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Quartz読者のみなさん、こんにちは。月曜夕方のニュースレターでは毎回、新興市場の担い手にフォーカスしています。今週は、いまやゲーマーだけのものではないコミュニケーションハブ「Discord」(ディスコード)について、簡単にまとめてみました。
【お詫びと訂正】昨日1日に配信したニュースレター「Guides:#64 シモン・バイルズの拒絶・下」文中で、大山加奈さんのお名前を誤って表記しておりました。右URLで表示される内容では、修正をして対応しています。訂正してお詫びいたします。
Discord(ディスコード)、それはSlackやAOL Instant Messenger、Zoomその他のチャットルームを組み合わせたようなものです。基本的には“あらゆる用途のための”チャットアプリで、「サーバー」と呼ばれるクローズドコミュニティを中心に構築されています。
Discord のリリースは2015年で、まずゲーマーの間で人気を博しました。DiscordのCTO兼共同設立者であるスタニスラフ・ヴィシュネフスキー(Stanislav Vishnevskiy)は、「『サーバー』は安心できる場所であり、知り合い同士の小さなグループから同じような考えをもつ人びとの巨大コミュニティにいたるまで、すべてに対応している」と述べています。
What is the Discord app used for?
Discordってなに?
現在、Discordの月間アクティブユーザー数は1億5,000万人を超え、毎週1,900万台のアクティブサーバーが稼働しています。
ヴィシュネフスキーが「人が真のつながりと帰属意識を育む場所」と言うところの、15人以下で構成される小規模なプライベートサーバーが、その9割を占めています。Discordのコミュニティとそこで扱われるトピックは、実に多岐にわたります。その幅広さを実感してもらうべく、わたしが愛してやまないサーバーをいくつか紹介します。
- Breath of the Wild:ゲームコミュニティ。2017年発売の(そして史上最高の)ゼルダシリーズに関する決定版的存在。
- Project Owl:オープンソースのデータグループ。地政学や時事問題についてチャットしている。
- The 1975:ブリットロックのファンコミュニティ。主に音楽談義とリスニングパーティが開催されている。
- Sidechannel:独立系ジャーナリストの“協同組合”。Casey NewtonやCharlie WarzelなどのSubstack執筆者たちが集まっている。
- WallStreetBets:ミームストック・コミュニティ。個人投資家が金融市場での影響力を増してきた背景には、こうしたDiscordコミュニティの存在が大きい。
How does Discord make money?
どう収益を上げている?
プラットフォームがその規模を拡大すると、広告で収益を上げようとするものです。しかし、Discordはこれまで、それを排除してきました。CTOのヴィシュネフスキーも「わたしたちは、ユーザーのデータを収益化することに依存しないビジネスモデルを意識的に追求してきた」と言います。
Discordは、ブランドにとってファンとの絆を築く機会を提供してくれる場所。例えばテクス・メクス料理チェーンのチポトレはオンラインでの採用イベントを開催し、ファッション小売業のオールセインツはオーディオ機能を使いファンとのQ&Aセッションを行っています。
Discordの主な収益源は「Discord Nitro」──年額99ドルのサブスクリプションサービスです。Discord Nitroを利用すると、ユーザーは絵文字や自身のプロフィールのカスタマイズのほか、アップロード速度の向上やストリーミング機能、高解像度ビデオ、サーバーを改善するための「サーバーブースト」などの特典を利用できます。
Discordは、Nitroの加入者数を公表していません。が、『Wall Street Journal』は、Discordの2020年の売上は1億3,000万ドルで、前年の4,500万ドルから増加していると報じています。同期間、同社の月間ユーザー数は2倍を記録しました。
成長には(そして株式公開には)、新たな期待がつきまといます。Discordはその立ち上げ当初、白人国家主義者たちの格好の避難所として利用されており、2017年にバージニア州シャーロッツヴィルで開催された極右集会「Unite the Right Rally」でも活用されていました(この集会では「ネオナチ」を名乗る人物が人種差別反対派のグループにクルマで突っ込み、女性1人が死亡した)。
それ以来、Discordは信頼/安全のためのチームをゼロから構築。同チームは昨年時点で全スタッフの約15%により構成されています。また、サーバーの自浄作用を高めるために、ボランティアのモデレーターを対象としたカリキュラムを開始。2020年後半には2,000を数える「過激派コミュニティ」を停止したと報じられています。
Discord’s numbers
数字でみるDiscord
- 70億ドル:Discordの現在の評価額
- 1.3億ドル: 2020年の売上(2019年は4,500万ドル)
- 120億ドル:4月、Discordが拒否したとされるMicrosoftの買収提案額
- 1.5億:月間アクティブユーザー数
- 1,900万人:週間アクティブサーバー数
- 6〜10:アクティブなサーバーの平均ユーザー数
- 80万以上:最大規模サーバーのメンバー数。フォートナイト公式やGenshin Impact、Valorant、Minecraftなど。
A Q&A with Discord’s CTO
CTOとのQ&A
CTO兼共同設立者のヴィシュネフスキーとの対話の一部を紹介します。
- 🎮 Discordのルーツであるゲームについて「Discordはいまではゲーム以外の活動にも利用されている。ただ、ゲームは、ユーザーがこのプラットフォームで一緒に時間を過ごす重要な手段であり続ける」
- 🤝 パンデミックについて「2020年に入ってから従業員が2倍になった。信頼面・安全面にも大きく力を入れている。いまわたしたちがフォーカスしているのは、この勢いを継続させること」
- 🎟️ クリエイター・エコノミーについて「われわれは、マネタイズを含め、(クリエイターの)ニーズに応えるサービスを提供するためのツールを試している。最近では、少数のコミュニティを対象に、イベントのチケッティングをクローズドベータでテストしている」
- 😏 IPOのウワサについて「いかなるウワサにもコメントできないが、ビジネスの強さとDiscordの成長軌道には絶対の自信をもっている」
Cloumn: What to watch for
eスポーツも五輪に?
2021年のeスポーツ業界は約5億人の視聴者を集め、売上に至っては10億ドル以上になるとも言われています。当然のことながら国際オリンピック委員会(IOC)も目を光らせていますが、IOCがeスポーツを競技として正式に認可するには、いくつかのハードルがあります。まず、認可のために必要な世界的な統括団体が存在しないこと。また、「League of Legends」や「Counterstrike」といった人気のeスポーツゲームの多くは暴力的で、オリンピックで謳われている「友情」や「敬意」という価値観とそぐわないこと(eスポーツよりもはるかに障害が少ないチェスでさえ、受け入れられずに苦労しています)。しかし、もっとも大きな障害は、eスポーツがオリンピックを必要としていないことかもしれません。オリンピックがなくてもeスポーツはすでに巨大で、さらに巨大になっているのですから。
(翻訳・編集:年吉聡太)
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