Millennials:デジタルを断舎離する「デジタル・ミニマリズム」

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MILLENNIALS NOW

ミレニアルズの今

Quartz読者のみなさん、こんにちは。今日の「Millennials Now」では、私たちの生活と切っても切れない「デジタル」とどのように付き合っていくかについてお伝えします。

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情報が溢れている現代、所有物をもたないことや華美な服装をしないなど、さまざまな場所で「ミニマリズム」という言葉がよく使われるようになりました。

ミニマリズムとは、「完成度を追求するために、装飾的趣向を凝らすのではなく、むしろそれらを必要最小限まで省略する表現スタイル」で、ジェネレーションZ世代やミレニアル世代の考え方の主流である物をもたない」ということに繋がります。また、ものを持つ代わりに経験にお金を投資するというのも彼らの新しい価値観。経験によって得られる人との繋がりや、有効に時間を使うことを大切にしています。

このような情報が溢れている時代だからこそ、自分自身に必要なものを上手に選んでいくというスキルも非常に大切になってきています。

スマートフォンが登場し、私たちはデジタルとの付き合いは難しくなってきました。「スマホ依存」に関しては、集中ダイエットのデジタル版「デジタル・デトックス」というワードがよく知られていますが、デトックスではスマホ依存から脱出することが難しいです。というのも、ダイエットと一緒で、ある一定の期間だけは離れることができますが、結果、通常の生活に戻ったときにはまた元通り。だからこそ、「デジタル・ミニマリズム」であることが大事なのです。

Internet users in US

アメリカのインターネット人口

■インターネットの使用人数

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リサーチ会社Statistaによると、アメリカでは、2019年、3億1,200万人近くのインターネットユーザーがウェブにアクセスしています。これは、2017年の2億8,700万人から増加した数字に。全体として、アメリカの成人の90%は、2010年の76%から割合が上がり、インターネットを使用すると報告されました。オンラインの使用率はすべての年齢層で高く、特に18〜29歳は100%、30〜49歳までは97%と、ほぼ全員が使用していると言えます。

■年齢別のインターネット使用割合

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また、2019年の第1四半期の時点で、北米のインターネットユーザーは、モバイル以外のインターネットを毎日2時間33分しか使用していないのに比べ、モバイル経由でのインターネット使用時間は、平均3時間57分。アメリカの携帯電話からのインターネットユーザー数は、2018年の2億6,200万人から2023年には2億8,700万人を超えると見込まれています。

また、モバイルブロードバンドの登録者数も増えていて、最新の調査によると、年間100人の住民あたり132.9件の登録がありました。

アメリカ全体で人気のモバイルアプリは、「いいね!」を生んだFacebook。そして、次にInstagramと続きます。Facebookは依然としてアメリカでトップを誇るソーシャルネットワークであり、2019年9月時点、1億697万人のモバイルユーザーがFacebookアプリにアクセスしています。

■アプリの使用ランキング

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2位のInstagramは若者に支持を受け、18〜29歳の使用率は67%、そして30〜49歳までは47%という結果になっています。

■Instagramの年齢別の利用者割合

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No-Mobile-Phobia=Nomophobia

広がる「ノモフォビア」

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このように、ソーシャルメディアは急速に広まり、新しい人脈関係作りや仕事を生み出す場所、そしてお互いを「友達や知り合い」として認識し、彼らのプライベートをも追う場所になっています。

スマホ依存」で、携帯電話が手元にないと不安に駆られる「ノモフォビア(Nomophobia)」という言葉が生まれ、Cambridge Dictionaryが発表する「The People’s Word of 2018」にも選出。現代を象徴する症状としても認識され始めました。

しかし、デジタルネイティブであるジェネレーションZ世代やミレニアル世代はそういった「スマホ依存」から離れることを切望しています。一方、FOMO(携帯電話が行方不明になる恐怖)とNomophobia、またはスマートフォンから少しでも離れることを恐れているため、依存からの脱却はほとんど不可能です。

イギリスのグリニッジ大学の新しい研究によると、デジタルネイティブ(21〜35歳)は常にスマホのスイッチを入れるのにうんざりしていますが、「デジタル・デトックス」や「テクノロジーからの脱却」は困難だとしています。グリニッジ大学ビジネススクールのWenjie Cai博士は、「ミレニアル世代はますますデジタルから離れることを望み、デジタル・デトックスを持続的に行うことが、彼ら自身の幸福を達成する方法と見なしています」と話しています。

Digital Minimalism

「デジタル・ミニマリズム」のススメ

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Image: Reuters/Mike Segar

こういった現代の流れから、精神的に健康的な状態でいようと、ジョージタウン大学のコンピューターサイエンスの准教授であるカル・ニューポート(Cal Newport)は2019年2月に著書『Digital Minimalism: Choosing a Focused Life in a Noisy World(原題)』を発表しました。

Newportといえば、「自らが本当にやりたい意味あることに集中できる環境を作り、それに没頭すること」をテーマに書いた2016年発売の『Deep Work: Rules for Focused Success in a Distracted World』で知っている方もいるでしょう。

