Society:NFTとGucciとFortnite

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Deep Dive: New Consumer Society

あたらしい消費社会

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連日、メディアを賑わせるNFTの話題。もちろん、ファッション業界でもこの流れを「必然」として捉えています。 しかし、ラグジュアリーブランドが参入した場合、本来のラグジュアリーがもつ「価値」はどうなるのでしょうか?  英語版はこちら(参考)。

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Image: REUTERS/NEIL HALL

ファッションに求められるものは、ただ機能にあらず。ファッションは自己表現であり、あるいは自らのステータスやアイデンティティを伝える手段でもあります。

今日、多くの消費者が、物理的な世界でそうであるのと同様に、デジタルの世界でもファッションを通じて「自己表現」する方法を求めています。ヴァーチャル化するファッションを目にする機会が続々と生まれているのはそのためです。

業界トップに君臨するラグジュアリーブランドにも、すでにデジタルを強化しているブランドはいくつもあります。そして今後、彼らが参入する可能性がある市場のひとつが、ブロックチェーンを利用した独自のデジタル資産、NFT(Non-fungible token、非代替性トークン)です。

VIRTUALLY HERE

ゲームで身につける

先日、『Vogue Business』はファッションとテクノロジーに関するカンファレンスを主催しました。そこで、グッチのエグゼクティブ・バイス・プレジデント兼最高マーケティング責任者であるロバート・トリフス(Robert Triefus)は、ラグジュアリーブランドがNFTに参入するのは必然だと述べています。

グッチはまだNFT市場に参入はしていませんが、3〜4年前からバーチャル空間でのビジネスに進出しています。「ザ・シムズ」(The Sims)や「ゼペット」(Zepeto)など、ゲーム向けをはじめとしたデジタルアイテムをつくってきた実績があります。最近ではARスニーカーアプリ「ワナ」(Wanna)とコラボレーションし、12ドル(日本のApp Storeでは1,480円で販売)のデジタルスニーカーを発表したことでも話題に。ユーザーはアプリでデジタルスニーカーを購入し、オンラインゲームプラットフォーム「ロブロックス」(Roblox)などの仮想空間で「履く」ことができます。

このデジタルスニーカーはNFTではありません。ただし、近い将来、ファッションブランドがヴァーチャル限定グッズや実際に購入された商品のデジタル版をNFTとして発売し、それらを「フォートナイト」(Fortnite)などのゲームで着用できるようになるのは容易に想像できます。

ルイ・ヴィトンやディオール、セリーヌなどのブランドを擁するラグジュアリー大手LVMHでチーフデジタルオフィサー(CTO)を務めていたイアン・ロジャーズ(Ian Rogers、在任期間:2015〜2020)は、同じカンファレンスで次のように述べています。

「もはやラグジュアリーブランドのバッグが『入手困難』になることはありません。なぜなら、NFTであれば手に入れられるのですから」

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Image: VIA INSTAGRAM @ WANNAKICKS

『Techcrunch』では、ブロックチェーンゲームを手がけるEnjinのオペレーション&コミュニケーションのヴァイスプレジデントであるブライアナ・コーテンディック(Bryana Kortendick)が次のようにコメントしています。

「ファッションは人びとのアイデンティティに非常に近しい存在です。終わりが見えないパンデミックへの対応を迫られるなかで、ブランドはクリエイティブな解決策を打ち出そうとしています」

先日も史上最高額のデジタルアートが落札され、一躍スターとなったデジタルアーティストのBeepleが描く未来は、NFTが実店舗で特定のアイテムと交換できるようなシチュエーション。自身のクライアントであったルイ・ヴィトンのようなラグジュアリーブランドの活用が見込まれると話しています。

「NFTとアパレルを結びつけることで、新しくおもしろい方法が生まれます。アート史におけるネクストチャプターとして記録されることでしょう。これは数十年前に始まったデジタルアートの歴史の延長線上にあるもの。コンピュータで生成されてインターネットで配信されるアートです」

the exclusivity of luxury items

ラグジュアリーの価値

前出のロジャーズは2020年にLVMHのCTOの職を離れ、現在、暗号通貨ウォレットを開発している仏企業レジャー(Ledger)に勤務しながら、LVMHのコンサルタントを続けています。

ロジャーズは、NFTはラグジュアリー業界において、ある明確な役割を果たすと説明します。

ラグジュアリーブランドは、その素材が高額であることやクラフツマンシップを掲げ、自分たちの製品の高額な価格を正当化してきました。しかし、素材も製法も、その価値の一端にすぎません。ロジャーズは「ラグジュアリーとは、アイデンティティを構築するビジネス」なのだと言います。

「ラグジュアリーなハンドバッグを買うのは、それが実用性に優れているからではありません。そのブランドがカルチャーを築いており、消費者自身がそのカルチャーの一部になりたいと思うからです」

ラグジュアリーを価値あるものにするにはその希少性も大きく寄与しますが、NFTはその点についても満たします。たとえコピーが出回っていたとしても、所有者が「唯一無二のデジタル資産」を所有しているということ。これは、ラグジュアリーの価値を高めるために欠かせない条件となります。

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Image: REUTERS

残された課題は、消費者がハイエンドファッションとしてのNFTにどれだけの金額を費やすかということです。

NFTに懐疑的な人たちは、すでにNFTがバブル崩壊を待っている状態にあると指摘しています。また、人びとが安価なコピー品に流されない理由として、偽物では本物同等の品質が担保されないことも挙げられます。つまり、「物理的な品質とは無関係」のデジタルアイテムで、「本物そのままのコピー」が簡単に手に入るとしたら、ラグジュアリーにおけるNFTにお金を出すインセンティブがどれほどのものか疑問が残ります

ヴァーチャルアイテムの価格設定について、グッチのマーケティング責任者トリフスは次のようにコメントしています。

「ヴァーチャルアイテムの世界は、まだ理解されていません。現在のところ、わたしたちは、その価値体系を理解するために、特定の体験やデジタル製品に価値を付ける実験やパイロット版を検討しています」


COLUMN: What to watch for

家賃が上がった州は?

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パンデミックは人びとが暮らす住環境も大きく変えました。『Fastcompany』では、米国における家賃の上がった地域、下がった地域を紹介しています。保険の比較プラットフォームを提供するQuoteWizardの新しいレポートによると、1ベッドルームのアパートの平均月額料金を調査したところ、パンデミック以降、米国35州で家賃が上昇したことが分かりました。

最も高騰したのはデラウェア州。12.3%増加し、平均額は1,142ドル(約12万4,000円)に上ります。第2位はアイダホ州で10.2%、700ドル(約7万6,000円)、第3位はアリゾナ州とモンタナ州で、それぞれ9.1%増加し、979ドル(約10万6,400円)と743ドル(約8万700円)でした。一方、全米で最も家賃が下がったのはマサチューセッツ州で、11.3%減の1,152ドル(約12万5,130円)。次いで、ノースダコタ州が9.1%減の660ドル(約7万1,690円)、ニューヨーク州とワシントン州が7.8%減で、それぞれ1,303ドル(約14万1,500円)と1,149ドル(約12万4,800円)になっています。

(翻訳・編集:福津くるみ)


🎧 Podcast最新エピソードのゲストは、世界8カ国を移動しながら都市・建築・まちづくりに関する活動を行う杉田真理子さん。多様な「都市」がもつ魅力と、トレンドとなりつつあるその価値とに迫ります。 AppleSpotify

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