Deep Dive: New Consumer Society
あたらしい消費社会
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Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週木曜夕方の「Deep Dive」のテーマは、「あたらしい消費のかたち」。 パンデミックの影響で拡大した、ファッション業界における勝者と敗者の「格差」。ステイホームで確固たる地位を築いたオンライン小売による買収劇が始まりました。英語版はこちら(参考)。
2021年1月25日、英国のオンラインファッション小売のブーフー(boohoo)は、2019年4月に経営破綻し管財人の管理下に置かれていた英国の老舗百貨店デベナムズ(Debenhams)を5,500万ポンド(約80億円)の現金取引で買収することを発表しました。
ブーフーはデベナムズのブランドと、関連する知的財産を取得し、デベナムズはブーフーがウェブサイトをリニューアルするまでの期間、ウェブサイトの運営を継続するとされています。なお、今回の買収には、恒久的に閉鎖が予定されているデベナムズの英国内の実店舗(124店舗)は含まれておらず、雇用の維持も行わないといいます。
これだけではありません。同じ英国のオンラインファッション小売のエイソス(ASOS)は2月1日、フィリップ・グリーン(Philip Green)のアルカディア・グループ(Arcadia Group)傘下である「トップショップ(Topshop)」「トップマン(Topman)」「ミス・セルフリッジ(Miss Selfridge)」「HIIT」のブランドと関連する知的資産を2億6,500万ポンド(約386億円)で買収すると発表(在庫品の買い取りに対する6,500万ポンドを加え、合計は3億3,000万ポンド)。同グループは2020年11月、パンデミックの影響で経営を継続するのが厳しい状況になり、破産申請をしていました。
エイソスもブーフーと同様で、実店舗は買収に含まれません。『The Guardian』によると、デザイン、バイイング、小売店との提携をサポートするため、300人の本社スタッフだけがエイソスへと雇用を引き継がれるといいます。
NO MORE STORES
実店舗は「継がない」
今回の動きは、消費者のオンライン小売へのシフトが着実に進んでいること、また、同じ業界内であっても、パンデミックが企業に与えた「平等ではない」苦しみが浮き彫りとなる結果となりました。
デベナムズの公式ウェブサイトによると、同社の歴史は、高価な生地や日傘などを販売する店としてロンドンに開業した1778年まで遡ります。その後も順調に事業を拡大し、1950年には「英国最大の百貨店グループ」までに成長しました。
しかし、この10年ほどのあいだに、トレンドに追いつけずオンラインショッピングの台頭にもうまく対応できず、その存在感は失われていきました。一方、2000年に創業したエイソスや2006年に創業したブーフーのような企業は、トレンドの服をデザイン・生産し、Eコマースのみでの販売を強化し、「オンラインリテーラー」としての地位を確立してきました。
2020年に起こったパンデミックは、実店舗とECとの格差を悪化させる結果になりました。2020年、英国の衣料品店の売上高は25%減少。しかし、この1年のあいだに、ブーフーやエイソスを含むオンライン小売は、在宅を強いられた消費者がアクティブウェアやルームウェアなどの商品をオンラインで購入したため、売上が伸びました。2020年12月31日までの10カ月間では、ブーフーは前年の同時期と比較して英国の売上高が38%増加し、エイソスは2020年12月31日までの4カ月間で英国の売上高が36%増加したと述べています。
PREDATOR AND PREY
再生するファッション
専門家は、2021年、ファッション業界の勝者と敗者のあいだにある「ギャップ」が合併の条件を生み出すと予測しています。つまり、バランスシートの強い企業が、苦境に陥っている小売業者を買収して事業を拡大しようとしている、ということです。
ブーフーは、そのチャンスを掴もうとしている企業のひとつ。デベナムズによると、同社のウェブサイトには英国だけで年間約3億人が訪問し、ファッション分野におけるビジネスに加えて、美容やスポーツ、家庭用品などのカテゴリーでも足場を固めているとされています。ブーフーは、デベナムズのウェブサイトを再構築してリニューアルし、これらすべての商品を対象とした「英国最大のマーケットプレイス」になろうとしているのです。
今年、ブーフーやエイソスのような動きはさらに増加するでしょう。、ブーフーのCEOであるジョン・ライトル(John Lyttle)は、買収のために使った現金は、2020年末時点で約3億8,700万ポンド(約564億円)に達している既存の引当金から調達していると指摘。「今後起こりうるM&Aの機会をサポートするための、“意味のある”現金残高がある」と述べています。
さらに8日、ブーフーは新たにアルカディア・グループ傘下の「ドローシー・パーキンス(Dorothy Perkins)」「ウォリス(Wallis)」「バートン(Burton)」の3ブランドを2,520万ポンド(約37億円)で買収したことを発表しています。そして、この買収に関しても、214店舗と2,450人の従業員の雇用維持は条件に含まれていません。
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COLUMN: What to watch for
右肩上がりのワイン需要
ワインのレコメンデーションアプリ「ヴィヴィーノ(Vivino)」が、スウェーデンのキネビックが実施したシリーズDで1億5,500万ドル(約163億円)を調達したことが明らかになりました。『TechCrunch』によると、2018年時点で2,900万人だったアプリ登録者数は、現在5,000万人にまでに増加。今回の資金調達をもってパーソナライズされたレコメンデーション機能を強化するとともに、世界展開へ拡大するとされています。
アルコール需要は、すでにパンデミックの影響で増加していました。『Washington Post』は、1月13日に発表された米国ワイン産業の状況に関する年次報告書に言及していますが、同報告書において、シリコンバレー銀行は、公の場での集会やレストランでの食事に対するCOVID-19の規制を国が緩めるにつれ、米国でのワインの需要と供給が増加すると考えていると報じています。また、報告書には、パンデミックがワインの購入方法をどのように変えたかについての興味深い洞察があります。すでにECや消費者への直接配送に投資していたワイナリーや小売業者は、市場の急激な変化に適応。消費者はオンラインでワインを購入し、家まで届けてもらうことが当たり前になりました。「2030年までには、オンライン販売が、総売上高の20%を占めるようになるかもしれません」と述べられています。
(翻訳・編集:福津くるみ)
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