冒頭で触れたように、「デジタル・デトックス」と「デジタル・ミニマリズム」は違います。

  • デジタル・デトックス
    PCやスマホなどデジタル機器からある一定の期間、距離を置くことでストレスを軽減する。
  • デジタル・ミニマリズム
    ・デジタルの「断捨離」で、自分に必要なものだけを選んでミニマルに付き合うことで、精神的に健康な状態を保つ。

デジタル・デトックスは一時的なものなので、それよりもうまくバランスを取ってデジタルと付き合うデジタル・ミニマリズムの方が長期的に見て効果があると言えそうです。

スマホが欠かせずデジタルから離れることができない、そんなジェネレーションZ世代やミレニアル世代も含め、私たちには今、デジタルの「断捨離」がマストなのかもしれません。

Newportは著書において、このように話しています。

デジタル・ミニマリズムの三原則

  1. 散らかることはコストがかかる(Cluttering is expensive)
    多くのデバイスやアプリ、サービスのがあればあるほど、デメリットを生むことを知っている。
  2. 優先順位の必要性(Prioritization is important)
    特定のテクノロジーが自分の大事な目標を後押しするか否か、テクノロジーをどのように利用するかを慎重に判断する。
  3. 自覚して行うことで満足感を得られる(Intentionality is satisfying)
    新しいテクノロジーとの関わり方に自覚的であろうとする基本的な心構えから大きな喜びを得る。

この三原則を理解し、デジタル・ミニマリストになるべく、自分自身で「減法アプローチ」と「加法アプローチ」を見つけていくのです。

「減法アプローチ」とは、自身にとってそのツールやサービスが「ときめくもの」か否かで判断。一方の「加法アプローチ」は、自分がより良い生活を送るためにはなにが必要かを見つけ、その生活の中で最も重要な役割を果たすツールを取り入れていくことと、同書でNewportは述べています。

Picking up

選別する力

人間の関係性をよりよく構築するであろうと思われるソーシャルメディアも、以前から「孤独を生み出すもの」として扱われてきています。

自分に必要なアプリやサービスはなにか? ニュースで読むべきものはどれか? ソーシャルメディアで繋がることが本当に自分にとってプラスのことをもたらしているのか、自分の心を動かすものはなにか? それらを再度自答し、自己管理していくことでより効率的なデジタルライフを送ることができるでしょう。

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なかなかスマホを手放せず奮起できない……。そんな人には、気が散る誘惑的なコンテンツを強制してブロックしてくれる「Flipd」や「Freedom」、「Moment」といった注目アプリがあるので、こういったものを使うと、いかに自分がスマホに時間を裂いていて、無駄に過ごしているかが分かるでしょう。

このようなアプリも併用しながら、「デジタル・ミニマリスト」になってみてはいかがでしょうか?

This week’s top stories

今週の注目ニュース5選

  1. Cannが好調&資金調達。2019年5月の発売以来、カンナビス入りの飲料を展開する「Cann」は、アルコールを含まないTHCとCBD入りのドリンクを15万缶販売し、現在の業界トレンドを覆すほどの成功の兆しを見せています。さらに、同社はVCの「Imaginary」より500万ドル(5億5千万円)の資金調達も受けました。
  2. Netflixの新会員が世界で880万人増加。Netflixの2019年の有料会員数は880万人増(前年比20%増)で、全世界でのユーザーが1億6,700万人を超えました。また、 第4四半期の売上高は55億ドルを突破し、前年同期比で31%増加しています。しかし、アメリカ国内では「Disney+」といったサービスがスタートしたこともあり、大幅な増加はありませんでした。
  3. H&Mがインド人デザイナーとコラボ。これまでにも故Karl Lagerfeldをはじめとする著名デザイナーとコラボレーションを続けてきたスウェーデン発のH&M。今回、インドのブランド「Sabyasachi」が新しいコラボ相手として発表されました。同ブランドはボリウッドスターやインドの富裕層にも支持されています。
  4. ミレニアル世代は食品購入もオンラインで済ませる。Acostaのレポートによると、ほとんどの消費者は食料品のピックアップサービスを頻繁に利用しませんが、ミレニアル世代の50%は少なくとも週に1回、同サービスを使用しています。また、ミレニアル世代は食料品予算の中で最も高い割合(40%)をオンラインで利用し、次にZ世代(37%)とX世代(32%)が続きます。
  5. インスタグラムフレンドリーな歯科医院? 歯科医院のあり方が変わってきているニューヨークで、「インスタ映え」したり、豪華な装備が備わった場所が増えています。「Tend」という2019年にオープンした歯科医院では、まるでホテルのような内観とアメニティグッズ、Netflix専用のスクリーンまであります。

【今週の特集】

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今週のQuartz(英語版)の特集は「Gaming’s next level(次のレベルにいくゲーム産業)」です。今や、世界の人口の3分の1が手にするゲーム、もはや業界の枠を超え、娯楽から行政、ヘルスケアに影響を与える最先端を、Quartzがレポートしていきます。

(写真:ロイター、Statista、Flipd)

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