Africa:アフリカと中国の蜜月、11の断章

Wednesday: Africa Rising

躍動するアフリカ

中国とアフリカの関係が深く、広く拡大しているのはよく知られているところです。ビジネス、経済、技術、文化への影響など、両地域の共生関係を探ります。英文記事はこちら(参考)。

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Image: DESIGN: QUARTZ/BÁRBARA ABBÊS. PHOTO: UNSPLASH/ EVA BLUE AND MACAU PHOTO AGENCY

中国にとってのアフリカは「世界のリーダーシップの座を米国から奪うという野心をサポートしてくれる便利な同盟相手」であり、アフリカにとっての中国は「植民地主義と一線を画した経済発展を助けてくれる出資元」でした。

中国とアフリカ諸国との関係性を語るとき、「債務の罠」は最も重要な側面のひとつだといえます。たとえばアフリカ南部におけるインフラプロジェクトのうち、実に3分の1が、中国の資金で賄われています。

しかし、債務は両者の関係性を示す一部にしか過ぎません。人の流れ、文化の交流は劇的に増加し、テクノロジーにおける交流もいっそう深まっています。

そして、COVID-19。Alibaba創業者のジャック・マーは、アフリカ諸国に医療品を寄付し、中国のソフトパワー戦略をさらに強化することになりました。

しかし、中国に住むアフリカ人に対する人種差別が、あらたな火種ともなっています。また、新型コロナウイルスがグローバル経済に与えた影響はアフリカ諸国を圧迫しており、多額の負債にあえぐ国にとって大きな問題となりつつあります。

① Chinese soft power

ソフトパワー

アフリカでもヒットした映画『Wolf Warrior 2(狼の戦士2)』は、数ある中国映画の中で最も人気のある作品のひとつです。その筋書きは──中国の兵士がアフリカを救出するというものでした。

天然資源が豊富なアフリカで経済がさらに発展すれば、その市場は中国の対外貿易において非常に大きな存在になりえます。そして、そのために中国がとった戦略は「ソフトパワー」という言葉に集約されます。ソフトパワー、つまり軍備や制裁なしに欲しいものを手に入れる力です。

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Image: Wolf Warrior 2

② Africa’s role in the BRI

一帯一路

1980年代、中国が急速な経済成長を遂げるなかで、政府は企業に対し、海外に資源や投資の機会を求めるように促しました。アフリカが選ばれたのは、その参入障壁の低さと天然資源の豊富さゆえだったといえます。

同時に、アフリカ各国の指導者たちは、中国にインフラプロジェクトの資金を求めました。

2013年、中国はアフリカ、ヨーロッパ、アジアを結び、貿易と接続性を高めるための大陸横断的な開発プロジェクト「一帯一路(Belt and Road Initiative:BRI)」を発表しました。その結果、中国はアフリカ54カ国のうち、少なくとも40カ国とプロジェクトを締結。2018年、Deloitteは中国をアフリカにおける「インフラプロジェクトの『単一国として最も目に見える資金提供者であり建設者』」として挙げています。

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③ Where are projects going?

地域でみると

2019年、アフリカに対する中国のインフラ投資額は950億ドル(約10兆507億円)に上ります。そのうち50%以上が、港湾、海運、物流プロジェクトに充てられています。重要な地域として目されているのは南部アフリカおよび東部で、全プロジェクトの半分近くを占めています。

注目すべきはジブチ共和国で、その戦略的立地を活かし、アフリカ最大の自由貿易地帯の建設支援をめざして中国を誘致しています。

一方、中国側はこの小国に初となる海外軍事基地を設立。軍事的野心に対する西側の懸念を引き寄せています。

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④ Debt, debt, and more debt

とにかく、債務

アフリカ全体が抱える債務のうち20%は、中国に対するものです。2000年から2018年までの19年間で、中国はアフリカ49カ国に対して1,520億ドル以上の融資を行っています。下地図は、各国のGDPのうち中国に対する債務割合を図示したものです。

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その多くが政府間の取引ではないため、中国に対する債務をめぐる議論には、伝統的な二国間融資に加え、民間債権者による融資の問題も含まれます。契約条件が複雑化することに対する懸念も高まっています。

⑤ Migration patterns

増え続ける移住

中国〜アフリカ間の貿易が盛んになれば、両地域間での人々の移動も増加します。

アフリカにおける中国人のビザ要件は緩和されており、契約労働者や外交官、起業家、多国籍企業の経営者、観光客から非公式な貿易業者に至るまで、アフリカに住む中国人は推定100万人〜200万人に上るといわれています。一方、中国在住のアフリカ人は、製造業のハブである広州に集中しています。彼らは安価な製品を購入し、アフリカに転売して利益を得ています。

