Borders:アフリカに、ついにベゾス参戦

Borders:アフリカに、ついにベゾス参戦

Deep Dive: Crossing the borders

グローバル経済の地政学

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毎週水曜日の「Deep Dive」では、新興市場を中心に、世界の経済を動かすさまざまな力学を明らかにしていきます。グローバルリーダーがこぞって参入したアフリカのテックシーンに、ようやくジェフ・ベゾスも動きました。彼がアフリカにみる可能性とは。

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Image: REUTERS/CLODAGH KILCOYNE

この5年間、マーク・ザッカーバーグ(Facebook)やジャック・ドーシー(Twitter)、スンダー・ピチャイ(Google)、ジャック・マー(アリババ)が歴訪し、注目を集めてきたアフリカのテック・エコシステム。

そして今、その有望性に心惹かれるテックリーダーの人名リストに、アマゾンCEOで「世界で最も裕福な男」であるジェフ・ベゾスが加わることになりました。

越境型ピアツーピアの決済サービスを提供するチッパー・キャッシュ(Chipper Cash)が、ジェフ・ベゾスが個人で設立した投資会社ベゾス・エクスペディションズ(Bezos Expeditions)の参加したシリーズBラウンドで3,000万ドル(約31.3億円)を調達しました。UberやTwitter、AirBnBなどのグローバル・テックブランドも支援してきた同ファンドにとって、アフリカのスタートアップへの投資は実は初めてのケースです。

the first investment in an African startup

はじめてのアフリカ

チッパー・キャッシュは、2018年、ウガンダ人のハム・セルンジョギ(Ham Serunjogi)とガーナ人のマイジッド・ムジャレド(Maijid Moujaled)によって設立されました。以来、同社はアフリカ7カ国(ガーナ、ウガンダ、ナイジェリア、タンザニア、ルワンダ、南アフリカ、ケニア)で決済サービスを展開し、19年6月には月々の決済処理額が1億ドルに達しています。チッパー・キャッシュは直近の資金調達として、半年前にシリーズAラウンドで1,380万ドルを調達していました。

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すでに300万人のユーザーと1日平均8万件の取引を達成しているチッパー・キャッシュが目指すのは、より多くの国へのサービス拡大と商品ラインナップの拡充です。

CEOのセルンジョギによると、同社はまず手始めに、暗号通貨の売買や米国株投資の展開をスタートするといいます。暗号通貨の取引は、規制が整っていないにもかかわらず、大陸全体で活況を呈しています。金融危機や通貨危機が頻繁に発生するアフリカでは、ビットコインのようなデジタル通貨はその回避策として重宝されているのです。また、米国株への投資をすすめる背景としては、今アフリカの若者たちの間で、長期的な投資見通しのもと、ドル建て資産への投資機会を求める傾向が高まっていることが挙げられます。

driving global interest

コロナからの超回復

アフリカのテックスタートアップに投資する著名人としては、元アメリカ副大統領のアル・ゴアや、テニスプレイヤーのセレーナ・ウィリアムズが名を連ねています。他にもマーク・ザッカーバーグは、チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブ(Chan Zuckerberg Initiative)を通じて、アフリカのソフトウェアエンジニアと世界中のクライアントをつなぐ開発者アウトソーシング企業Andelaに投資しています。

今回のベゾスの投資は、彼が直近で行った投資に比べれば微々たるものです。今月、ベゾスは100億ドル(約1兆830億円)の「Bezos Earth Fund」で気候変動関連の支援することを発表。一夜にして世界を代表する「気候変動の高額寄付者」のひとりとなりました。ただし、この投資がベゾスにとって、ただの「急成長しているアフリカのテックシーンへの第一歩」以上のものとして、さらに踏み込んだ投資へと続く可能性も否定できません。

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たとえ小規模であっても、この投資が、アフリカに対する世界からの関心をさらに高めるのは間違いありません。

パンデミック初期の影響は大いに懸念されていましたが、2020年のアフリカのテックスタートアップは数百万ドル規模のイグジットを相次いで記録し、その確かな回復力を見せています。先月には、ナイジェリアの決済スタートアップPaystackが、2億ドルの評価額で米決済大手のストライプ(Stripe)に買収されています。


This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

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  1. 英中貿易はCOVID-19でも上昇傾向。英国民統計局が12日に発表した2020年7~9月期の実質GDP(国内総生産)速報値は、前期比15.5%増でした。が、2度目となるロックダウン延長と2020年末に迫った移行期間の終了に直面し、事態の悪化を危惧するエコノミストの声も上がっています。一方、同貿易データによると、英国第3位の輸出相手国である中国が英国にとって重要な市場であり続けていることがわかります。自動車や食品をはじめとする対中輸出額は、5月に記録した9億2,000万ポンド(約1,280億円)という底値から順調に回復しているようです。
  2. 米中はレアアースで競争。ハイテクデバイスの製造に欠かせないレアアース。かつてその世界最大の産出地のひとつであった米国カリフォルニア州マウンテンパスの鉱山は、中国の低価格に圧迫されたこともあり、2002年に閉鎖を余儀なくされました。そして今、同鉱山を買収したMPマテリアルズ(MP Materials)が、NY証券取引所への上場を控えています。USAレアアース(USA Rare Earth)のアドバイザーは、「米国政府が(中国との)生産能力の格差を埋めるためには、サプライチェーンを対象とした戦略的な投資が必要だ」と述べています
  3. 報道されない誘拐事件。イスラム教テロリスト集団「ボコ・ハラム(Boko Haram)」との内線状態が続いているナイジェリアでは、過去10年以上にわたり約3万人の命が奪われ、230万人が避難生活を余儀なくされています。今月、ナイジェリア北部一帯をカバーするBBCのハウサ語放送が、ナイジェリア北西部の高速道路上で警察官12人が誘拐されたという事件を報じましたが、これは現地で「bandits」(盗賊)と呼ばれているグループによるもの。こうした事件は国際的なテロリスト集団のそれとは違い、世界的なメディアの注目を集めることはほんとんどありません
  4. 医者はどこだ。イタリアを襲うCOVID-19の第2波による被害は、第1波のそれよりも深刻です。毎日35,000人以上の新たな症例が発生しており、医療インフラが十分でない南部地域を含む全国で感染が拡大しています。パンデミック以前から医療従事者不足に直面していたイタリアでは、状況はさらに深刻に。国や地方自治体、各病院は緊急募集を開始したが、そもそも有資格者が不足しているため、未経験の新卒者や退職した医療従事者を採用して人員を補充しています。

(翻訳・編集:年吉聡太)


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申込み締切は本日11/25(水)!】世界各地で活躍する日本人VCが現地の声で伝える、月イチのウェビナーシリーズ「Next Startup Guide」が始まります。世界を目指すビジネスパーソンはもちろん、ここ日本では何を生み出せるかを考えるための「次世代のスタートアップ地図」を描く時間を、ぜひ共有しましょう。第1回は11月26日開催。世界最大の民主主義国インドにフォーカスします。

  • 日程:11月26日(木)11:00〜12:00(60分)
  • 登壇者:河村悠生さん(Head of Global IP Expansion〈執行役員〉, Akatsuki)、久保田雅也さん、Quartz Japan編集部員(モデレーター)
  • 参加費:無料(Quartz Japan会員限定)
  • 参加方法こちらのフォームよりお申込みください

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