Obsessions:インド版「マネーの虎」がすごい

Meet the sharks.
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Image: SCREENSHOT/SET INDIA YOUTUBE

インドのビジネス・リアリティショーといえば「MTV Dropout」や「The Vault」でしたが(いずれも、少々お粗末な演出でした)、ついに本命、「Shark Tank」の放映が開始しました。

2001年に日本で「Tigers of Money」(「¥マネーの虎」)としてスタートしたテレビシリーズは、2005年に英国で「Dragon’s Den」として放送。米国で2009年に「Shark Tank」としてスタートして以来、現在13シーズン目を迎えていますが、世界トップクラスというべきビジネス・リアリティショーです。

インドで「Shark Tank」の放送が開始したのは2021年12月20日。動画配信サービス「SonyLIV」でのみ視聴できますが、それは遅すぎでもなければ、少なすぎでもなかったようです。全30エピソードの第1シーズンは、放送開始から1カ月足らずで話題の的、ミームの宝庫となっています。また、この番組を通して、“世界第3位のスタートアップエコシステム”であるインドの起業家たちが、これまでにないほどプラットフォームや投資家、ファンドにアクセスできるようになったのも事実です。

もちろん、インド版のスケールは、まだ米国版のそれには及びません。例えば、米国版における最も裕福な「サメ」といえば、現在42億ドルの資産をもつ大物投資家マーク・キューバンですが、インド版の審査員は、まだ誰も億万長者ではありません

ただ、インド版で審査員を務める面々には、自国のマーケットにおける長年の経験と知恵を備えた、インドのトップビジネスリーダーが名を連ねています。

本日のレターでは、その審査員の顔ぶれを紹介していきましょう。

the Shark Tank India judges

インドの「虎」たち

#1 Ashneer Grover|アシュニー・グローバー

Ashneer Grover
Ashneer Grover
Image: LinkedIn

グローバーは、評価額28億5,000万ドル(2021年8月時点)の決済プラットフォーム「BharatPe」の創業者。BharatPe立ち上げ以前は食料品デリバリーサービスの「Grofers」(現Blinkit)のCFOを務めていました。さらに10年以上前には、コタック・マヒンドラ銀行やアメリカンエクスプレスで要職を務め、幅広い投資経験を積んできた人物です。グローバーは現在39歳で、クラフトビールブランド「BIRA」、モバイルゲーム会社のNazara Technologies、健康食品会社The Whole Truthなど55社以上の新興企業を支援してきた実績をもっています。

#2 Anupam Mittal|アヌパム・ミッタル

Anupam Mittal
Anupam Mittal
Image: LinkedIn

現在50歳のミッタルは1996年、結婚情報サイト「Shaadi.com」を設立。現在、約3,000万人がこのプラットフォームを利用しています。その後、People グループを設立し、Shaadi.comのほか、不動産ポータルサイト「Makan.com」やモバイルメディア企業のMaujを立ち上げました。現在、モビリティ企業のOla、電気自動車充電プラットフォーム「ElectricPe」、フィットネストレーニングサイト「Burncal」、B2B建材マーケットプレイス「Yojak」など多様なスタートアップを支援しています。

#3 Aman Gupta|アマン・グプタ

Aman Gupta
Aman Gupta
Image: LinkedIn

デリーに本社を置く、評価額約3億ドルのパーソナルオーディオ機器ブランド「boAt」。その共同創業者であるグプタは、つい最近投資家に転身したばかりですが、すでに強固なポートフォリオを構築しています。2021年だけでも、グプタ(現在39歳)は4つのスタートアップに投資しています(物流会社のShiprocket、食品ブランド「WickedGud」「Anveshan」、そして小規模ブランドの商品を扱うEコマース企業10club)。

#4 Vineeta Singh|ヴィニータ・シン

Vineeta Singh
Vineeta Singh
Image: LinkedIn

37歳のシンは、コスメブランド「SUGAR Cosmetics」の共同創業者。SUGAR Cosmeticsは現在、1億ドル規模に成長しており、インド国内130都市以上、2,500以上の小売店で販売されています

