Africa:2024年の新「電力」地図

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Africa Rising

躍動するアフリカ

Quartz読者の皆さん、こんにちは。毎週水曜の夕方は、次なるイノベーションの舞台として世界が注目する「アフリカ」の今と、主要ニュースをお届けしています。 今回は、アフリカの生活を支える「クリーンエネルギー」の現状をレポートします。英語版(参考)はこちら

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Image: REUTERS/MOHAMED ABD EL GHANY

アフリカ大陸は世界で最も電気が通っておらず、電化の普及率も最も遅れています

各国とも財政赤字のため家庭へ電力を普及させる余裕がないため官僚の懐疑的な見方もあるものの実行可能な代替エネルギーとして太陽光発電が注目されてきました。しかし近年、アフリカの経済圏はエネルギー供給の多様化を目指しており、なかでも風力発電が人気を集めています。

Wind power generation

風力発電の代用

世界風力エネルギー協会(GWEC)の最新のデータによると、2019年、エジプト、モロッコ、エチオピアなどを筆頭にアフリカ、中東諸国は900メガワット近い風力容量を導入しました。

風力発電の導入は、今後5年間で加速する見込みです。GWECは、2024年までにこれらの地域で合計10.7ギガワットの風力発電容量が導入されると予測しています。

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アフリカ大陸における先進国の南アフリカは、この風力発電導入の流れをリードしており、2024年までに3.3ギガワットの容量を追加する見込みです。そして、国営電力会社Eskomが抱える課題への対応と石炭火力依存の軽減を目指しています。

同国が喫緊の課題として風力発電への切り替えを進めているのには、国営電力会社の供給が不安定日常茶飯事に発生している停電事情が背景にあります。ほかのアフリカ諸国と同様、南アフリカでも、人口と電力需要の増加に電力インフラの拡大が追いついていないのです。

2019年7月、ケニアがアフリカ最大級となる風力発電プロジェクトを発表。トゥルカナ湖風力発電所は首都ナイロビの600キロ北に広がる、突風と岩肌の多い砂漠に位置し、365機の風力タービンで310メガワットの安定したローコストエネルギーをケニアの電力網に提供。地熱や太陽光など複数のソースを利用して100%再生利用可能エネルギーへの転換を視野に入れています。

世界に遅れをとっているアフリカ諸国ではありますが、風力発電は政策立案者に電力網の代替案を提供しています。また、風力発電は家庭への電力供給を進めるだけでなく、長年の課題となっている大気汚染の解決策として地球環境保全への一助にもなっているのです。

南アフリカの東部にあるムプマランガは、特に、再生可能エネルギーの恩恵を待つ州です。多数の石炭火力発電所があり、世界で最も二酸化窒素による汚染が広がっている地域と言われています。

Invest for Renewable Energy

投資額の拡大

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Image: REUTERS/THOMAS MUKOYA

南アフリカだけでなく、サブサハラアフリカ(北アフリカを除いた国、ただしスーダンを含む)でのクリーンエネルギーへの投資額も、2017年の2.3億ドル(約242億円)から2018年には7.4億ドル(約780億円)まで伸びました。そのうち、4億ドル(420億円)は、2018年の南アフリカにおける風力発電プロジェクトによるものです。

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再生可能エネルギーの導入は各国で進んでいますが、それを推し進めている要素として優遇措置や援助国からの支援、そして及び腰の政府に対するリスク回避メカニズム導入が挙げられます。

もちろん課題がないわけではありません。「政府は現状のエネルギーでも購入同意に達するのが難しい状況で、加えて再生可能エネルギーも検討するとなると、難しい決断を迫られるでしょう」

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今のところ、クリーンエネルギー政策は税優遇措置に限定されています。一方で、ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)のアナリストによると「水力の供給が低いことに加え、石炭への資金導入に難色を示す傾向が増えているため、長期的に見て再生可能エネルギーへの投資は伸びるでしょう」と述べています。

天然ガスや石炭の場合、発電のためのインフラにコストがかかってしまう点も、再生可能エネルギー導入推進にとっては朗報なのかもしれません。

This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

  1. ナイジェリアが対処すべきウイルス。アフリカでも新型コロナウイルスの発生が見られますが、ナイジェリアでは現在、新型コロナウイルスよりも致命的なウイルス性疾患であるラッサ熱の対処に追われています。ラッサ熱は、ナイジェリアで一年中発生するエボラやマールブルクのような重度のウイルス性出血熱(VHF)であり、ナイジェリア疾病管理センター(NCDC)によって2020年までの5週間で多く発生しています。毎年の乾季(およそ11月から3月)が国の半分に広がっています。
  2. コロナウイルスの影響でアフリカ旅行延期。2020年中にアフリカへの渡航を宣言していたTwitterのCEOであるジャック・ドーシーですが、新型コロナウイルスの影響を受け渡航を延期しました。「私は旅行中にチームと同じようにリモートで作業する計画でしたが、COVID-19や他のすべてのことを考慮して、再調整する必要があります。いずれにせよ、アフリカでの機会を追求し続けます」
  3. VisaとPagaがコラボレーション。Visaは、ナイジェリア・ラゴスに拠点を置くスタートアップPagaとパートナーシップを結びました。この提携は、アメリカの大手金融サービス会社がアフリカ大陸に進出し、アフリカのトップスタートアップ強いタッグを組むという戦略です。Pagaはエチオピアとメキシコでの拡大を目標とする前に、西アフリカでフィンテック事業を拡大しています。
  4. アフリカの女性は、男性よりもインターネットへのアクセスが少ない。国連によると、インターネットおよびそのほかの情報通信へのアクセスは、男女平等を図る上で重要なことです。インターネットは女性が権利を主張し、社会的、経済的、政治的機会に基づいて行動できる手段を提供しているからです。しかし、アフリカ諸国では、女性のインターネットの定期的な使用レベルが大きく異なります。カボベルデの女性の58%とモーリシャスの57%がインターネットを定期的に使用しているのに対し、マリ、ニジェール、ベニン、マダガスカル、ブルキナファソ、マラウイでは10%未満です。

【今週の特集】

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今週のQuartz(英語版)の特集は「AI’s power problem(AIの権力問題)」です。AIが人間が生み出した巨大なデータを基に開発されるなかで、人間の持つ「ステレオタイプ」が助長される問題が起きています。これを正すには、アルゴリズムだけではない、人間の関与が必要になる――。その最前線をQuartzがレポートします。

(翻訳・編集:福津くるみ)

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