今日から毎週木曜にお送りする「Weekly Africa」では、常に新たな動きを見せるアフリカを定点観測。最初の配信ということで、このニュースレターのブラウザ版を24時間限定で公開。ぜひSNSなどでお友だちにシェアしてください。
ナイジェリア・ラゴスの街並みを走るオートバイで知られていたスタートアップOPay。彼らはわずか3年足らずで、評価額20億ドルの金融サービス企業に成長しました。ソフトバンクが主導し、セコイア・キャピタル・チャイナをはじめとする大手企業5社が参加したラウンドで4億ドルを調達したのです。
これでOPayは、アフリカのスタートアップの中で最も速いスピードで「ユニコーン企業」の仲間入りを果たしたことになります(ただし、Opayを「アフリカのスタートアップ」とすることに異議を唱える声も。OPayのオーナーは中国の億万長者Yahui Zhouで、ノルウェーに本拠を置くソフトウェア会社Operaを通じて所有しています)。
OPayの成長の源泉となったのは、「エージェントバンキング」でした。Opayは個人に対してPOSマシンと基本ソフトを提供していますが、それによって個人が「銀行/ATM」としての機能──銀行口座を開設し、預金を受け取り、引き出し処理を実行できるように。OPayは、毎月30億ドルの取引が行われているとしています。
ベンチャーキャピタルも同社の急成長を後押ししており、2019年の半年間で5,000万ドル、1億2,000万ドルをそれぞれ調達。上記のP2Pの支払いにはじまり交通や食事、資産管理、さらにはインスタントメッセージングまでこなすスーパーアプリになる計画を進めていました。
ソフトバンクは、今回の投資によってアフリカのスタートアップをさらに支援していく姿勢を印象づけました。もっとも、今回のラウンドの規模をみれば、同社が相手にするスタートアップには、OPayのような急成長が不可欠なようにも思えます。それなりのプレッシャーが伴う可能性がありますが、ソフトバンクの参入は、アフリカのフィンテックが成熟しており、世界から注目されていることの証であるともいえるでしょう。
Stories this week
今週のアフリカ
- アフリカ、宇宙開発競争に参戦。高まるコネクティビティ(接続性)への需要に対し、アフリカ各国は宇宙に活路を見出そうとしています。世界で激変するデータ消費のありようはアフリカも例外ではなく、デジタル格差の解消を求める声も高まっています。アフリカ大陸で、さまざまな宇宙計画が立ち上がっています。
- #KOTがケニアを救う。人口5,300万人のケニアで、COVID-19ワクチンを接種したのはわずか2.13%。接種会場などの情報は、保健省のウェブサイトに掲載されているもののほとんど更新されないままになっています。ワクチンがどの医療機関にあるのか、接種するまでどれくらい待たなければならないかなどといった情報を伝える役割を果たしているは、政府広報ではなくソーシャルメディアです。
- 立ち往生するナイジェリアのロビンフッド。ナイジェリアでは、株式投資サービスを提供する企業4社が、裁判所から銀行口座の凍結命令を受けています。彼らは通常通りのビジネスを続けることを主張していますが、そのためには中央銀行の承認が必要です。
- ケニアはP2Pの暗号化取引で世界をリードする。新たな調査結果によると、デジタル通貨プラットフォームを使った個人間の取引に関して、ケニアは世界でもトップクラスだということが明らかになりました。その背景には、パンデミックによってアフリカの国定通貨が弱体化していることが影響しているようです。
- ペストの経験。アストラゼネカのCOVID-19ワクチンを開発したオックスフォード大学の科学者たちは、同じ技術を使ってペストに対する新しいワクチンのテストを行っています。史上最悪のパンデミックを引き起こしてから数世紀が経過したいまでも、この感染症はアフリカの一部地域を苦しめています。
Charting the rise of subscribers
チャートでみる
アフリカにおける定額制ビデオ・オン・デマンドの利用者数は、2021年末までに500万人を超え、さらに2026年には1,500万人に達すると予測されています。NetflixやDisney+がアフリカ市場に参入していますが、彼らはアフリカの人びとの「目」を奪い合って国内プラットフォームとの厳しい競争に直面しています。
