Africa:AFCON初の女性主審の物語

The laws of the game.
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現在カメルーンで開催中のサッカーのアフリカ大陸選手権、アフリカネイションズカップ(AFCON)で、ルワンダのサリマ・ムカンサンガ(Salima Mukansanga)が65年の大会史上初の女性主審として歴史に名を刻みました。

ムカンサンガは2022年1月10日に実施されたグループステージのギニア対マラウィの試合で第4の審判員(選手交代の管理業務などで審判をサポートする役割)を担当。その後の1月18日に実施されたグループステージのジンバブエ対ギニアでは主審を務めました

ムカンサンガはこれまで東京オリンピックやFIFA女子ワールドカップ、アフリカ女子ネイションズカップ、CAF女子チャンピオンズリーグなどでも主審を務めています。

「名誉なことです。わたしにとっても、アフリカのほかの女性審判にとっても喜ばしいことです」と、ムカンサンガは1月21日、AFCONの主催者であるアフリカサッカー連盟(CAF)が開いた記者会見で語りました。「これは新たな道を切り開く機会であり、すべてのアフリカ人(女性)が同じステージに立てるということを示す機会でもあります」

A female referee uses her hands to separate two men from each other at the Africa Cup of Nations 2022
Salima Mukansanga reacts as players clash in the 2022 Afcon match between Zimbabwe and Guinea.
Image: Reuters/Mohamed Abd El Ghany

今回のアフリカで最も権威ある大会であるAFCONで彼女の活躍は、アフリカ大陸のみならず世界のサッカー界における女性審判の発展にとって画期的な出来事でした。というのも、サッカーの審判は歴史的に男性優位の職業だからです。選手から受ける性差別サッカー団体による女性審判員の採用不足観客による否定的なステレオタイプなど、サッカーやその他のスポーツにおける女性審判の障壁は多く、彼女たちは厳しい環境に直面しています。

「わたしたち(女性審判)は、誰かの親切のおかげでここにいるわけではありません。ここにいて然るべきだからいるのです」と、ムカンサンガは言います。「わたしたちはこれまで多くの努力を積み重ねてきました。多くの人が『女性は男性と同じペースでは走れない。スピードもあれもこれも足りていない』と言うからです」と、彼女は付け足しました。「確かに、わたしたちは男にはなれません。でも、同じレベルになれるよう最善を尽くすことはできます」

最近ではサッカー団体は以前よりもインクルーシブになり始めており、世界を見てもスポーツのトップレベルの試合で多くの女性が審判を務めるようになっています。2021年にはフランスのステファニー・フラッパートとウクライナのカテリーナ・モンズルが女性として初めてFIFAワールドカップ予選で主審を務めました。

また1995年以降のFIFA女子ワールドカップの試合ではFIFAが審判は女性のみと定めており、男性の試合とは対照的な対応が伺えます。

また女性審判の数も増えており、例えばイングランドのサッカーでは2016年から2020年にかけて76%増加しました。

CAFは今大会の開催にあたり、ムカンサンガのほかに3人の女性審判を起用しています。副審を務めたカメルーンのカリーヌ・アテムザボン(Carine Atemzabong)とモロッコのファーティハ・ジェルムーミ(Fatiha Jermoumi)、そしてビデオ・アシスタント・レフェリーを務めたてモロッコのブシュラ・カルボビ(Bouchra Karboubi )です。

「サリマ(・ムカンサンガ)がここに立つために並外れた努力を続けてきたことを誇りに思います。女性としてここに到達するには、大変な障害を乗り越えなければならなかったことをわたしたちは良く知っています。これは彼女の大きな功績です」と、CAFの審判部長であるエディ・マイエ(Eddy Maillet)はムカンサンガの功績について発表する中で述べました。「これはサリマだけでなく、サッカーに情熱をもち、将来は審判になりたいと考えているアフリカのすべての若い女性たちにとって重要な瞬間です」


STORIES THIS WEEK

今週アフリカで起きた事

  1. アフリカの投資家に求められるスピード感。スタートアップ投資の世界におけるY Combinatorの影響力は大きく、これまで多くの投資家は出資を決める前にまず同社の動向を探ってきました。しかし、Y Combinatorがスタートアップへの標準出資額を12万5,000ドル(約1,441万円)から50万ドル(約5,765万円)に増額し、スタートアップに対し早くから強い影響力をもとうとしたことで、アフリカの投資家たちはこれまでの態度を改め早く動き出す必要が出てきました
  2. ガーナカードと銀行取引の紐づけ不満が噴出。顔写真や指紋などの情報が記録されたガーナの身分証明書「ガーナカード」。不正行為を抑制するという目的のもと、7月1日からはこのカードが携帯電話のSIMカードの購入やモバイルマネーの利用、そしてあらゆる銀行での取引で必要になります。しかし、プライバシーに関する懸念や7月1日から運用開始という急なスケジュールがあいまって、多くのガーナ人がこの決定に疑問を抱いています。
  3. アカン語の名をもつ苦い植物。マラリアや発熱の治療にも使われる植物「クァシン」は、ビールやトニックウォーター、レモネードやリキュールといった飲料に苦みを加える材料としても人気です。飲料の苦み成分としてはかつてキニーネが使われていましたが、自然界で最も苦い物質を含み、キニーネの50~60倍もの苦みをもつクァシンがいまでは主流になっています。ウワグバレ・エドワード・エクプ(Uwagbale Edward-Ekpu)が、この植物の名前の由来とその歴史について解説しています
  4. 西アフリカのクーデターと国民の不満。マリやギニア、最近ではブルキナファソでは相次ぐクーデターにより、反乱を起こした兵士が選挙で選ばれた大統領を退陣に追い込んでいます。こうしたクーデターの原因は各国それぞれで違うものの、その裏には国民が統治に失敗している政府に抱いている不満があるといいます
  5. ケニアのスターが全豪オープンで歴史的快挙。2022年1月29日まで開催されていた全豪オープンのジュニア女子シングルスに、ケニア人選手が16年ぶり、史上2回目の出場を果たしました。現在17歳であるアンジェラ・オクトゥイ(Angella Okutoyi)はケニア人として初めてこの大会で試合に勝ち、3回戦まで勝ち残る快挙を遂げました
A tennis player in silhoutte serving the ball.
It is the first time in 16 years a Kenyan has played at the Australian Open Juniors.

