Weekend:さよなら、ガールボス

Weekend:さよなら、ガールボス
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月曜なのに「週末?」と面食らった方もいるかもしれません。今日から毎週月曜にお送りする「Weekend Brief」では、先週の注目ニュースをフィーチャー。今週1週間をフレッシュな気分で過ごすための振り返りとして、お楽しみください。

男性の起業家であれば、自らのキャリアをアダム・ノイマン(WeWorkから追放された)やビリー・マクファーランド(ファイア・フェスティバル〈Fyre Festival〉の詐欺で大炎上した)と比較されることを心配することはないでしょう。しかし、女性起業家は、先週から公判が始まったセラノス創業者兼元CEOエリザベス・ホームズの“遺産”に、多かれ少なかれ影響を受けています

2015年のスキャンダルの前にも後にも、ホームズは注目されてきました。それは、セラノスほどの耳目を集めるスタートアップを女性が率いるということそのものが比較的少なかったことも、理由のひとつといえます。しかし、そこには、ガールボス」(Girlboss)に対する少なからぬ揺り戻しがあったのも事実です。

ガールボスということばそのものは、2014年にファッションブランド「Nasty Gal」の創業者であるソフィア・アモルソがつくった造語です。ガールボスはすぐに、当時新たに生まれつつあった「女性CEO」を表す言葉となりました。若くて野心的で、リーンイン・スタイルの企業フェミニズムを取り入れている(そして、多くの場合、白人で裕福な出自である)女性リーダーたち──。その定義からいうと、ホームズは正確にはガールボスではありませんでしたが、ガールボスという存在が大きくクローズアップされたときに権力を得たひとりでした。

「ガールボスの成功」は、社会全体がジェンダー平等に向けて大きく進んでいることを象徴するという気運もありましたが、具体的にそれがどういうことなのか、実のところ不明瞭なままでした。

揺り戻しが始まるのは、2010年代後半からです。「リーンイン」(Lean In)は組織的な問題を何ひとつ解決していないと指摘され始め(提唱者であるシェリル・サンドバーグが、2016年の大統領選挙以降のフェイスブックにおいていったいどんな発言をしたというのでしょう)、Awayのステフ・コーリーしかり、Thinxのミキ・アグラワルしかり、スタートアップの女性リーダーがむしろ有害な環境をつくり出していたことが報道で明らかになりました。著名なガールボスの、理想と現実の大きなギャップ。ガールボスは「特権」と「口約束」の代名詞となりました(その背景に、「ハッスルカルチャー」を旗印にして従業員を犠牲にし、自分の成功にのみ邁進するリーダーを否定する流れがあったことも記しておきます)。

2021年には、男女を問わず、ガールボス的な戦術はさらに通用しなくなるでしょう。パンデミックが収束せずその影響が長引くなか、労働者は燃え尽き症候群に苦しみ、雇用者と従業員の間の力関係には後戻りできないほどの大きな変化が起きようとしています。新しい時代のリーダーシップとはどんなものかを考えてみると、それは「他人を第一に考える」ことなのかもしれません。


The backstory

変化のウラ側で

  • みんながガールボスを愛していた。作家のリー・スタインは、ガールボスとは「自己啓発というレンズを通して、会社の職場で成功するためのゲームプラン」だったと指摘しています
  • いまでは蹴落としたいと思っている。未来の歴史家は、「ガールボス時代」の終わりを2020年の夏とするでしょう。このとき、The WingMan RepellerRefinery29などのフェミニスト企業に職場での深刻な問題が発覚し、それら企業のトップに降りかかりました。
  • この揺り戻しは一筋縄ではいかない。インターセクショナリティを欠いたフェミニズムがいかに落とし穴に陥るか、精査されなければなりません。現代社会では、いまだ、権力をもった女性が貶められるストーリーが貪欲に求められているのです。

Lean In

interlude

リーンインといえば…

Facebook COO Sheryl Sandberg
Facebook COO Sheryl Sandberg: Still the most powerful woman in Silicon Valley.
Image: Reuters/Mike Blake

2013年に出版されたシェリル・サンドバーグの著書は、当時、「ガールボスのマニフェスト」というべきものでした。しかし、その評価は年を追うごとに変化しています(評価が変わってきているのはサンドバーグも同じく、です)。例えばミシェル・オバマも、個人の自己啓発を強調したリーンインに異議を唱えています。「わたしは女性たちに、『あなたはすべてを手に入れることができる』という言葉は嘘だと伝えています。いつもキャリアの世界に前のめり(リーンイン)になっていればいいというものではありません。そんなものが、いつもうまくいくわけではありませんから」(2018年の発言)


