Stories this week
先週〜今週のアフリカ
- 悲劇を忘れない。ナイジェリアのラゴスで、警察(対強盗特殊部隊、SARS)の暴力に抗議するデモ隊に軍兵士らが発砲した悪名高い事件から1年が経ちました。10月20日には警察の意向に反して追悼式が開かれ、遺族たちが犠牲者への想いを語りました。
- アフリカのステレオタイプを払拭する。多くのアフリカ人にとって、自国以外のアフリカの国々を知るためのソースは主に欧米のメディアで、実際に旅をして実情を見聞きすることはありません。アフリカの動画配信サービス「Showmax」が制作した『Africa and I』は、欧米のメディアによってつくられた固定観念を払拭しながらアフリカの美しさや多様性、人びとの寛大さを紹介する新しいドキュメンタリー作品です。
- ラグビーW杯のアフリカ大陸予選、フランスで開催へ。ラグビーアフリカ(アフリカラグビー協会)が、ラグビーワールドカップ2023のアフリカ予選をフランスで開催することを発表しました。一部のラグビーファンや関係者はこれについて、アフリカ人ファンたちの観戦を難しくする「新植民地主義的」な決定だと非難していますが、同協会は知名度向上や収入の面でアフリカのラグビーの成長に「最高の機会を提供する」と主張しています。
- ガーナの反同性愛者法案。ガーナ議会が反同性愛者法案の可決を目指しています。同法案は「転換療法」を提唱し、LGBTQI+と名乗る者には5年の懲役、コミュニティの権利を擁護する者には最大10年の懲役を科すものです。これに関連し、ガーナでゲイとして育ったアーサー・ムサが、自らの経験や公に認められたホモフォビア(同性愛嫌悪)の脅威について、個人的なエッセイの中で振り返っています。
- アフリカの決済を近代化する。ブロックチェーンは、アフリカの即時決済を本当に可能にするのでしょうか? ナイジェリアを拠点とするフィンテック企業Appzoneは、その可能性に賭けているようです。同社は、銀行がステーブルコインを使ってより速くより安く取引を決済するためのプラットフォームを提供しています。
CHARTING STRONGEST PASSPORTS
チャートでみる
上記の図表は、新たなランキングシステムによって順位付けされた「アフリカ最強のパスポート」ランキングです。このランキングでは、電子渡航認証(eTA)が使える国やビザ(査証)なしで渡航できる国の数などを考慮した「エンハンスド・モビリティ」、1人あたりの国民総所得(GNI)や世界経済フォーラムの世界競争力指数などを考慮した「投資」、医療、教育、個人の安全などを評価した「生活の質」という3つの指標と、そのすべてを総合したグローバル指標でランク付けしています。アフリカのパスポートを所有する人々にとって、ビザが使える国が少ないことが海外旅行を難しくしています。
Dealmaker
今週のディールメーカー
- 消費財の卸売業者向けの配送サービスを提供しているエジプトのILLAが、サウジアラビアのWatheeq Financial ServicesとGolden Palm Investmentsが主導するラウンドで200万ドル(約2億2,735万円)を調達しました。2019年に創業したILLAは、コカコーラやプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、ネスレ、ペプシコを顧客に、25万件の取引を行ってきたといいます。
- ナイジェリアのフィンテックスタートアップのBrassは、中小企業向けの銀行サービスを提供するために170万ドル(約1億9,330万円)を調達しました。この投資ラウンドには、ナイジェリアの企業であるVentures Platform、Hustle Fund、Acuity Ventures、Uncovered Fundが参加しています。また、決済サービス会社Flutterwaveの最高経営責任者(CEO)を務めるオルグベンガ・アグブラと、2020年にStripeによって買収されたナイジェリアのフィンテック・スタートアップPaystackの共同創業者であるエズラ・オルビも出資しました。
