Africa:クリエイター経済の作り方

Africa:クリエイター経済の作り方
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長年にわたり、アフリカの文化は映画音楽を通じて世界にインスピレーションを与えてきました。インターネットが普及し、スマートフォンの利用率も高くなり、若年層が大きな影響力を発揮するようになったいま、投資家やグローバル企業、ソーシャルメディアプラットフォームは(ようやく!)この分野へ強い関心を寄せるようになっています。

結果として、アフリカの企業に記録的な額の資金が集まっています。

アフリカのエンタテインメント業界に対する内外からの投資は、2019年までの2年間、100万ドルを下回る程度でした。しかし、2020年に1,390万ドル(約15億9,586万円)、2021年は1,160万ドル(約13億3,180万円)を記録しています。これにより、映画やテレビ、写真、広告、ファッション、デザイン、美術工芸品などの分野で、地元のコンテンツクリエーターにチャンスが生まれているのです。

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しかし、そこには課題も。そのひとつとして挙げられるのが、プロジェクトに関われる人間が一部のブランドやマーケター、起業家、クリエイターに限定されていることが多い点です。

「この業界では長年にわたり、何を知っているかよりも誰を知っているかが重視されてきました」と、南アフリカに拠点を置くBlueAvoの共同設立者であるインディラ・ツシテタ(Indira Tshiteta)は言います。

BlueAvoは音楽やファッション、映画、その他のビジュアルアートの分野で活躍するアフリカのクリエイターとビジネスをつなぐプラットフォームです。同社のようなスタートアップは、今後クリエイティブ業界のエコシステムにおいてより広く強固なネットワークが構築されることでその利益を享受することになるでしょう。

そして、それはクリエイターや国にも言えることです。アフリカの既知の才能と未知の潜在的才能のギャップに注目することが、この分野の次の大きなチャンスとなります。


CHEAT SHEET

業界・虎の巻

💡 どんな可能性が?:国内外の企業は常にクリエイティブ人材を求めています(例えば、動画制作やグラフィックデザイン・プロジェクトなどの担い手として)。一方で、アフリカのクリエイティブ業界はまだまだ発掘されるべき才能で溢れています。このふたつをつなぐ役割には、大きなポテンシャルがあるでしょう。

🤔 課題は?:アフリカのクリエイティブな才能は、国ごとに分断されてしまっています。

🌍 ロードマップは?:クリエイターのデータベースを一元化し、さらに人材を必要とする企業とクリエイターを結びつけるテクノロジーを活用することで、需要にあったサービスが提供できるようになるでしょう。

💰 ステークホルダーは?:Kepple Africa Ventures、Musha Ventures、Ingressive Capital、Lateral Capital、Chandaria Capitalなどのアフリカにフォーカスしたベンチャーキャピタルがアフリカのクリエイティブ産業に投資しています。


BY THE DIGITS

数字でみる

  • 1,160万ドル:2021年にアフリカのエンターテイメント系スタートアップが調達した資金総額
  • 0.5%: 2021年のアフリカ全体の資金調達のうち、エンターテイメント系スタートアップへの投資が占める割合
  • 14:2021年に資金調達を行ったアフリカのエンターテイメント系スタートアップの数
  • 3:2021年に100万ドル以上を調達したアフリカのエンターテイメント・スタートアップの数
  • 2,000万ドル(約22億9,621万円):南アフリカのモバイルゲームパブリッシャー、Carry1stの2022年の調達額
  • 360万ドル(約4億1,331万円):エジプトのクリエイターエコノミープラットフォーム、Minlyの2021年の調達額

THE CASE STUDY

ケーススタディ

企業名:BlueAvo

創業年:2019年

本社所在地:ケープタウン(南アフリカ)

創業者:Isaac Tshiteta、Indira Tshiteta

時価総額:非開示

BlueAvoは、ブランドや起業家、代理店といったコンテンツを求める側の人とアフリカのコンテンツクリエイターをつなぐプラットフォームです。

仕組みはこんな感じです──クリエイターがユーザー登録をすると、まずBlueAvoは身分証明証や写真による身元確認を行います。次に、クリエイターが適切なスキルセットをもっていることを確認するためのレビューが行われます。その後、クリエイターはBlueAvoのデータベースに登録されます。

