アフリカでは2015年から2019年にかけてテックハブの数が急増しました。しかし、こうしたハブに期待されることは変化しています。テックハブはインキュベーションプログラムを提供する見栄えのするコワーキングスペースであればよい、という時代は終わりました。いまのテックハブには、アフリカにおけるスタートアップの規模拡大と成功を積極的にドライブしていくことが求められているのです。
とはいえ、各国の経済状況やエコシステムの成熟度が異なることを踏まえると、アフリカ大陸全体に共通した基準を打ち立てることは容易ではありません。
しかし、その役割のいくばくかはAfriLabsに委ねられています。2011年に設立されたAfriLabsは、51カ国320以上のテックハブをサポートしている民間組織です。現在AfriLabsはケニアのストラスモア大学と共同でアフリカに特化したハブ・マネジメントのカリキュラムをつくっているほか、アフリカのエンジェル投資家と共にスタートアップへの共同投資を行なうプロジェクト「Catalytic Africa」も立ち上げました。
AfriLabsのネットワークにいるテックハブがスタートアップに提供するのは電気やインターネット、オフィススペースだけではないと、同組織のエグゼクティブディレクターを務めるアンナ・エケレド(Anna Ekeledo)は言います。ビジネスアドバイザリーや法律関連のサービス、メンターや投資家とのコネクションなどもまた、AfriLabsのテックハブによって提供されています。
もちろんスタートアップは成熟するにつれ、自社のニーズをAfriLabs以外で満たす方法も学んでいくでしょう。しかし、AfriLabsが新しいニーズを対応するために進化することで、将来もその存在意義を維持できればとエケレドは考えています。
「現在のような人材不足を解消するために、10年後にはあらゆる大学で技術系スキルがカリキュラムの一部になることを心から願っています」と、エケレドは言います。「そうすれば、テックハブは基礎的な技術ではなく非常に高度な技術に集中できるようになるのです」
──Alexander Onukwue, west Africa correspondent
Stories this week
今週のアフリカ
- 有効期限切れ間近のワクチン供与のその後。アフリカ疾病予防管理センター(アフリカCDC)がこのたび声明を発表し、新型コロナウイルスワクチンのアフリカへの大量供与が失敗している理由について語りました。同声明では、その理由のひとつとしてワクチンの有効期間の短さが挙げられています。今月初めには、ヨーロッパが買い溜めしていたアストラゼネカ製のワクチン100万回分を有効期限切れ間近になってナイジェリアに無償供与したことが明らかになっており、この声明の主張を裏付けています。
- 黒人女性最年少でオックスフォードの教授に就任。英国の名門オックスフォード大学が、ケニア人社会学者のパトリシア・キンゴリを教授に任命しました。これによりキンゴリは、オックスフォード大学あるいはケンブリッジ大学で教授の職に就いた最年少の黒人女性となりました。
- スタートアップ法案が国会へ。ナイジェリアではスタートアップにとってよりよい規制環境を構築することを目指した法案が国会に提出されました。この法案が国会で可決されれば、これまでこの国のスタートアップを悩ませてきた突発的で強引な規制(バイクタクシーや暗号通貨、Twitterへの規制など)がなくなると期待されています。法案は投資家や起業家、法律事務所、政策提言団体、連邦政府代表の協力により作成されました。
- イギリスがアフリカからの入国規制を緩和。オミクロン株の出現にともない、イギリスはアフリカのさまざまな国を「レッドリスト」に入れていました。この動きに対しては強い批判がありましたが、このたびその規制を緩和しました。
- “ジョロフ戦争”でリードするセネガル。アフリカにおいて「どの国がいちばん美味しいジョロフライス(肉と野菜を炒めてつくるアフリカの米料理)をつくるか」というトピックほど楽しい話題はありません。ソーシャルメディアで長く使われてきた「#jollofwars」(ジョロフ戦争)のハッシュタグは、ナイジェリア人とガーナ人をライバル同士に変えました。その一方、イギリスの有名シェフのジェイミー・オリバーがジョロフライスのレシピに手を加えた際には、両国の人々が団結してアレンジへの不満を露にしています。こうしたなか、セネガル料理である「チェブジェン」がユネスコの無形文化遺産に登録されました。ジョロフライスの前身とされるこの料理の登録は、ジョロフ戦争におけるセネガルの小さな勝利を表しています。
ONE BIG NUMBER
今週の数字
40%
海外の大学に留学するサブサハラアフリカの学生に支給される奨学金のうち、中国から出ている金額の割合。中国はサブサハラアフリカの学生に対する大学の奨学金支給額が世界で最も多い国です。