教育も推進力となっており、現在、中国で学んでいる英語圏アフリカ人の数は、米国と英国の人口の合計よりも多いほどです。

⑥ Cultural engagement

文化的つながり

前述したソフトパワー戦略の一環として、孔子学院の存在が挙げられます。孔子学院は、政府出資で中国語や中国文化の教育をおこなう教育機関で、ゲーテ研究所(ドイツ)やアンスティチュ・フランセ(フランス)などの欧米の文化機関をモデルにしています。

もっとも、孔子学院においては教師、資金ともに中国から直接提供されており、資金不足に陥りがちなキャンパスに資金を提供して新しい施設を建設しています。一方、欧米においては、孔子学院はスパイ機関であると指摘する声も上がっています。

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⑦ Seeking success in China

成功は中国にあり

アフリカにおける中国の存在感と、世界における中国の台頭。それらを背景に、ますます多くのアフリカ人が中国語を学ぶようになっています。北京語習得は成功への早道である、と考えられているほどです。

英語話者のアフリカ人が高等教育を受けようとするとき、留学先として選ばれるのはまず中国です。

2018年には3万5,000の奨学金がアフリカの学生に授与されていますが、これは欧米諸国のどの国よりも多いものでした。そして、学生がその資格を得るためには、中級レベルの北京語習得が必要です。

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⑧ Boom in travel to Africa

アフリカ旅行ブーム

アフリカ各国は、世界屈指の消費者である中国人旅行者を引きつけようと、ビザ要件を緩和しています。ForwardKeysのレポートによると、この規制緩和以降、チュニジアとモロッコを訪れた中国人は、それぞれ前年比で240%、378%増加したとされています。

世界的な旅行プラットフォーム「Travelzoo」が2018年に行った調査によると、「より冒険的な」休暇を求める中国人観光客にとって、アフリカは日本とオーストラリアを抜いてもっとも訪れたい旅行先であるといいます。

⑨ tech and entrepreneurship

スタートアップシーン

中国のモバイル企業であるHuaweiとTranssionは、アフリカでの存在感を高めています。とくに後者は2018年にはアフリカにおけるトップスマートフォンブランドになりました。

さらに中国のVCがこの市場に続々と参画しており、2019年、中国のVCは4つのスタートアップに2億4,000万ドル(約254億円)というかつてない規模の投資をしています(Palm Payに4,000万ドル、OPayに1億2,000万ドル、Lori Systemsに2,000万ドル、Gonaへの投資額は非公表)。海外からの直接投資は、2010〜2014年の間で25%増加しています。

マッキンゼーのレポートによると、アフリカで事業を展開する中国の民間企業は1万社と推定されています。

⑩ China’s coronavirus diplomacy

中国のコロナ外交

新型コロナウイルスが大流行するなか、中国はこれを自らの力を誇示する機会として巧みに利用してきたという側面が指摘されています。なかでも耳目を集めたのは、Alibabaのジャック・マーが100万個以上の検査キットと600万個以上のマスクをアフリカに寄付したことでしょう。

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Image: REUTERS/TIKSA NEGERI

中国とアフリカの深い関係性にもかかわらず、中国の援助に対する姿勢は国によってバラバラです。ナイジェリアの医師会が中国の医療チームを招聘した政府の決定に抗議した一方で、アルジェリアでは快く歓迎されたのがその一例です。

⑪ After coronavirus

パンデミックの先

コロナウイルスの影響でアフリカ経済が低迷するなか、アフリカ債務問題に対する中国の態度は、「二国間協議で対応する」という常套句に終始しています。

「中国がこれらの融資にどのように対処するか。われわれは注視し続ける必要がある」と、中国とアフリカの関係を専門とするシンクタンクのYunnan Chenは説明しています。


headlines from Quartz Africa

今週のヘッドライン

  1. ネット格差を埋めるには。アフリカでも有数のテック大国のナイジェリアでは、インターネットアクセスについての格差が長年取り沙汰されてきました。計画では、全国の主要な高速道路に沿ってケーブルインフラを敷設することで2025年までに人口の90%をカバー、都市部では最低25Mbps(農村部では10Mbps)のダウンロード速度を目標としています。しかし、同国が連邦制であるために、道路使用料については国と各州の思惑が錯綜。その理想が現実のものになるには、まだ時間がかかりそうです。──September 8
  2. 石炭採掘が象を殺している。ジンバブエでは、その発電量の大半を石炭エネルギーに依存しています。ワンゲ国立公園において許可されていた中国企業の石炭資源探査に対しては、「生態系の保護に反している」との糾弾の声が上がっていました。それを受けて8日、ジンバブエ政府は許可を撤回。国立公園での採鉱をすべて禁止しています。──September 4
  3. ナイジェリアのスタートアップを救え。COVID-19によって、アフリカのスタートアップへの投資額は2020年末までに40%も減少する可能性が指摘されています。苦境にあえぐスタートアップに手を差し伸べたのは、米NYを拠点とするインパクト投資家Acumenとラゴスを拠点とする投資会社LoftyIncが共同でスタートさせた救済プログラム。最大2万ドルの緊急助成金を支給するとしています。──September 3

(翻訳・編集:年吉聡太)


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