Borders: ワクチン最終兵器は「アイドル」

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Deep Dive: Crossing the borders

グローバル経済の地政学

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中国国民のあいだで蔓延する「ワクチン不要論」。行政府は、国民にワクチン接種を受けてもらえるよう、さまざまな工夫をしています。なかでも若者の心をとらえたのは「アイドル」起用でした(英語版はこちら)。

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Image: CNSPHOTO VIA REUTERS ATTENTION EDITORS - THIS IMAGE WAS PROVIDED BY A THIRD PARTY. CHINA OUT.

中国ではある「トップ・ガールズバンド」が、新たにアンバサダーを務めることになりました──ブランドのためではなく、ワクチン接種活動のために。

中国では、4月末時点で2億4,390万回のワクチン接種が行われています。米国でも2億4,600万回を数えますが、中国のそれは、世界的に見ても最大規模のワクチン接種が行われているといえるでしょう。

もっとも、中国の目標は「6月までに国民の40%にワクチンを接種する」こと。14億人の人口を抱えるこの国では、目標の達成の前にはまだまだ長い道のりが続きます。ワクチン接種を加速させるために、行政府は“特典”を与えて国民が接種を受けるよう促しています。中国国民の多くは、政府がパンデミックをうまくコントロールしているのだからワクチンは必要ない、と感じているのです。

official campaign ambassador

公式ワクチン大使

タマゴの無料配布やお店のクーポン券などの特典に比べれば、上海のある地区で提供された特典は、若者にとって魅力的なものになるかもしれません。4月30日、上海市虹口区では中国のガールズバンド「SNH48」が予防接種キャンペーンの公式アンバサダー任命されました。虹口にはSNH48が出演する「劇場」がありますが、そこでファンは公演に参加したり、グループと交流したりしています。

ポスターでは、メンバー5人の写真の下に「あなたといっしょにできること、免疫のカベをつくること」とのキャプション文がつけられています。ちなみにポスターの右上には「社会主義核心価値観」のキーワードが躍ります。社会主義核心価値観とは、中国共産党が2010年代に入って以降打ち出している教義で、「富強」「民主」「公正」「自由」など価値基準を伝えるものです。

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SNH48からの呼びかけは、すでに効果を発揮しているようです。このグループのマネジメント会社であるShanghai Star48 Culture & Mediaによると、当初、同区は今週にも劇場の外に移動式の予防接種クリニックを設置する予定でしたが、「ファンからの圧倒的な反響のため」計画を中止せざるをえませんでした。5月1日の「ウェイボー」(Weibo)への投稿によると、「クリニックに予防接種の予約をした人が、受け入れ可能な人数をはるかに超えていた」とのことです。

Getting a stamp for getting a shot

スタンプをもらおう

今週中に予防接種を受けると、劇場でメンバー2人から特別な「免疫のカベをつくろう」スタンプをもらうことができるそうです。SNH48は、日本や韓国のポップスグループと同様にオーディションで選ばれた若い少女たちからなるチームで、歌いダンスをするグループです。

SNH48の大きな魅力は、メンバーとファンの距離が近いことにあります。彼女たちは、ファンと直接触れ合う「握手会」や、イベント会場でファンが会社から購入する「パスポート」にスタンプを押してもらう「シール集め」などの活動を定期的に行っています。一定数のシールを集めると、好きなメンバーと一緒に写真が撮れるなどの特典があるのです。

promoting Covid-19 vaccinations

その他の取り組み

こうしたガールズバンドだけではありません。中国の山東省でも、ワクチン接種キャンペーンを盛り上げるための工夫がみられます。山東省では、2度のワクチン接種を受けた人は、金色の「ヘルスコード」をもらえます。この色つきのデジタルバーコードは、スマートフォンのアプリを使って読み込むことで持ち主の健康状態を示すものです。

このコードは、昨年のコロナウイルス感染症の発生後に採用されたもので、通常は緑、赤、黄色の3色しかありません。かたや、この新しいコードの意匠では、緑のコードに金色の枠とワクチン接種ための注射と盾を示す絵文字が追加されています。この取り組みは、中国国営メディアの新華社では「低予算で人びとにワクチン接種を促す方法を生み出した」と評価されています。


Column: What to watch for

インド、最悪の事態

Struggling with shortage.
Struggling with shortage.
Image: REUTERS/Dado Ruvic

インドでは、新型コロナウイルス感染による死者数が累計で25万人を超えています。12日(現地時間)にインド保健省が発表した死者数は、過去24時間で過去最多の4,205人を記録。感染者数も累計で2,300万人を超えました。いまや国内外の専門家が、この被害を最小限に抑えるためには、インド全土でのロックダウンを講じる必要があると考えています。

9日、ジョー・バイデン米大統領の首席医療顧問であるアンソニー・ファウチは、ABCニュースに対して、「わたしはこれまでにもその必要があると助言してきた。インドのいくつかの州ではすでに実施されているものの、感染の連鎖を断ち切る必要がある」と語っています。

同9日には、インドのトップ医師団体であるインド医師会(IMA)も、政府に対して15日間を下限とする全国的なロックダウンを要請。これによって負担が増大している医療インフラに必要な「息抜き」ができるとしています。

(翻訳・編集:年吉聡太)


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