- アフリカに投資するプライベート・エクイティ・ファームAdenia Partnersが、ケニアでバラの栽培を手がけるRed Land Rosesを買収しました。Adenia Partnersは、Red Land Rosesの親会社であるAltilands SAの株式の株式を取得しています。Adenia Partnersは今回の買収によってRed Land Rosesの農地を現在の28ヘクタールからさらに20ヘクタール増やし、従業員も2年間で500人から750人に増やす予定です。
Other things we liked
その他の気になること
- エジプトでアートロボットが押収された。エジプトでは今週、世界初のリアルなロボットアーティスト「Ai-Da」が作品を発表する予定でした。『The Guardian』のナディア・コマニは、なぜこのロボットがエジプトの治安部隊に拘束されることになったのか、その理由を報じています。
- アフリカーナー文化の変遷。アフリカーンス語で発行される雑誌『Huisgenoot』は、南アフリカで最も発行部数の多い雑誌です。1916年の創刊以来、この雑誌がいかにアフリカーナ文化の変化を反映してきたかについて『The Economist』が詳報しています。
- 結核に関する新事実。このたび南アフリカで発表された結核に関する新たな研究結果は、この病に対するこれまでの考え方を覆すものでした。結核はその代表的な症状である咳よりも呼吸を通じて感染しやすいことが明らかになったのです。この研究結果は、新型コロナウイルスの拡散を防ぐための最善の方法と相まって、感染症対策の新たな時代の到来を告げるものであると『The New York Times』のアプオルワ・マンダヴィッリは語っています。
- セネガル大統領の危険な賭け。セネガルではマッキー・サル大統領の経済政策を背景に、エネルギー部門への投資が盛んに行われています。しかし、2024年に本来は違憲である大統領3期目を目指すサルの意図とこの活発な投資の間には矛盾があり、それが西アフリカの模範的な民主主義と平和への脅威となりうるとトム・コリンズが『African Business』に書いています。
one more 💡 thing
脱・白人救世主主義
側近女性との不倫騒動により、今年6月に英保健相の職を辞したマット・ハンコックが、またしても大きな仕事を失いました。彼は10月12日、国連のアフリカにおける新型コロナウイルス対策特使に任命されましたが、直後に大きな批判が巻き起こった結果、国連がわずか4日で任命を撤回したのです。
アフリカの医療系NGOであるAmref Health Africaのグローバル最高経営責任者(CEO)で、アフリカ疾病予防管理センター(アフリカCDC)の役員でもあるギティンジ・ギタヒ博士は今回のハンコックの選出について、グローバルヘルスの領域に根強く残る「白人救世主主義」を表していると述べました。「こうした人事には、英国人がアフリカの健康問題や気候変動における救世主とみなされていることが反映されています」と彼は言います。「同じことは、健康問題に対する技術支援のあり方にも、資金の使い方や資源配分に関する人事にも反映されているのです」
ハンコックは英国内での個人用防護具の確保や貧困国へのワクチンの平等な供給にも失敗しており、本来果たすべき重要な役割を果たせていなかったことが明らかになっています。アフリカでのワクチン接種率は5%にも満たず、経済成長の見通しも立たない状況ですが、ハンコックの代わりにアフリカの新型コロナウイルス対策を率いることになる人物はそうした現状と戦っていくことになるでしょう。
今回のハンコックの任命撤回は、アフリカ大陸における白人救世主主義に対する小さな勝利であると同時に、グローバルヘルスの脱植民地化を求める大きなムーブメントに続くものだともいえます。この動きについては、2021年にはアフリカの主要な科学者のグループが公開書簡(PDF)を発表し、科学や開発分野の資金提供者たちに対して政策と実践をよりインクルーシブなものにすることを求めたことも注目を浴びました。
──Maxine Betteridge-Moes
🎵 今週の「Weekly Africa」は、リベリア共和国のKobazzieによる「Respect Urself」を聴きながらお届けしました。日本版の翻訳は川鍋明日香、編集は年吉聡太が担当しました。
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