Obsessions:TwitterよりSquare、の理由

Jack Dorsey testifies remotely during a Senate hearing in 2020.
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Twitterの共同創業者、ジャック・ドーシー。文字通りTwitterの顔であった彼が、6年間務めたCEOを退任することになりました。昨日29日(現地時間)、同社でCTOを務めていたパラグ・アグラワルが同職を引き継いでいます。

ドーシーは、Twitterに投稿した“辞表”において、同社には共同創業者のビジョンと支配から脱却してほしいと述べています(創業者主導の企業は「(その行動を)深刻なほどに制限される」とも)。

leaving Twitter on a high note

意気揚々と辞められる

ドーシーは2006年からTwitterの初代CEOを務め、2008年に経営から離脱、2015年に復帰しました。

復帰以降のドーシーは、2009年に自身が創業した金融サービス企業SquareのCEOも兼任しているため、Twitterへのコミットメントに関する質問に答えなければなりませんでした。昨年、ドーシーは、「物言う投資ファンド」としても知られるエリオットマネジメントのアクティビスト、ジェシー・コーンから大きな“挑戦”を受けていました(長期にわたる戦いの後、コーンによる退陣要求は最終的に失敗。コーンはTwitterの取締役に収まりましたが、2021年4月に同職を退任)。

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ドーシーは大手を振ってTwitterを去っていくことになります。Twitterの1日の利用者数は2億1,100万人で、Facebookの約20億人には(およびSnapchatやTikTok、Pinterestの利用者数にも)及びません。しかし、Twitterがいわゆる「ニュース」において欠くことのできないプラットフォームであることに変わりありません。それは、政治的な話題をするにもライブイベントを告知するにも、あるいはドナルド・トランプ元米国大統領のような世界のリーダーにとっても(トランプは2021年1月6日の米国連邦議会での暴動の際、Twitterで大衆を扇動したとして現在は禁止されている)。

在任中のドーシーには、プラットフォーム上での誤報/デマやヘイトスピーチ、プラットフォームを悪用するリーダーたちに対応する断固たる判断が求められ続けました。同時に、広告機能の改善や新製品・新収入源の導入に注力。Twitterの株価は、パンデミック以後、2020年3月の安値と比べて2倍を記録するなど好調で、最近もサブスクリプション版の「Twitter Blue」をローンチさせ、「Spaces」機能ではライブオーディオにフォーカスしてきました。

Why Square over Twitter

Twitter<Squareの理由

現在のドーシーにとって、自身の全精力を傾けるべきは、Squareであるようです。

Squareは、中小企業を中心にPOSレジサービスを提供していますが、PayPalのVenmoの競合となるP2P決済アプリ「Cash App」も展開しています。最近も「BNPL(buy now, pay later; いま買ってあとで払う)」方式のリーダー的な存在、Afterpay(オーストラリア)を290億ドルで買収、Eコマース事業を拡大しています。さらに、ウェブホスティングサービスのWeebly、音楽配信サービスのTidal、そして最近までフードデリバリーアプリのCaviarも所有していました。

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Twitterは2021年の各四半期に利益を出していますが(高額な訴訟和解金が発生した第3四半期を除く)、2020年には11億4,000万ドルの損失を計上しています。Squareは、2021年第3四半期だけで11億3,000万ドルの粗利を計上しており、ここ数年は常に利益を上げています

Twitterの経済的な成功はといえば、GoogleやFacebookが牛耳るデジタル広告における売上にほぼ限定されています。一方のSquareはといえば、一般消費者の決済システム全体を掌握している──実店舗での販売、Eコマース、P2P、さらに最近では暗号市場も──わけです。Twitterはあらたな収益源をサブスクリプションサービスで構築しようとしていますが、Squareはローリスク・ハイリターンなカードをより多くもっているといえそうです。

Doubling down on cryptocurrency

クリプトに「つっこむ」

退任の理由は、あるいは個人的なものかもしれません。ジャック・ドーシーはいま、暗号通貨に夢中になっています(Twitterのプロフィールをみれば、「#bitcoin」とだけ書かれているのに気づくでしょう)。今年8月にも、ドーシーは、ビットコインが「深く分断された国家をひとつにする(そして最終的には、世界を)」と投稿。今後10年でビットコインが世界の単一通貨になると予言し、Twitterの未来にとってビットコインが「大きな役割」を果たすと宣言しました。

Jack Dorsey testifies remotely during a Senate hearing in 2020.
Jack Dorsey testifies remotely during a Senate hearing in 2020.
Image: Reuters / Hannah McKay

そんな野望を抱くドーシーにとって、Twitterは適切な場所ではないかもしれません。というのも、Twitterは、この分野において競合他社に遅れをとっています。アプリ上で収益を得ようとする「クリエイター」の期待に応えられるよう、ブロックチェーンプロジェクトや暗号通貨に取り組むチームを立ち上げましたが、同社CFOのネッド・シーガルは、暗号通貨への投資については消極的です。

その点、Squareは、ドーシーの「暗号化ユートピアの夢」を実現するために必要な財布を提供しうるでしょう。Squareの暗号通貨への投資はすでに大きく、2021年2月に1億7,000万ドルのビットコインを追加購入したのを最後に、手元資金の約5%をビットコインで保有しています。Squareが提供する「Cash App」は、ユーザーが同プラットフォームでビットコインを売買できるようにするものだし、ビットコインベースの分散型金融プラットフォーム(DeFi)に取り組んでいるうえに、ビットコインのマイニングシステム構築検討しているとされています

TwitterではなくSquareで。暗号通貨の未来に賭けようとするドーシーにとって、その選択肢は自ずと決まってくるのです。


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