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Africa Rising
躍動するアフリカ
毎週水曜の夕方は、次なるイノベーションの舞台として世界が注目する「アフリカ」の今と、主要ニュースを伝えていきます。英語版(参考)はこちら。
アフリカには、iPhoneを超えるスマホがある。
インターナショナルデータコーポレーション(以下IDC)の市場データによると、アフリカ大陸における携帯電話のトップセラーメーカーは、依然として中国・深センに拠点を置く「Transsion(トランシオン:伝音)」だ。
Transsion
- 2006年設立
- 中国・深センを拠点
- 2017年、アフリカで世界最大の携帯電話メーカーに
- 「Tecno」「Itel」「Infinix」ブランドの携帯電話をアフリカ内で展開
Transsionは中国や他の場所ではあまり知られていないが、Apple、Samsung、Huaweiに次いで世界で4番目に大きい携帯電話メーカー。 中国企業にもかかわらず、中国でのスマホ販売はなく、徹底的にアフリカにローカライズしているのが特徴。エチオピアに製造拠点を持ち、競争力のある価格設定と、暗い肌に適応するカメラ、複数のSIMカードスロット、バッテリー寿命が長いなど、ローカライズされた機能がアフリカでの成功の秘訣となっている。
9月には中国の新興市場「科創板(スター・マーケット)」で上場し、時価総額は7,000億円に達した。
もはや飽和状態である中国国内での家電市場をよそ目に、サービスの行き届いていないアフリカ市場にマーケットを移しているTranssion。彼らの戦略は、中国のハードウェア製造とイノベーションの中心地である深センを拠点にする他の起業家たちを触発している。
Samsung could be coming back
Samsungを抜いた
Transsionが展開するブランドを合わせると、同社はフィーチャーフォンにおける第3四半期の全出荷量のうち、アフリカでのシェアは64%を占める。
スマートフォン市場でもシェア率36.2%で、2017年に当時売り上げ一位だった世界一のスマホメーカー「Samsung(サムスン)」を追い抜いて以降、首位を守っている。
Samsungはこれまで、フィーチャーフォンでその存在感を示していたが、消費者が中国製のスマートフォンにアップグレードし始めたことにより首位の座を奪われた。しかしSamsungも黙ってはおらず、アフリカ大陸における売り上げ金額では依然としてリード、つまり高価格帯の機種を販売している。それに加え、Transsion対策として低価格帯のスマートフォンの販売にも乗り出している。
Samsungは、第3四半期において、100ドル〜200ドルの価格帯の携帯電話で前年比61.4%の成長を見せている。この動きが、中国メーカーに対し、より低価格の機種の導入を急がせているとIDCは分析する。
しかし、Samsungが、アフリカのマーケットを最重要視しているTranssionを追い越すのは容易いことではない。
Transsionの携帯電話は、価格面だけでなく機能面においても10年の年月をかけてローカライズを進めてきた。先述のように、製造拠点であるエチオピアでは、複数のSIMカードスロットや現地の人々の肌のトーンに合わせたカメラテクノロジーを搭載した機種を開発している。
こういった携帯電話メーカーによる市場シェア確保に向けた動きは、より安価な機種の登場とスマートフォンの出荷量増加の後押しになるだろう。
Chinese movement (中国勢の圧勝)
IDCの予測では、携帯電話市場は2019年の終わりには数量にして2,182万台まで伸び、スマートフォンにおいては前年比3.2%の伸びが見込まれる。フィーチャーフォンについては前年比0.1%でほぼ横ばいの予測だ。
消費者動向を見てみても、低価格のスマートフォン(定義として200ドル以内の商品)はメーカーとしても旨味のあるゾーンであることが分かる。この価格帯のスマートフォンは、第3四半期においては全体の売り上げの90%を占めている。
現在首位であるTranssion以外にも、アフリカの携帯電話市場には中国資本のメーカーが4社が参入。
これらのメーカーを含めても、中国の企業がいかにアフリカのモバイル市場の大部分を占めているかということが分かる。
■アフリカにおける携帯電話のシェア比率
今後、スマートフォンの普及と共に、各メーカーの市場シェアの奪い合いが加熱することが予想される。その中で、Samsungがどのように巻き返しを図ってくるのか、注目したいところだ。
This week’s top stories
今週のアフリカニュース4選
- ナイジェリアでのビザが2020年には発行可能に。ナイジェリアのムハマドゥ・ブハリ大統領は、現在のビザに関する方針を大きく変更し、到着時にアフリカ国民全員に、ナイジェリアのビザの発行を開始すると発表した。ブハリは、エジプトで12月11日から12日までに開催されたサミット「Aswan Forum」に出席した際、同計画について述べた。
- Cardi Bがアフリカの孤児院を訪問。ニューヨーク出身のラッパーCardi Bが、ナイジェリア・ラゴスでライブを行った。初めてアフリカを訪れた彼女はその際、ラゴスにある孤児院に行き、日用品や服などを寄付。さらに、孤児院に務めるスタッフや子どもたちと写真を撮るなど、現地の人々と密なコミュニケーションを取った。
- ヴィクトリアの滝が干ばつの影響を受ける。地元ではモシ・オア・トゥニャ(「サンダース・スモーク」)として知られ、ジンバブエとザンビアの国境に位置するビクトリアの滝が、気候変動の影響による干ばつもあり、この時期の乾季には水位がほとんどなくなっている。この干ばつにより、地元の農家の生活はすでに苦しくなっており、観光産業もダメージを受けている。
- 新政党が誕生。今年のノーベル平和賞を受賞したアビー・アハメド首相は先日、エチオピアでの新しい政党の設立を発表した。繁栄党は、かつて与党だったエチオピア人民革命民主戦線を構成する4党のうち3党が合流して結成された。
【今週の特集】
今週のQuartz(英語版)の特集は「The business of water scarcity(水不足のビジネス)」です。世界中で、新鮮な水が足りなくなる事態が発生しています。企業たちが支配する水ビジネスと、資本主義の問題について、Quartzが論じます。Quartz Japanの購読者は、英語のオリジナル特集もお読みいただけます。
(翻訳・編集:福津くるみ、写真:Quartz, ロイター)