Deep Dive: New Cool
これからのクール
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DIY志向の強いGen Zがパンデミックをきっかけにハマったのは「タイダイ染め」だけではありません。「編み物」にも夢中になった彼ら彼女らがビジネスを始め、さらには世界をも救おうとしてます。
昨年8月のニュースレターでは「タイダイ」ブームをお伝えしましたが、クロシェ編み（かぎ針編み）をはじめとする「編み物」がいま、Gen Zを中心に人気です。その背景にはステイホームを強いるパンデミックの影響がありますが、結果、TikTokやYouTube、Pinterest、Instagramではクラフト系のコンテンツが多く見られるように。編み物がシニア世代のものだという固定観念はもはやなくなり、Gen Zのあいだでファッションのトレンドになっています（Y2Kのトレンドの影響も）。
初心者向けニットキットを展開する英国発の「ウール・アンド・ザ・ギャング」（Wool and the Gang）では、昨年のロックダウンの開始以来、サイトへのトラフィックが69％増加し、ソーシャルメディアのフォロワーも毎週174％ずつ増加したといいます。
Wool and the Gangのニット部門責任者であるティーガン・カージー（Tegan Kersey）は、「編み物は手のためのヨガのようなものです」と『MSN』に対して語ります。「編み物にはセラピー効果があり、研究によると鬱や不安を軽減すると言われていますが、これは現代社会においては歓迎すべきことでしょう。家に閉じこもらざるを得ない状況は、何か新しいことを学べますし、何よりも指先が忙しくなり、スナック菓子を食べずに済みます」
Who sparked this boom?
火付け役はあの人？
編み物ブームをさらに大きなものにしたのは、あのセレブリティかもしれません。
2020年2月、ハリー・スタイルズ（Harry Styles）が『The Today Show』への出演時にサウンドチェックで着用していたJW アンダーソン（JW Anderson）のパッチワークカーディガンがTikTokで大流行。世界有数の博物館であるヴィクトリア＆アルバート博物館は、このカーディガンを永久所蔵品として購入しています。ブランドの公式サイトでは、このカーティガンを制作するためのチュートリアルも登場するなど、アイテムの人気の高さが伺えます。
また、今年2月には、第46代米国大統領の就任式でカマラ・ハリス副大統領の継娘として注目され、現在は大手モデルエージェンシーIMG Modelsとも契約を結ぶエラ・エムホフ（Ella Emhoff）がデザインしたニットのカプセルコレクションがMall NYCで1時間足らずで完売（ちなみに、この就任式でバーニー・サンダースが身につけていた手編みのミトンは世界的にミームになりました）。
また、4月には米国人デザイナーでヴィンテージ愛好家のバテバ・ヘイ（Batsheva Hay）とのニットウェアとかぎ針編みのコラボレーションも発表しています。
編み物のなかでも若者から支持を得るかぎ針編みは、編み針を1本だけ使って編む技法ですが、Instagramではそのチュートリアル動画が3,500万回以上、TikTokでは25億回以上も検索されています。
Getting into Crochet
サステナ志向の編み物
ハンドメイドのかぎ針編み人気には、Gen Zのサステイナビリティに対する考えも大きく影響しています。『Forbes』によると、2019年の調査ではGen Zの62％がサステイナブルブランドから購入することを好み、エシカルな製品により多くのお金を払うことを望んでいます。
The Business Research Companyのエシカルファッション市場についての調査によると、アパレル生産の際の環境汚染の悪影響に対する意識が高まっています。毎年、アパレルメーカーは約12億トンの温室効果ガスを排出。1秒間にトラック1台分の衣類が埋立て地に送られるか、燃やされているといいます。衣類のうち、新しいものにリサイクルされるのはわずか1％。こういった現実を知ることにより、若者はとくにサステナビリティを重要視しているのです。
