Stories this week
今週のアフリカ
- フリータウンが「Chief Heat Officer」を任命。 シエラレオネの首都フリータウンのイボンヌ・アキ・ソーヤー(Yvonne Aki-Sawyerr )市長は、気候変動対策を担当する「Chief Heat Officer」(最高熱波責任者 )を任命しました。アフリカの国としては初となる今回の任命についてアキ・ソーヤー市長は、気候変動への対策と適応にリソースを投入する同市の取り組みの成果であり、同様の役職が他の都市でも設置されることを期待していると話しています。
- エチオピアの紛争とSNS。 政府軍と少数民族の勢力の間で戦闘が続いているエチオピア。この内乱を受け、Facebookはアビー・アハメド首相の投稿を暴力扇動禁止の規約に違反しているとして削除し、Twitterは同国での「トレンド」機能を一時的に無効にしました。
- Zipline、ナイジェリアで医療品配送へ。Ziplineがルワンダでドローンによる医療製品の配送を開始してから5年。同社はナイジェリア市場への参入に向けて準備を進めています。同社は血液製剤の調達や飛行許可の取得などでナイジェリア政府の協力を得つつ、革新的なハードウェアとソフトウェアで他社との差別化を図っています。
- マリへの経済制裁で増える非公式ルートの送金。サブサハラアフリカへの送金額は、公式には毎年400億ドル(約4兆5,662億円)以上とされています。しかし、西アフリカでは経済制裁やその他の規制を回避するために、8世紀から使われてきた「ハワラ」(Hawala)と呼ばれる送金手段などを用いて公式な送金額をはるかに上回る額が送られていると見られています。
- アートフェアがオフラインで開催。2016年から毎年ナイジェリアで開催されてきた国際的なアートフェア「Art X Lagos」。2020年はパンデミックのためにバーチャル開催となりましたが、今年はオフラインのイベントとして帰ってきました。11月4日にフェアが始まると、アーティストや出展者、来場者、そして喜びとインスピレーンを与えるさまざまな作品が世界中から集まりました。
- エジプトを悩ませるCOP27のジレンマ。2022年に予定される国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)の開催国がエジプトに決まりました。 慢性的な停電から脱却し、天然ガスの生産量が増えてエネルギーの純輸出国になったばかりです。そうした状況で開催されるCOP27は、黎明期にあるエジプトのクリーンエネルギー分野に海外からの民間投資をもたらす可能性がある一方、化石燃料への依存度が高まっているエジプトの現状に人々の目を向けることにもなるでしょう。
Keep an eye on CHO
CHO、何するものぞ
世界保健機関(WHO)によると、2000〜2016年の17年間で、熱波にさらされた人口が1億2,500万人増加したとされています。米国での熱波発生は、1960年代には年2回程度でしたが、2010年代には年に6回に増加。農場労働者が数百人死亡し、数万人が重篤に陥っています。ヨーロッパでは、2003年、7万人が熱波で亡くなりました。
かたやアフリカについては、正確なデータがほとんどなく、公共政策の取り組みの多くが頓挫しています。そんななか、先月、シエラレオネの首都フリータウンではアフリカ初のCheif Heat Officer(CHO、“熱”管理責任者)が任命されました。
CHOに就任した34歳のEugenia Kargboは、元銀行員で、2児の母。目下取り組むのは、データ収集です。「猛暑をトラックすることが、人びとに気候変動への意識を高めてもらうための第一歩です」と、フリータウン市長はQuartzに語っています。
CHARTING COVID-19 VACCINATION
チャートでみる
世界保健機関(WHO)によると、「2021年末までに人口の40%に新型コロナウイルスワクチンを完全接種する」という目標を高所得国の7割が達成しました。その一方、アフリカでこの目標を達成できる国は1割に満たないと予測されています。
現在アフリカでこの目標を達成している国はセーシェルとモーリシャス、モロッコの3カ国で、こののペースで接種が進めばチュニジアとカボベルデの2カ国も達成できるでしょう。アフリカ大陸で接種が進まない理由としては、各国がワクチンの確保に苦戦していること、また注射器などのワクチン接種に必要な医療器具の需要が高まっていることなどが挙げられます。
Dealmaker
今週のディールメーカー
- Flutterwaveが、ナイジェリアのデジタル・クリエイター向けECプラットフォームであるDishaを買収しました。買収価格は明かされていません。Dishaの経常収益は1,000ドルをわずかに超えるほどで、2021年初めには廃業の危機にありました。苦境に立たされていた同社を買収した理由について、Flutterwaveの最高経営責任者(CEO)を務めるオルグベンガ・アグブラ(Olugbenga Agboola)は「インディーズ・クリエイターたちが生む新市場に参入する機会」を提供し、「Flutterwaveを『フリーランサーと企業の成長パートナー 』として位置づけられるから」だとしています。なお今回の買収は、Flutterwaveにとって初の買収です。
- 南アフリカでBaaS(Banking as a Service)を提供するJumoが、1億2,000万ドル(約137億円)を調達しました。このラウンドにおける同社の評価額は4億ドル(約456億6,210万円)です。このラウンドはFidelity Management & Research Companyが主導し、VisaとKingsway Capitalも参加しています。Jumoはガーナやタンザニア、ケニア、ウガンダ、ザンビア、コートジボワール、パキスタンで事業を展開しており、これまで1,800万人以上の顧客に計35億ドル(約3,995億4,337万円)を超えるローンを発行しているといいます。
