Forecast:これからのCEOはこう変わる

Forecast:これからのCEOはこう変わる
The CEO of the future
Image: Allie Sullberg

この10年で、世界中のcorner office(役員室)は「脱ジャック・ウェルチ化」(ジャック・ウェルチはGE元会長で「米国型CEO」を代表する経営者。2020年没 )とでも言うべき大きな変化を遂げました。

マイクロソフトでは、スティーヴ・バルマーからサティア・ナデラへ、アップルでは、スティーヴ・ジョブズからティム・クックへ。それぞれのバトンタッチを考えてみると、絶対的な王政がゴールだった時代は終わり、より協力的でコンサルティブなアプローチが定着し始めたのです。

さらにこれからの10年で、グローバルなビジネスリーダーは、スタイルよりも中身が重視されるようになるでしょう。人間味のある態度や、ビジョンの設定、戦略を伝えること、強力な部下を雇用する能力などは依然として重要ですが、それだけでは十分ではありません。今後、より多くのCEOが、さまざまな内的圧力や外的脅威を理解し、それに迅速に対応することを求められるのです。

今後数年間で企業トップが直面する課題は、挙げ始めるとキリがありません。例えば……

これらの問題一つひとつは、決して真新しいものではありません。ただ、早急な対応が求められています。

こうした変化に、CEOは対応できているでしょうか? 勇気ある企業であれば、CEOの報酬を多様性の目標排出削減量と連動させるなどしているかもしれません。あるいは、ビジネススクールなどは先進的なコースを提供し、民間企業が社会において果たすべき役割についての理解を深める機会を与えてくれるかもしれません。いずれにせよ、CEOの役割の変化は、市場が求めているのです。


JOB DESCRIPTION

変わる「仕事力」

リーダーシップコンサルティング会社のSpencer Stuartによると、2019年時点で、「フォーチュン500」に名を連ねたCEOの約5分の1が、かつてCFOを務めていたようです。この流れは、株主の利益が支配する世界では完全に理にかなっています。

しかし、株主以外のステークホルダーの存在を認めたり、ビジネスが複雑化するなかで企業が経営者による業績予測を出さなくなったりする状況では、CEOレベルには異なる種類の専門知識が必要になります。

Heidrick & Strugglesの調査によると、企業はトップレベルの人材を見つける際、より「広い範囲」を視野に入れているといいます。2021年の上半期と下半期を比較すると、後半6カ月間に任命されたCEOは、いわゆるCFO/COO職を経た者ではないことがわかっています。

ハーバード・ビジネス・スクール教授のラファエラ・サドゥンも、最近の研究で同様のことを発見しています。サドゥンおよび論文共著者は、ヘッドハンティング会社が作成した経営幹部の職務経歴書を分析し、そこで求められているスキルをコード化しました。その結果、社会的スキルがより重要に、財務的スキルはそれほど重要でなくなっていることが判明。これは特に、テック企業で顕著でした。

「技術的に高度な企業になればなるほど、他社の知識を調整する能力が重要になります。自分よりはるかに多くの知識をもつ人たちを管理することになりますからね」と、サドゥンはQuartzの取材に答えています。そこで必要となるのは、共感力と感情的な知性なのです。

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DAY IN THE LIFE

CEOの1日って?

いわゆるCEOは、どんな一日を過ごしているのでしょうか? 前出のサドゥン教授は別の研究で、6カ国のメーカー(従業員1,000人以上)のCEOの事務アシスタントに対するアンケートを実施。CEOたちがどのように時間を使っているかを尋ね、15分以上かかる活動があれば記録してもらいました。その結果、CEOは一日の大半を、ミーティングに費やしていることがわかりました。

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POST-CEO

これからのCEOとは

CEOのいない、株主によって所有され運営されている会社を想像してください。そのルールやガバナンスなどすべてが、コード、特にブロックチェーン技術によって規定され、自動化されていると想像してみてください──。これが、いま注目を集めている、分散型自律組織(DAO)の背景にある考え方です。

DAOの支持論者たちは、DAOの台頭は、コミュニティの運営方法を変え、最終的には企業やインターネット、さらには社会全体を大きく変えるだろうと声を上げています。

長所

  • ミドルマン(中間者)がいない。あらゆるDAOは、メンバーが主体となって運営されています。スタートアップをはじめとするさまざまな投資において、銀行やジェネラルパートナーといった第三者機関を経由する必要がありません。
  • 透明性が確保されている。参加者すべてが組織のプロセス/意思決定にアクセスし、影響力を行使できます。

短所

  • 効率が悪い。各種の決定には、コミュニティによる投票が必要。ただし、代表者を選ぶことができるシステムも存在しています。
  • トークンの価値が変動しやすい。組織に対する信頼が失われると、トークンの価値が急落し、組織がもっていた資金プールが無価値になる可能性も。インセンティブ構造の設計を誤ると、いたずらに投機家を惹きつけ、コミュニティの価値を下げてしまう可能性があります。
  • 権限が一元化される危険性も。とくに資金調達の初期段階において、「ガバナンストークン」が初期の資金提供者に集中しがち。結果、プロジェクト本来の目的が損なわれる可能性があります。

もっとも、DAOが普及してもCEOがすぐにいなくなるわけではありません(株主が1日に何度も会社の方針について投票しないのと同じ理由です)。戦略や日々の経営に関するあれこれは、投票だけで処理するにはあまりに頻繁で専門的です。DAOは、新しい意思決定の仕組みを生み出すかもしれませんが、ほとんどの組織では、上級管理職が行うべき仕事はまだたくさん残っています

👀 DAOについては、過去配信ニュースレター「DAOの基礎知識」でより詳しく解説しています。


🔮 PREDICTION

今後の予想

ひとりの人間が2つの大企業のCEOを務めるという考え方は、終わりを告げつつあります(一時期流行しましたが)。2018年、『Barron’s』はこの現象について記事を掲載し、CEOが「二足のわらじ」を履く企業として、アマゾン、ルノー、テスラ、ツイッターを挙げました。いまも残っているのは、テスラだけです。

  • ジャック・ドーシーがツイッターを退社し、ブロック(Block)のCEOに専念
  • ジェフ・ベゾスは、アマゾンのCEOを退任
  • カルロス・ゴーンはルノー、日産、三菱自動車の経営から離れ、国際的な逃亡者に
  • イーロン・マスクは、テスラとスペースXの両方で依然としてCEOの座にあるが、賞賛すべき経営者のようには見えなくなっている

ONE ⚖️ THING

最後に…

いまや多くのCEOが自社をよりインクルーシブにすることを求められ、その進ちょくに応じて報酬を受け取ることも増えています。しかし、その任を負うのは、依然として圧倒的に白人男性です。2020年、スタンフォード大学の研究者は、「フォーチュン100」のCEOの人口統計を分析しました

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最高位職(トップ)へのアクセスが広がらない限り、真のインクルージョンは難しいでしょう


今日のニュースレターは、エグゼクティブエディターのHeather Landy、Walter Frick、アソシエイトエディターのJasmine Tengがお届けしました。日本版の翻訳は福津くるみ、編集は年吉聡太が担当しています。みなさま、よい週末をお過ごしください!  今年の金曜夜のニュースレター配信はこれが最後。2021年もありがとうございました。


💎 毎週金曜夜は、いま知っておくべきキーワードをはじめ、世界の「これから」を予測する「Forecast」ニュースレターをお届けしています。

📆 年末のニュースレター配信は12/28夜まで。12/29〜1/3は、朝・夜の配信をお休みさせていただく予定です。

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