What to watch for next

これから注目すべきこと

  1. マネジャーのための新しいプレイブック。米国ではフェミニズム反レイシズムなアクションを、インクルーシブなアプローチとして力を入れている企業が出てきています。前者の実例として、Quartzでは、クレアモンと大学の「Worker Wellbeing Lab」の事例を紹介しています(翻訳)。
  2. ホワイトカラーの労働組合の勢い。米国の知的労働者の中には、職場をより従業員に優しいものにしようと組織化を目指す人たちも。象徴的なのが、グーグルのエンジニアなど200人以上が集結した「アルファベット労働者組合」です(翻訳)。
  3. グローバルでも動いている。中国では従業員が「996」の文化(「朝9時から夜9時まで、週に6日間働く)に反発し、インドではリモートワーカーがワークライフバランスの改善を求めています
  4. Z世代の寄せる期待のかたちにも変化が。今日の若者たちは、多様性、インクルージョン、倫理、従業員の福利厚生を優先する企業で働くことを望んでいます
  5. 新鮮で創造的なポリシー給与の完全な透明化週4日制などのアイデアは、議論を呼ぶこともありますが、革命的な可能性も秘めています。

7 stories to spark conversation

今日の会話のきっかけに

🚨 テキサス州の妊娠中絶禁止法は、市民を賞金稼ぎに変える。新たな法の下、市民は中絶を行った医師だけでなく、中絶を手助けした人を訴えられるように。カウンセラーから、中絶のための経済的支援を行った人、中絶することを知っていながら女性をクリニックまでクルマで送った人まで、あらゆる人が対象となります。被告が有罪となった場合、告発者は、訴訟費用に加えて最高1万ドルの損害賠償金を受け取ることができます。

🌀 ニューオーリンズのインフラはハリケーン・アイダに…耐えられた。ニューオーリンズのラトヤ・カントレル市長は、8月30日の記者会見で「カトリーナの二の舞にはらなかった」と述べています

🥽 Facebookの「Horizon Workrooms」は最悪のオフィスライフをもたらす。FacebookのVRオフィスアプリをQuartz記者がテスト。Oculusヘッドセットを装着して試してみましたが、その使用感はイマイチでした

🇨🇳 中国市民はタリバンとの提携に納得していない。中国当局は公式談話や国営メディアにおいて、タリバンは北京との協力が可能な、「改革された」「より冷静で理性的」なグループとして売り込もうとしていますが、同国のソーシャルメディア上では、アフガニスタンの人々が必死になって逃げようとしている様子や、イスラム原理主義の脅威に怯える女性たちのニュースが溢れかえっています

🍟 ファーストフードチェーンにダイニングルームはまだ必要か? デルタ株感染者数が増加し、労働者不足が続く米国。ファーストフード店の多くが食事用スペースを閉鎖しています。外食産業を専門に研究しているバージニア工科大学の研究者は、「レストランはいま、設計そのものを見直すべく多額の投資をしている。屋内の食事スペースは今後なくなっていくだろう」と述べています

🏀 ファンタジースポーツの第一人者、ESPNのマシュー・ベリーの繁忙期がやってきた。ファンタジースポーツは、この20年間で70億ドル規模の産業となっています。9月9日に開幕するナショナル・フットボール・リーグのシーズンを前に、全米各地で、友人、家族、同僚が集まって、毎年恒例のファンタジー・フットボール・ドラフトに参加しています。ファンタジースポーツのアンバサダー的な存在、マシュー・ペリーにインタビューしました

🎲遊びのない仕事は誰もが退屈になる。著名な心理療法家で人間関係の専門家でもあるエスター・ペレルは、仕事にゲームを取り入れることで、同僚との人間関係が良好になり、結果的に仕事がより充実したものになると主張しています。ペレルは、今年初め、カードゲーム「Where Should We Begin – A Game of Stories」を発売しています。


今日のニュースレターは、Sarah Todd(シニアレポーター、理想のボスはドラマ「パークス・アンド・レクリエーション」のレスリー・ノープ)と、Kira Bindrim(エグゼクティブ・エディター、理想のボスは、コメディア「30 Rock」のリズ・レモン)がお届けしました。


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