#5 Namita Thapar|ナミタ・タパル

Namita Thapar
Namita Thapar
Image: LinkedIn

医薬製薬会社のEmcure PharmaceuticalsのCEO。Emcureは現在、5億3,600万ドルのIPOを目指しています。44歳のタパルは同時に、11〜18歳の子どもを対象に起業家精神を身につけさせることを目的とした教育ベンチャー、Incredible Venturesの創業者兼CEOでもあります。また、彼女はデューク大学ビジネススクールFuquaのインド地域アドバイザリーボードのメンバーでもあります

#6 Ghazal Alagh|ガザル・アラク

Varun and Ghazal Alagh
Varun and Ghazal Alagh
Image: LinkedIn

33歳のアラクは2016年、夫のヴァルンとともに、化学物質を含まないスキンケア、ヘアケア、ベビーケア製品を製造するMamaearthを共同設立しました。同社は2022年にインド初のユニコーンとなり、評価額は12億ドルに。ボリウッド女優のシルパ・シェッティやセコイア・キャピタル・インディアが出資しています。

#7 Peyush Bansal|ペイシュ・バンサール

Peyush Bansal
Peyush Bansal
Image: LinkedIn

バンサールが立ち上げたオンライン処方眼鏡事業「Lenskart」は、つい6カ月前にも25億ドルの評価額を達成。次の資金調達ラウンド後には、評価額50億ドルを視野に入れていると報道されています。現在36歳のバンサールは、従業員エンゲージメントプラットフォーム「inFeedo」やライフスタイルブランド「dailyobjects.com」にも投資しています

Changing India’s startup scene

脱エリート、脱BC

インドのスタートアップ・シーンは、その大半が、皆が憧れるインド工科大学(IIT)インド経営大学院(IIM)をベースとした「同胞愛」で構成されているといっても過言ではありません。インドを代表するこれら二大キャンパスは、エリート教育機関であると同時に、ネットワーキングの中心地としても機能してきました。

しかし、これは「ボーイズクラブ」の最たる例。現に、両校の卒業生に女性はほとんどおらず、スタートアップ企業の創業者となると、女性が占める割合はわずか6%にすぎません。この偏った状況を変えるには、ロールモデルが重要な鍵を握っています。そして、インド版「Shark Tank」の審査員団は、その目的に大いに貢献しているといえるでしょう。

審査員のうち、IITおよびIIMの卒業生は3人で、男女比は4:3と立派なものです。

また、インドのスタートアップエコシステムにおいて、英語は資金調達のカベとなってきました。それを考慮し、番組はインドで最も広く使われているヒンディー語で収録されています。

審査員のひとりであるShaadi.comのミッタルは、LinkedInに次のように書いています。

「最初にこの番組の話をもらったとき、起業家精神が各家庭の夕食時の会話に上るのであればと、参加しようとはっきり決めていた」「”Angrezi(英語の意)”によるスタートアップの壁を打ち破り、”aam aadmi”(庶民)のための番組にすることができれば、と思っていた。幸いなことに、この番組はエリートやIIT/IIMの創業者たちからなる小さな輪を超えるのだと、制作者の足並みは揃っていた」

「Shark Tank」には、インド全国から6万2,000件のビジネスアイデアが寄せられ、そのうち198社が「サメ」に自らのアイデアを披露しました。ミッタルが発表した数字によると、多様な候補者が集まったようです。

  • ピッチの18%はカップルによるものだった
  • 34%は家族連れだった
  • 48%に女性の共同創業者がいた
  • 22%は、25歳以下の共同創業者が少なくとも1人いた
  • 約40%の企業が、コロナ感染拡大のさなかに起業した
  • 70%の企業が過去に資金調達をしたことがなかった
  • 創業者のうち、IIT/IIM出身者はわずか7%

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