コンテンツを求める側は、仕事の内容や場所、予算などの概要を投稿します。BlueAvoは求人側の情報も確認し、クリエイターネットワークに仕事の募集があることを通知。仕事に興味があるクリエイターはそのプロジェクトでどんな作品をつくるかを詳述した企画書を提出します。BlueAvoはその中から上位5名のクリエイターを選んで求人側に提案し、求人側はそのなかから一緒に仕事をするクリエイターを選ぶのです。

A woman looking at a phone screen with the BlueAvo website open.
Image: Rodger Bosch/Royal Academy of Engineering

支払いに際しては、クライアントがBlueAvoのエスクロー口座に予め代金を送金します。その後作品が納品されクライアントの承認を得たのちに、BlueAvoからクリエイターへ報酬が支払われるのです。なお、BlueAvoは当事者間の法律や知的財産権に関する契約を処理も担当し、報酬の20%を手数料として受け取ります

これまでBlueAvoは、ナイジェリアや南アフリカにおいて、クリエイターと企業とをつないできました。

例えば、南アフリカのケープ半島工科大学がとある学部のためのバイリンガル用語集を作成する際、このプラットフォームを通じて3人のナレーションアーティストが起用されました。また、ドバイに拠点を置くエージェンシー、Plus Four Studioはナイジェリアからグラフィックデザイナーを起用しました。2021年第4四半期、BlueAvoは97,000ドル(約1,113万円)以上の収益を上げたといいます。


IN CONVERSATION WITH

キーパーソンの発言集

A picture of Indira Tsengiwe and Isaac Tshiteta, co-founders of BlueAvo

BlueAvoの共同設立者であるアイザック・ツシテタとインディラ・ツシテタは、それぞれ異なる、しかし補完し合うような経歴の持ち主です。インディラはメディアコンテンツ制作会社を経営し、アイザックはソフトウェア開発に携わっていました。ふたりのインタビューから、興味深い発言を紹介します。

  • ✋🏿 BlueAvoのモデルについて:「わたしたちは、テクノロジーをツールに仕事の機会を民主化したかったんです」
  • 🔮 会社の今後の目標について:「その人の人脈にかかわらず、大陸中のクリエイターがビジネスチャンスを掴めるようにし、文字通りあらゆる人のために機会を民主化すること」
  • 📋 規制環境について:「アフリカは世界のテクノロジーソリューションに追いつき始めており、いまはその状況に適当するために常に新しい法律や規制が生まれています」

Fintech deals to watch

最重要ディール

  • ケープタウンを拠点とするモバイルゲームパブリッシャーのCarry1stは2022年、VC企業のAndreessen Horowitzが主導し、GoogleやRiot Games、ラッパーのNasが参加したラウンドで2,000万ドル(約22億9,621万円)を調達しました。
  • ラゴスを拠点とする動画配信サービスのiROKOtvは、2016年にフランスのテレビ会社Canal+とスウェーデンの投資会社Kinnevik ABから1,900万ドル(約21億8,140万)を調達しました。
  • ナイロビを拠点とする音楽配信・ダウンロードサービスのMdundoは、2020年にNasdaq First North Growth Market DenmarkにおけるIPOで640万ドル(約7億3,478万円)を調達しました。

🎵 今週の「Weekly Africa」は、南アフリカのYvonne Chaka Chakaの「Thank you Mr DJ」を聴きながら、東アフリカ特派員のCarlos Mureithiがお届けしました。日本版の翻訳は川鍋明日香、編集は年吉聡太が担当しています。


One 🎬 Thing

ちなみに……

アフリカのクリエイティブ業界は、経済にとってどれほど重要なのでしょうか? アフリカでは音声・映像関連産業および映画産業だけで2,000万人以上の雇用を創出し、年間200億ドル(約2兆2,962億円)の収益を上げる可能性があると言われており、そのポテンシャルは計り知れません。

アフリカ大陸最大を誇るナイジェリアの映画産業、通称「ノリウッド」では、年間約2,500本の作品が制作されています。最近では世界的に認知されている作品も増え、世界の動画配信プラットフォームで紹介されるようになっています。


💎 「Weekly Africa」は、毎週火曜、アフリカの地で新たな産業が生まれる瞬間を定点観測するニュースレターです。

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