中国政府が、特に博士課程(PhD)の学生を対象とした奨学金を充実させていることが、この傾向の大きな要因となっています。また外国人学生の入学が拒否されたり不寛容な対応をとられたりといったことがしばしばある欧米の大学と比べ、中国の大学の入学手続きは比較的簡単であることも挙げられます。
こうしたなか、中国がガーナの大学事情を変えているという声もあります。例えば、博士課程をとるために中国に留学したガーナ人は2017年時点で200人でしたが、2018年にはその数字が800人まで増えています。
Dealmaker
今週のディールメーカー
- 投資ファンドのAlitheia IDFが、総額1億ドル(約113億8,900万円)でファイナルクローズを迎えました。Alitheia IDFは早くからアフリカの女性起業家への投資に注力していた数少ないファンドのひとつです。最後の資金調達では、欧州投資銀行(EIB)が2,460万ドル(約28億円)の出資を行なっています。南アフリカとナイジェリアの投資家たちによって設立されたAlitheia IDFは、これまでに女性が主導するアフリカの企業5社への投資ラウンドでリードインベスターを務めてきました。Jetstream Africa(ガーナ)、ReelFruit(ナイジェリア)、SKLD(ナイジェリア)、AV Light Steel(南アフリカ)、Chika’s Foods(ナイジェリア)です。
- ナイジェリアで新しいオンライン学習プラットフォームを運営しているEdukoyaが、Target Globalが主導するラウンドで350万ドル(約4億円)を調達しました。そのほかにPaystackの最高経営責任者(CEO)であるショーラ・アキンレイド(Shola Akinlade)、KudaのCEOであるバブス・オグンデイ(Babs Ogundeyi)のほか、エンジェル投資家数名が今回のラウンドの投資家として名を連ねています。Edukoyaの創業者であるハニー・オグンデイ(Honey Ogundeyi)はKudaの元最高マーケティング責任者(CMO)で、UK-Nigeria Tech Hubのカントリーマネージャーも務めていました。
- Googleがウガンダの配車スタートアップであるSafeBodaへの出資を発表しました。Googleは今年10月、アフリカのスタートアップに5,000万ドル(約57億円)の投資を行なうことを発表しており、SafeBodaはその最初の投資先です。投資額は非公開となっていますが、アフリカのスタートアップ投資の中で最も大きなシェアを占める傾向にある4カ国(ナイジェリア、ケニア、エジプト、南アフリカ)以外の国の企業への投資であり、さらにフィンテック以外の分野への投資でもあるということで注目されています。
Other things we liked
その他の気になること
- アフリカの音楽ジャンルが無形文化遺産に。あまり広く知られていませんが、世界中で愛されているラテンダンスのひとつ「ルンバ」の起源は、かつて中部アフリカ西部に存在したコンゴ王国にあります(現在のコンゴ民主共和国やコンゴ共和国の首都ブラザヴィル周辺に相当)。そのコンゴのルンバがこのたび、ジャマイカの「レゲエ」と同じユネスコの無形文化遺産に登録されたと『Reuters』が伝えています。
- ノーベル賞が戦争に利用される。エチオピアのアビー・アハメド首相がノーベル平和賞の威光を利用し、アフリカ第二の人口を抱える同国を破滅に向かわせる戦争に火をつけたと『The New York Times』のデクラン・ウォルシュ(Declan Walsh)が伝えています。
- TikTokの力を知ったアーティスト。ナイジェリアのシンガーソングライター、1da Bantonの「No wahala」が、TikTokの動画19万本以上で使われたことで一躍有名になりました。これが露出を求めるほかのアフリカのアーティストにとって何を意味するかについて、『TechCabal』のスルタン・クアドリ(Sultan Quadri)が解説しています。
ICYMI
こちらもチェック
選挙で安定を手に入れたいリビア。約10年にわたる内戦状態を経験したリビアでは、24日にも国の統一に向けた大統領選挙が実施される予定でしたが、選挙当局から1カ月の延期が提案されています。選挙の勝者は、2011年にムアンマル・カダフィの独裁政権が倒されて以来初の大統領になります。
🎵 今週の「Weekly Africa」は、コンゴ民主共和国のFally Ipupaによる「Eloko Oyo」を聴きながらお届けしました。日本版の翻訳は川鍋明日香、編集は年吉聡太が担当しました。
💎 毎週木曜夜は、この1週間アフリカで起きたことを総まとめ。あらたな市場、あらたな産業が生まれる瞬間を定点観測するニュースレターです。今年最後の配信です。
📆 年末のニュースレター配信は12/28夜まで。12/29〜1/3は、朝・夜の配信をお休みさせていただく予定です。
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