ちなみに、エシカルファッションの世界市場規模は、2015年以降、年平均成長率（CAGR）8.7％で増加し、2019年には約63.5億ドル（約6,963億円）の値に達しました。同市場は、2023年には82.5億ドル（約9,046億円）まで、6.8％で成長すると予測。その後、市場は2025年に98.1億ドル（約1.07兆円）、2030年には151.7億ドル（約1.66兆円）まで9.1%で成長すると予想されています。
また、かぎ編みのような編み物は生産能力に限りがあります。ゆえにウェイティングリストやカスタムメイド、オーダーメイドといった廃棄物の少ないビジネス戦略が改めて注目され、買い物客はより意識的に購入するようになっています。そのため、スモールビジネスを確立するうえで非常に効率的だとも言えるでしょう。例えば、El’s Crochet、Vaisseau、Fancy Nancyのような小規模なビジネスが次々と生まれ、Instagramやリセールサイト「Depop」で販売されています。
そのなかでも、「メモリアル・デイ」（Memorial Day）は、先出のエラ・モフやモデルのカイア・ガーバー、ベラ・ハディッドのお気に入りブランドとしても話題となりました。
デザイナーのデルシー・グー（Delsy Gouw）は『VOGUE』のインタビューに対し、「Gen ZがファッションにおいてサステナビリティやDIYを特に好むのはTikTokの影響が大きい」と語っています。
「わたしのフィードには、ヴィンテージアイテムを再利用する方法や、かぎ針編みでスーツを完成させる方法などの動画が常に流れています。ファッション業界は大きく変化していて、人びとは一生使えるアイテムを求めています。楽しい服、自分に語りかけてくるような服。単なる流行ではない服です」とコメントしています。
SAVE THE WORLD
世界を救うかぎ針編み
このかぎ針編みで世界的に有名になった、12歳の男の子がいます。「Jonah’s Hands」を主宰するジョナ・ラーソン（Jonah Larson）は、かぎ針編み作家、デザイナー、作家、慈善家として活動。米・ウィスコンシン州ラクロス在住で、5歳のときに独学でかぎ針編みを学んでから作品を作り続けているといいます。
ポンチョ、マフラー、ミトン、スローブランケット、「BLM」や「Stay Home」を編み込んだ大型ブランケットなどを制作し、かぎ針編みの本を3冊も出版。世界のかぎ針編み愛好家が集うコミュニティもつくったラーソンが、自身の活動のなかでもとくに誇りに思っているのは慈善活動です。エチオピアの自身が生まれた田舎の村（ジョナはエチオピアの村から養子として迎えられている）に「Jonah’s Hands Library」を建設し、資金を提供しています。今後は、ラボ建造のための寄付もするといいます。
ラーソンは、編み物で何かしらのメッセージを伝えることも目指しています。それがよく顕れているのは、「Black Lives Matter」や「Stay Home」といったことばが編み込まれた彼の作品です。「かぎ針編みは、一針ごとに世界を結びつけるものだと思っています」と、ラーソンは『VOGUE』のインタビューに対してコメントしています。
COLUMN: What to watch for
若い購買層獲得へ
ラグジュアリーブランドのディスカウント商品を展開するユークス（Yoox）は、若者向けのアイテムに特化した「Hi_GuyZ!」をローンチしました。同サイトは新進気鋭のデザイナーにスポットライトを当て、サステナブルな取り組みを行っているブランドを紹介する新しいオンラインプラットフォームで、Gen Zの買い物客のファッションへの関心を高めることを目的としているといいます。
Yooxによると、Gen Zは同社の消費者層の7％を占めていますが、今後3年間で同世代の消費者層を20％にまで増やしたいと考えているようです。ちなみに、Yooxでは何千ものブランドを扱っていますが、「Hi_GuyZ!」に掲載されているのは、Jacquemus、Fear of God、A-Cold-Wall、Our Legacy、Heron Preston、Nike、Palm Angels、The North Faceなど、数百のブランドのみ。データとバイヤーの知識を組み合わせて厳選したといいます。
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