Digital TV Researchの主席アナリストであるシモン・ムレイは、「グローバルプラットフォームがとっている戦略は、ローカルのプレイヤーの有利を覆さない」と指摘しています。
by the digits
数字でみる
南アフリカのヨハネスブルグでは「フード・バス」事業を始める人が増えていますが、それは例外。失業率は上がり続けています。
- 780万人:今年第2四半期に職を失った南アフリカ国民
- 34.4%:2021年の南アフリカの失業率(2008年に次いで高い数字)
- 41%:なかでも最も厳しい状況にあるアフリカ系黒人女性の失業率
- 1%:南アフリカの富の半分以上を所有する人口
南アフリカの記録的な失業率の背景には、COVID-19による経済的混乱はもちろんのこと、海外からの投資の減少や政府の対応のまずさ、持続的な不平等などが挙げられます。最新の調査結果はズマ前大統領収監による一連の騒動以前のもので、先行きはさらに暗いとする見方もあります。
Dealmaker
今週のディールメーカー
- ナイジェリアのモビリティスタートアップPlentywakaが120万ドルのシード資金を調達、ガーナのスタートアップStabusの買収を発表。The Xchangeがリードし、Techstars、SOSV、ShockVentures、Argentil Capital Partners、ODBA & Co Venturesおよびエンジェル投資家が参加。
- アフリカに特化した英国拠点の決済会社PawaPayが900万ドルのシード調達をクローズ。88mphとMSA Capitalがリードし、Zagadat Capital、Kepple Ventures、Vunani Capitalが参加。事業規模の拡大、人材の確保、新市場への進出を目的としています。
- エジプト設立の自動車技術スタートアップOdiggoが220万ドルのシードラウンドを実施。Y Combinator、500 Startups、Plug and Play Ventures、Seedra Ventures、LoftyInc Capital、Essa Al-Saleh(Volta TrucksのCEO)が参加。今回の投資によって、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、エジプトにおけるチームの成長と拡大を目指します。
Person of interest
アフリカ旬な人
ワシントンD.C.の国立アフリカ系アメリカ人歴史文化博物館を設計したことで知られるイギリス系ガーナ人建築家のデビッド・アジャイ。彼が次に一新するのは、ガーナの医療システムです。彼らが手がけるデザインは、ガーナの何十もの新しい地方病院に適用される予定です。
Other things we liked
その他の気になること
- コロナの牢獄。中国企業が、COVID-19の感染拡大防止を口実に、モザンビークのセメント工場で働く300人以上の労働者を事実上投獄している──衝撃的なレポートを『VICE』のTom Bowkerが伝えています。
- 化石燃料への資金提供をめぐる攻防。ジョー・バイデン米大統領は、海外の発電所やパイプラインなど、化石燃料を使用するプロジェクトに対する資金提供を再検討することを約束しました。それらの資金は、アフリカに環境汚染をもたらす産業を支えていると同時に、電気へのアクセスを改善するために欠かせないものでもあります。今週、『Climate Home』が報じたように、政府は新ルールを発表しています。それによると石炭や石油のプロジェクトには資金を提供しないが、天然ガスには門戸を開くとされています。
- リベリア産カカオへの期待。アフリカ大陸のカカオ生産国で代表的なのはコートジボワールやガーナですが、リベリアにも負けず劣らずカカオ栽培に適した気候・環境が備わっています。ただし、いまはまだ品質が安定せず、努力に見合った価値が得られていません。
🎵 今週の「Weekly Africa」は、ケニアのThem Mushroomsによる「Wazee wakatike」を聴きながらお届けしました。
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