CHINA-AFRICA IMPORTS AND EXPORTS

チャートでみる

中国の税関によるとアフリカの最大の貿易相手国は中国であり、2021年には両国間で2,540億ドル(約29兆3,099億円)相当の商品が取引されたといいます。しかし、中国の輸出はアフリカからの輸入を上回っています。2021年のアフリカから中国への輸出は1,060億ドル(約12兆2,288億円)相当で、中国からの輸入は1,480億ドル(約17兆742億円)相当でした。

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収益の不均衡を是正すべく、アフリカ諸国、なかでもルワンダやエチオピアは中国においてJD.comや「Tmall」(アリババ)を活用。ライブストリーミングやオンラインプラットフォームを活用した中国市場へのマーケティングを展開し始めています


DEALMAKER

今週のディールメーカー

  • アフリカに特化したベンチャーキャピタルであるTLcom Capitalが、2度目の資金調達を始めました。現在の調達額は7,000万ドル(約80億8,034万円)ですが、同社は最終的に1億5,000万ドル(約173億1,102万円)の調達を目標にするとしています。調達した資金はアフリカのスタートアップ20社への投資に使われるということです。TLcomはAndelaやTwiga Foods、Kobo360などへの投資してきたアフリカ大陸最大の投資会社のひとつです。今回の資金調達にはAfricaGrowやProparco、International Finance Corporation、CDC Groupなど家が参加しました。
  • チュニスとロンドンに拠点を置くスタートアップ企業InstaDeep1億ドル(約115億2,870万円)を調達しました。今回のラウンドはAlpha Intelligence CapitalとCDIBが主導し、BioNTechやGoogleなどが参加しています。開発者や機械学習エンジニアなど170名のスタッフからなる社内チームを擁するInstaDeepは、人工知能を活用したサービスを企業に提供しています。
  • タンザニアの国際送金会社であるNala1,000万ドル(約11億5,287万円)を調達しました。リードインベスターは過去にAndelaやSokowatchといった企業にも投資してきたAmploで、ほかにAccelやBessemer Partners、DFS Lab、そしてMonzoの共同創業者ジョナス・テンプルスタイン(Jonas Templestein)やRobinhoodの最高経営責任者(CEO)であるウラジミール・テネフ(Vladimir Tenev)といったエンジェル投資家が参加しています。Nalaはタンザニアのほか、ケニアやウガンダ、ルワンダ、ガーナ、南アフリカでサービスを展開しています。

OTHER THINGS WE LIKED

その他の気になること

  1. 故郷を離れてでも政権に立ち向かう。ウガンダの学者で詩人、人権活動家のステラ・ニャンジ(Stella Nyanzi)は、これまでヨウェリ・ムセベニ大統領を批判する内容の文書を理由に2度の投獄を経験しました。現在は家族とドイツに暮らす彼女に、『Guardian』のリジー・デイヴィス(Lizzy Davies)が刑務所での経験や抗議活動、なぜ母国を離れたのかを聞いています
  2. ブラックダイヤモンドはどこから来た? 老舗オークションハウスのサザビーズに2月3日、555.55カラットのブラックダイヤモンドが出品される予定です。これまでブラジルと中央アフリカ共和国でしか見つかっていないこのダイヤモンドは、宇宙からやってきたとも言われています。『Reuters』のロロ・ロス(Rollo Ross)がその起源の謎について詳述しています
  3. ファウンダーがファンダー(資金提供者)に。元『Quartz Africa』編集長のインカ・アデゴケ(Yinka Adegoke)が『Rest of World』のなかで、アフリカのスタートアップ・ハブの最新事情について書いています。アフリカでは企業の創業者や上級管理職が国内外にある新進気鋭のスタートアップに投資を始める傾向が高まっているといいます。
  4. ナイジェリアの石油依存度が低下。石油輸出国機構(OPEC)の加盟国であり、多くの油井を有するナイジェリア。しかし、『Stears Business』のカール・T・マッコーレー(Carl T. Macaulay)が書いているように、2000年以降のナイジェリアは石油依存型の経済という評判を徐々に脱しつつあります

🎵 今週の「Weekly Africa」は、ナイジェリアのFireboy DMLとイギリスのEd Sheeranによる「Peru」を聴きながらお届け。翻訳・川鍋明日香、編集・年吉聡太でお送りしました。


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