の消費者の高い要求に応えるだけでなく、グローバルコミュニティに対して、成熟した市場で行っているのと同様の、一貫したユーザーエクスペリエンスを提供することも重要です。機能として満足いくかたちにするため、各地域に鑑定センターを開設し、体験をローカライズし、支払い方法をローカライズしてきましたが、それによってグローバルビジネスは大きく成長しています。昨年のグローバル流通は130%の成長を遂げました。社内の海外バイヤーは135%、海外セラーは120%増えています。

──StockXは、すべての製品を鑑定することがビジネス上の差別化につながっていると公言していますね。しかし、それがStockXの成長を妨げる要因にはなっていませんか?

鑑定のプロセスは、わたしたちのすべての取引の真ん中に位置付けられています。その結果として、エンドバイヤーは、このマーケットで販売される商品を鑑定するブランドとして、StockXに高い信頼を寄せることになります。

昨年度は、特にグローバルビジネスの拡大するボリュームに対応すべく、鑑定センターを66%拡大しました。新たに開設したのは、香港、東京、カナダのトロント、オレゴン州ポートランドのセンターです。ですから供給面での制約はありません。需要面でも制約はありません。しかし、ユーザーが世界中のどこにいても一貫した体験を提供できるように、オペレーションを構築しなければならないのは確かです。

──スニーカーの再販市場が大きくなり、多くの人が参入するようになると、新商品の発売に向けて、人びとの熱狂は高まってきます。欲しいクツが手に入らないと怒るユーザーもいるでしょうし、ボットを使った転売屋は在庫を大量に買い占めてStockXをはじめとするサイトを蹂躙しています。これは、想定内ですか?

わたしたちは、製品の価値をその希少性で判断しているわけではありません。いま、多くのブランドは、ブランド価値を高めるために希少性を利用しています。彼らは商品を数量限定で発売し、その商品がどれだけ早く完売するか、そして再販市場でどれだけの価格で取引されるかに腐心することになるでしょう。こうした状況は、わたしたちもよく把握しています。

しかしながら、わたしたちがユーザーに提供する価値とは、そのアイテムへのアクセスであり、透明性のある価格でのアクセスであり、市場価格でのアクセスです。さらに率直に言えば、ブランドやその独自の小売販売チャネルでは入手できない可能性が高い製品へのアクセスです。

──何年も前から言われていることだと思いますが、スニーカー界で起きているのは「バブル」であって、ゆえにいつか崩壊するのでしょうか?

スニーカーというカテゴリーは、1985年(ナイキが「Air Jordan 1」を発売した年)にさかのぼります。以来、愛好家コミュニティによって支えられてきました。しかし、最近の傾向として、自分を愛好家だと考える人が急速に増えているようです。

これが何を意味するかというと、このカテゴリーのことを初めて知るような、膨大な数の顧客層が生まれているということです。実際に、人気の高い限定版の多くは、その価格が急騰していますね。これらの価格は市場価格を上回っていますが、ユーザーが手に入れられないようなバブルの域にはまだ達していません。わたしたちにとってエキサイティングなのは、これらの製品が資産として経済的な機会をもたらすという考え方です。実際に、まったく新しい消費者層、愛好家層、情熱的なコミュニティに支えられた新世代が生まれてきています。


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デリバリーの終焉?

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米国労働統計局(US Bureau of Labor Statistics、BLS)が発表した4月の雇用統計によると、デリバリーブームがダウントレンドにあることがわかります。宅配便やメッセンジャーとして働く人の数は100万9,000人で、前月比7%減という数字が報告されています(アマゾンやフェデックス、DHLなどの企業で、パッケージされた商品を配達したり、ピックアップしたりする労働者も含まれます)。

パンデミックでオンライン小売業者、オンライン食料品店、デリバリー業者の需要はトップギアにシフト。2020年3月には、アマゾンが米国で10万人の労働者を雇用し、米国ならびにカナダ、ヨーロッパの労働者の給料を引き上げると発表し、雇用を拡大しましたた。GrubhubやDoorDashなどのデリバリーフードアプリへの需要も急増しました。しかしいま、その需要は薄れつつあるようです。

求人企業レビューサイト「Glassdoor」のシニアエコノミストは「ここまで顕著な減少は驚き。もっとも、月次データは変動しやすいため、これが決定的な傾向であるかはっきりしない点は、念頭に置く必要がある。BLSのデータはサンプル数が少ないため、宅配業者やメッセンジャーのような小規模な業界では、特に変動しやすい」と指摘しています。

(翻訳・編集:年吉聡太)


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