Africa:バイク禁止で「Uber」復活か

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Africa Rising

躍動するアフリカ

Quartz 読者の皆さん、こんにちは。毎週水曜の夕方は、次なるイノベーションの舞台として世界が注目する「アフリカ」の今と、主要ニュースを伝えます。今日は、ナイジェリアのラゴスで起こった「バイク禁止令」についてレポート。市民の大切な足をなぜ、政府は禁止したのでしょうか? 英語版(参考)はこちら

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Image: REUTERS

アフリカ最大のメガ都市であるナイジェリア・ラゴスでは、日常茶飯事の渋滞と管理の行き届いていない道路網のため、市内を移動するのは至難の技。そんななか、街で最も普及している交通手段が規制されることになり、その状況はさらに悪化しそうだ。

政府は今回、州政府所在都市であるイケジャを含め、主要な住宅街とビジネス街における商業目的のバイクと三輪自動車の利用を禁止すると発表。禁止令は2020年2月1日より施行された。

地元では「Okada」呼ばれているバイクタクシーはこれまでも禁止されたことはあったものの、今回は、この1年のうちにいたるところで見かけるようになっていたバイク配車サービスを提供するスタートアップ企業の運営をも禁止した。

#OkadaBan

スタートアップへの影響

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Image: REUTERS/Temilade Adelaja

ラゴスを拠点とするバイク配車サービスの「Gokada」、「Max.ng」、そして中国資本のOPayの子会社でもある「ORide」は、無秩序なOkada(バイクタクシー)と比べてより安全で、クルマと比べてより安価にラゴスの街を移動できる価値のある手段を提供していた。また、これらの事業は投資家たちにとっても十分魅力的で、数百万ドルの資金調達によってラゴスの悲惨な道路事情に改善がもたらされる最中だった。

州政府側は、バイクや三輪自動車は道路交通法に従わない傾向があることや、交通事故に巻き込まれやすいという安全面の理由から、今回の禁止令は必要な措置であると説明するが、明らかにそれ以外の事情があるようだ。

今回の禁止令を受け、Twitter上では「#OkadaBan」というハッシュタグで、ユーザーや市民からさまざまな声が投稿がされている。Gokadaは70%の雇用者を解雇することを発表し、リブランディングをするとともにロジスティクス(物流)にビジネスをフォーカスする

Gokadaはこれまで合計530万ドル(約5.8億円)の資金を、 Max.ngは810万ドル(約8.9億円)、Orideは1億7,000万ドル(約186億円)を調達していただけに、スタートアップにとっては非常に残念な「禁止令」だったに違いない。

In a bad relationship

政府との関係が悪化?

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Image: REUTERS

ラゴスには国有のバス(BRT)が走っているが、住民の要望に応じることができていなかった。その隙間のニーズをバイクや三輪自動車が拾い上げてきたため、この街で配車サービスは必要不可欠な存在となっている。

特に、お粗末な都市計画や粗悪な道路状況のせいでクルマが立ち入れないような都市中心部では、バイクは非常に実用的だ。政府は今回の禁止措置による影響はバスでカバーすると発表してはいるが、BRTはすでにバス不足でバス停での待ち時間も長く、政府の策も虚しく響くだけだ。

また、これまでも政府とバイク配車サービス会社の関係は良好とは言えなかった。2019年7月、州政府は配車サービス会社に対し、バイク1,000台につき年間2,500万ナイラ(7万ドル=約770万円)と、追加のバイク1台につき3万ナイラ(83ドル=約9,100円)をライセンス料として支払うよう要求した。また、地元の輸送組合への支払いとして、彼らはバイク1台につき500ナイラ(1.38ドル=151円)を毎日徴収されるというハラスメントを受けてきた。

大手バイク配車サービス会社の執行役員は、今回のバイクと三輪自動車の禁止令は、現実よりも美意識を優先した政府による「メガ都市構想」の一部だと話している。

Uber helps

Uber復活の兆し

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Image: REUTERS/Temilade Adelaja

バイクタクシーの禁止によって注目されるのが、配車サービスの「Uber」。競合がいなくなったことで、すでに5年ほどラゴスで運営している同社の動きに期待がかかる。

ただ、ラゴスは世界で最も高い車密度をもつ都市であり、その数は1kmあたり約200台。クルマの問題も頭を悩まさせるトピックなのだ。

しかし、ラゴスには広大で十分にまだ活用されていない水路がある。その水路こそ、渋滞を緩和するため代替手段と見なされており、そこへ目をつけたUberは2019年、ボート「UberBOAT」の実験的な運行を開始した。

UberBOATは、地元のボートオペレーターであるTexas Connection FerriesおよびLagos State Waterways Authority(LASWA)と提携して運営。ただ、気になるのはコスト面。ほとんどの人が1日2ドル未満で生活する西アフリカでのバスの交通費は約300ナイラ(0.83ドル=約91円)。それと比較し、UberBOATは1回500ナイラ(1.39ドル=約153円)の料金がかかるという。

政府は2月、600台以上のバスと6隻のボートを発注し、バイク禁止で影響を受ける通勤者の代替手段を増やす計画を立てているとも報じられているが、果たして市民は満足するのだろうか。

This week’s top stories

今週のアフリカニュース4選

  1. エチオピア航空がやっと動き始めた。新型コロナウィルスの影響にもかかわらず、エチオピア航空の中国発着便を続ける姿勢に対して批判が高まるなか、エチオピア・アディスから北京、成都、広州、上海への週2月の便を33%減らしました。また、アディスから北京、広州、上海へのルートの飛行機をボーイング777とA350からボーイング787-8に変更し、乗客数を20%〜45%減らしています。
  2. ガーナが経済的飛躍の高い国として魅力的な理由。ガーナには、地理、制度、人的資本の面で、他の国よりも多くの大きなメリットがあります。海岸があり、貿易にも困らない港も多くあります。約3,100万人の人口を抱えるので国内市場を十分に築くことができ、雇用と食料を提供するのにもちょうどいい大きさだとされています。
  3. アフリカでのe-コマースは成功しない? 最近発表された調査で、南アフリカの買い物客がオンラインで平均109ドルを費やしたことが分かりました。これはアフリカ諸国の中でトップにランクされていますが、南アフリカの同調査での金額は、世界平均よりも400ドル近く低くなっています。また、Hootsuiteによるデジタルトレンドレポートで調査した44カ国のうち、アフリカ6カ国が消費額の下位10位にランクイン。投資家の関心もe-コマースから離れ、フィンテックが中心です。
  4. 南アフリカで計画的な人員削減。南アフリカでは、2020年に9,000人を超える計画的な人員削減が行われると発表されました。これは、経済の低迷による2019年第4四半期の事業倒産の増加が主な原因。Telcom、Samancorなどといった会社が対象になっています。

【今週の特集】

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今週のQuartz(英語版)の特集は「Retail versus Amazon(Amazon VS 小売り)」です。圧倒的なスケールで小売業界を変えてきたアマゾンは、次にどこを目指していくのか。その野望のすべてをQuartzがレポートしていきます。

(翻訳・編集:福津くるみ)

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