Africa Rising
躍動するアフリカ
Quartz読者の皆さん、こんにちは。毎週水曜の夕方は、次なるイノベーションの舞台として世界が注目する「アフリカ」の今と、今週の注目すべき4本のニュースをお届けしています。 英語版(参考)はこちら。
今年の2月末に公開されたNetflixオリジナルシリーズ「Queen Sono」(クイーン・ソノ)は、南アフリカの脚本家/演出家Kagiso Ledigaのもと、アフリカ人のキャストとクルーが結集したNetflix初の本格的なアフリカ作品です。
物語の主人公は、有名な反アパルトヘイト運動家である母親の暗殺の真相を追う女スパイ、ガールズ・ソノ。ソノ役を務めた女優Pearl Thusiのツイートによると、公開から数週間でアフリカおよびカリブ海諸国の数カ国で視聴1位を獲得し、初週の時点では米国でも7位にランクインしました。
Netflixは例によって視聴率の詳細を明らかにしていませんが、この成功には、アフリカのエンタテインメント産業で起きつつある変革を物語る兆しがいくつも見つかります。
Business sense
ネトフリの戦略
「これはアフリカ人がアフリカの物語を語り、その物語をどのように伝えるかを決める力を手にしたということです」(「Queen Sono」主演女優・Pearl Thusi)
この全6話シリーズが制作された背景には、いくつかの戦略があります。まず、アフリカ大陸の視聴者を開拓すること。国際的な視聴者を惹きつけること。そして欧米はじめ世界各国のマーケットで影響力を増しているAfirican Diaspora(アフリカ人のディアスポラ)である視聴者とつながること。
Netflix がアフリカへの進出を模索するなかで「Queen Sono」が見せた成功は、アフリカ大陸を舞台にアフリカ人を監督・主演に迎えたストーリーに対してグローバルなニーズが高まっていることを強く示しています。
Netflixによるオリジナル作品に対する150億ドルの投資は、才能はあれど資金を調達できずにいたアフリカの映画産業に大きな影響を与えることになるでしょう。
「Queen Sono」の撮影は、ヨハネスブルグだけでなくナイロビ(ケニア)やラゴス(ナイジェリア)、ザンジバル(タンザニア)でも行われました。総制作費は、アフリカ大陸にある映画制作会社の総予算を超えています。
加えて、Netflixのアフリカ拡大戦略には、明確なビジネス上の意思が見えてきます。
コンサルティング会社Digital TV Researchによると、サハラ以南のアフリカでは、ストリーミングプラットフォームからの収益が2024年までに10億ドルを超えると予想されています(2018年の収益はわずか2億2,300万ドル)。
Netflixは、ラゴスやナイロビ、カンパラ(ウガンダ)などをハブにして大陸全体で成功を収めているプロデューサーたちに注目していました。同社は、アジアや南米での先行事例をもとに、伝統的なハリウッド作品にない多様性を獲得し、アフリカ都市部をハブとして活用することが大陸全体でのファン獲得につながると確信しているのです。
直近数カ月にも、Netflixはラゴスでノリウッド(ナイジェリアの映画産業)のプロデューサーと交渉し、2020年後半に向けた契約に取り組んできました。「彼らはナイジェリアのタレントと大きな契約を結び、ナイジェリアで魅力的なことをたくさんやろうとしています」(ナイジェリアのベテラン映画監督のKunle Afolayan)
Netflix Africa expansion
アフリカと世界
「自分たちが本来もっていた力と再びつながるためには、自分たちの歴史とつながり、本当の自分を知る必要があります」(Pearl Thusi)
Netflixのアフリカ大陸進出を後押ししている要因は、“アフリカ大陸の外”にあるのかもしれません。
Netflixの幹部はノリウッド映画がナイジェリア以外の多くの国でも視聴されていることに時に驚いていたと、前出の映画監督Afolayanは言います。
実際のところ、多くのアフリカ人ディアスポラに加え、海外で生まれたアフリカ人の第2世代が増加しており、YouTubeやSpotify、NetflixなどのプラットフォームにおいてアフロビートやGqom(アフロハウスの一種)、ノリウッド映画をはじめとするアフリカ・エンタテインメントが国際的に台頭するのを後押ししてきました。
アフリカでNetflixオリジナルコンテンツがつくられることになると、この分野のプレイヤーはアフリカ大陸で活動を続けていけるようになります。そして彼らがグローバル/ローカル双方での成功を収めることで、地元の映画産業を強化することにもなるのです。
この地域での拡大目標を達成するために、Netflixは最近、アフリカオリジナル作品の責任者としてDorothy Ghettuba(ケニアの映像メディア創設者)を採用。2020年後半にはアフリカシリーズの第2弾「Blood & Water」をスタートさせる予定です。南アフリカ・ケープタウンに拠点を置く制作会社Gambit Filmsが制作する同番組では、南アフリカの監督・脚本家Nosipha Dumisaが現地の映像制作ユニットを率いています。
また、ナイジェリア発のアフリカオリジナル脚本シリーズの制作のため、ナイジェリアのクリエイティブコミュニティへの投資を増やすことも発表しています。「Akin Omotoso Project」と題されたこのプロジェクトは、ナイジェリア人監督で脚本家、俳優であるAkinが、Daniel OriahiとCJ Obasiと一緒に監督した6回連続シリーズで、現代のラゴスを舞台にしたSFドラマシリーズとなる予定です。
アフリカの他の国への投資も続けており、ノリウッドの人気タイトルを配信するためのパートナーシップ契約を締結しました。「スター・ウォーズ」シリーズに出演したジョン・ボイエガは自身の制作会社を通じてNetflixと提携し、西アフリカと東アフリカに焦点を当てた非英語映画のプロデュースに関わっています。
African Women Are Still Here
誰をレペゼンするか
「Queen Sono」の主人公が女性であることについて、Pearl Thusiは「社会的・経済的に食物連鎖の底辺に追いやられているなか、アフリカの女性は身じろぎせずに偉大な所業を達成しています」とも語っています。
「Queen Sono」のエピソードの一部では初めて監督も務めたThusiは、こうも付け加えています。
「自分たちが本来もっていた力と再びつながるためには、自分たちの歴史とつながり、本当の自分を知る必要があります。これはストーリーテリングの与えてくれる力なのです」
This week’s top stories
今週の注目ニュース4選
- スタートアップが多様なコロナ対策。テックスタートアップ起業が盛んなナイジェリアでは、ホテル予約プラットフォームによる隔離センターの設置や病院トラッキングマップ制作など、さまざまな社会貢献が実施されています。
- ガーナの都市封鎖は総人口の4分の1に影響。現地時間30日に、首都アクラと第2の都市クマシにおいてロックダウンがスタート。2つの都市の人口は合計700万に及びます。
- エチオピアでは総選挙が延期。COVID-19の影響を受け、8月末に予定されていた総選挙が延期されることが発表されました。1日15時現在の同国の新型コロナウイルス感染者数は、26人です。
- 南アフリカでは海底ケーブルが断線。南アフリカと国際ネットワークを結ぶ海底ケーブルのうち2本がトラブルに見舞われ、南ア全土にわたってデータ速度が低下しています。修理は4日以降になるとの見通しです。
(翻訳・編集:年吉聡太)
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