Deep Dive: Impact Economy
気候テックの衝撃
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激動する世界の気候変動ビジネス。毎週火曜は、その現状を伝えるインサイトを紹介しています。いまコロナ下の五輪で注目されているのは……選手村のベッドをめぐる話題です。
国際的な「出会いの場」として知られているオリンピック選手村。そこでは大会期間中、「安全なセックス」を促進するために十万単位のコンドームが無料で配布されています。しかし、東京オリンピックの主催者は、セックスを促進しようとはまったく望んでいないようです。
自分に割り当てられた部屋にチェックインすると、選手たちはダンボール製のベッドに気づくことでしょう。このベッドは、日本のマットレスブランド・エアウィーヴがこの大会のために特別にデザインしたものです。
ダンボール製の宿泊施設となると、2016年の夏季大会のそれとはまったく異なります──「Raunchy Rio」(Raunchy=性に奔放な)と呼ばれたリオ五輪の選手村では、金属製のベッドフレームでした。ソーシャルメディアでは、今大会のこの宿泊施設を「アンチセックス・ベッド」と呼ぶ声もあるほどです。
日本政府は、COVID-19の感染拡大を抑えるべく、アスリートたちに「不必要な身体的接触を避ける」よう訴えています。そして、オリンピックブランドの予防的な戦利品を、性感染症への関心を高めるためのお土産として持ち帰るように呼びかけています。一方、このダンボール製のベッドは、AFPのファクトチェックによると、なにも禁欲キャンペーンの一環というわけではないようです。
Is it sturdy?
丈夫なの?
エアウィーヴによると、ツインサイズのダンボール製ベッドフレームで体重約200キロまでの人を支えることができるようです。また、数々のストレステストにも合格しているとのこと。アイルランド代表の体操選手、リース・マクレナガンは、このベッドが「壊れやすくて十分に遊べない」のではないかという疑問を解消する動画をツイートしています。
マットレスは、体にかかる負荷を和らげるように設計されています。また、3つのパーツの順番を入れ替えることでマットレスの硬さをカスタマイズすることもでき、フィギュアスケートの元世界チャンピオン・浅田真央やスノーボードのオリンピックメダリストであるアリエル・ゴールドなども「エアウィーヴ」を愛用しているようです。
a consideration for organizers
再利用できて便利
ダンボール製のベッドフレームはもちろん、マットレスも、大会終了後にはリサイクル・再利用が可能です。カスタマーサポート担当者がQuartzに語ったところによると、再生プラスチックからつくられたエアウィーヴのマットレスは、中性アルコール溶液で洗って消毒できるのだとか。
今大会では、厳重な監視下の飛び地に滞在している何人かの選手や関係者が、すでにCOVID-19の陽性反応を示しています。だからこそ、除菌性能の高さはとりわけ魅力的な機能に。1万8,000台のベッドのうち約8,000台は洗浄され、8月24日に開幕するパラリンピック大会で再利用される予定です。
また、廃棄しやすいかどうかも、重要な検討事項でした。大会終了後、晴海のウォーターフロントにある選手村は、速やかにマンションに生まれ変わります。「晴海フラッグ」に入居する予定の人たちは、いつになったら入居できるのかという不安をすでに抱えており、購入者の中には遅延を理由にデベロッパーを訴える人もいるようです。
But is cardboard sexy?
ダンボールはセクシー?
ダンボールの素材としての魅力に疑問を抱いているというなら、増え続ける「デザイナーズペーパー家具」に目を向けるべきでしょう。
例えば、1970年代初頭、家具メーカーのヴィトラが製作したフランク・ゲーリー「Wiggle Side Chair」。彼の家具コレクション「Easy Edges」の代表作である「Wiggle」は、ダンボールやファイバーボードの美的可能性を示した作品だといえるでしょう。Easy Edgesの宣材写真では、若き日のゲーリーがダンボール製の机に飛び乗り、その強度を証明していますが、これはマクレナガンがベッドの上でやっていることと同じですね。
坂茂は、ダンボール構造の大家といえる日本の建築家です。プリツカー賞を受賞した坂茂は、紙管を使って緊急避難所やコンサートホール、教会などを独創的に構築してきましたが、彼の建築物のなかには50年以上の耐久性をもつものもあります。
坂茂は、スイスのwb formから販売されているスタイリッシュな段ボール製チェアを手がけています。また、カナダのスタジオmoloは、紙製の音響パネルを制作し、退屈なオープンプランのオフィスを刺激的な迷宮に変えています。
2020年に開催される東京オリンピックのベッドがデザインのクラシックになる……ことはないかもしれません。ただ、パンデミックが猛威を振るっているいま、ちゃんと丈夫で持続可能、衛生的なプラットフォームほどセクシーなものはない、というのは間違いないと思うのです。
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(翻訳・編集:年吉聡太)
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