- アフリカ全土で決済システムを展開するMFSアフリカは、7,000万ドル(約79億9,100万円)の株式と3,000万ドル(約34億2,465万円)の負債によって、シリーズCラウンドで1億ドル(約114億1,552万円)を調達しました。このラウンドはプライベート・エクイティ・ファンドのAfricInvest FIVEとGoodwell Investments、およびLUN Partners Groupが共同で主導しました。MFSアフリカは過去18カ月でいくつもの企業を買収しており、最近ではナイジェリアのCapricorn Digitalの買収を通じてエージェント・バンキングに関するノウハウを獲得しています。
Other things we liked
その他の気になること
- オピオイドが違法になったナイジェリアのその後。ナイジェリアは2018年、オピオイド系の鎮痛剤である「トラマドール」を大きく規制し、この薬の非公式な販売を違法としました。『The Conversation』ではイニ・デレ=アデデジ(Ini Dele-Adedeji)、アマンダ・シュミット=スコット(Amanda Schmid-Scott)、ゲルノット・クラントシュニッグ(Gernot Klantschnig)が、非公式だが合法だった活動が違法になると何が起こるかを考察しています。
- 電気自動車とコンゴの鉱山労働者。電気自動車の普及によって、バッテリーの原料となるコバルトの需要が高まっています。こうしたなかコンゴのコバルト鉱山では、労働者が危険な状況下で1日3.5ドル(約400円)というわずかな報酬で働いていると、『The Guardian』のピート・パティソン(Pete Pattisson)が書いています。
- 臨床試験の参加者が集まらない。アフリカでは、COVID-19の治療薬の臨床試験が難航しています。ワクチン接種がいまだ進まないアフリカにとってこの問題がどのような意味をもつかを、アブドゥライ・トゥサーニ(Abdullahi Tsanni)が『Nature』で書いています。
- 硫酸を浴びて変わった人生。ジャーナリストのフアド・ラワル(Fu’ad Lawal)は『Substack』で、Muriという男性の人生と、彼が生きたナイジェリアの過去約40年の歴史を振り返っています。記事の中では、コカイン密売人の公開処刑といった政府の選択が、学校で硫酸を浴びる事故にあったことをきっかけに人生に失望した若いナイジェリア人にどのような影響を与えたかが語られています。
One 🏢 Thing
治安とリモートワーク
「首都アブジャにいてナイジェリア各州を統治している知事を批判することはできない。しかし、ロンドンからナイジェリアの企業を経営する人のことは非難したい。皆、リーダーシップについてちゃんと学んだほうがいい」
ユニコーン企業Andelaの共同創業者で、かつてはFlutterwaveを率いたリン・アボイエジ(Iyin Aboyeji)は上記のようにTwitterに投稿し、ナイジェリアのテック業界から怒りを買うことになりました。多くの人は、アボイエジが「ナイジェリアに住みながら会社を経営している起業家だけが、犠牲を払いながら社会を変えようとしている真のリーダーである」という極めて不当な非難をしていると考えたのです。アボイエジ自身が起業当初に利用していたインキュベーションセンター、Co-Creation Hubの最高経営責任者(CEO)であるボースン・ティジヤニを始め、多くの人がアボイエジの主張に激しく反論しました。
そもそもリモートワークが当たり前になったいま、ソフトウエア企業のリーダーが特定の場所に住まなければならないとする客観的な理由はありません。アフリカのスタートアップの中心地とも言われるラゴスは、生活や仕事をする上では依然として居心地の悪い場所であることを踏まえると、リモートワークができるようになった現状は重要な意味をもちます。英『Economist』誌の調査部門であるEconomist Intelligence Unitがインフラや安定性、ヘルスケアなどを考慮して算出した「Liveability Index(住みやすさ指数)」によると、ラゴスはシリアのダマスカスに次いで住みにくい都市第2位にランクインしています。
さらに、ナイジェリアの警察は少なくとも5年前から一貫してテック業界の若者を標的としており、これは2020年に警察特殊部隊(SARS)による警察暴力に抗議する「#EndSars(SARSを終わらせろ)」運動の一因にもなりました。高給の技術職であっても、ナイジェリアの無数の不安要素から逃れることはできないのです。
ツイートへの反発を受けたアボイエジはちょっとした謝罪文を発表し、「アフリカの起業家は地元で犠牲を払うべきだ」という至極合理的な指摘をしたかっただけだと弁明しました。とはいえ、自分のことを絶滅しつつあるサーバントリーダー(自己犠牲的に周りに奉仕するリーダー)の最後のひとりだと言うような見せ方をしなければ、もっと良い評価を得られたかもしれません。
「正直に言うと、まったく逆のことをしようとしているんです。つまり、より大きな利益のために犠牲を払うことができる起業家を育成するということです」と、アボイエジはQuartzの取材に対して答えました。
それはいいことなのでしょう。しかし、彼を批判した人びとが言うように、海外に住むアフリカ人起業家たちも同じことができるし、実際にしているのです。
──Alexander Onukwue, west Africa correspondent
🎵 今週の「Weekly Africa」は、カボベルデのLuraによる「Sabi Di Más」を聴きながらお届けしました。日本版の翻訳は川鍋明日香、編集は年吉聡太が担当しました。
🎧 『Off Topic』とのコラボレーションで実施してきたウェビナーシリーズ。いよいよ最終回となる第4弾は、11月25日(木)20:00〜21:30に開催する予定です。参加申込みはこちらからどうぞ!。
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