New Normal:コロナが生んだ新たな「種族」

Friday: New Normal

新しい「あたりまえ」

Quartz読者の皆さん、こんにちは。毎週金曜日のPMメールは「New Normal」と題し、パンデミックを経た先にある社会のありかたを見据えます。今日は、新型コロナウイルスの影響で生まれた新しい生き方の「タイプ」を、傾向別に分析します。あなたが属するタイプはありますか? 英語版はこちら(参考)。

BÁRBARA ABBÊS FOR QUARTZ
BÁRBARA ABBÊS FOR QUARTZ

新型コロナウイルスによるパンデミックで、世界中の人々が外出を制限される生活を強いられています。そのなかで、Stay Homeの「楽しみ方」を考えながら、お金のかからない新しい趣味に没頭した人も多いでしょう。

一方、パンデミックで経済が悪化していても、景気の影響を受けずに出費し続ける余裕のある人たちの中には、新たな消費動向が浮かび上がってきています。

Good to know

3つのタイプ

パンデミック前は“オシャレ”だった海外の友人たちが、サワーブレッドやハーブ園、Crocs(クロックス)の新品サンダルを履いた姿や、ターメリック(ウコン)で服を染める様子などをソーシャルメディアにシェアし始めたのは、いかにも新しい“変化”の現れでした。

彼らのような新たなタイプの消費者「Hipsteader」(ヒップステッダー)は、ライターのHeather Havrileskyによると、その原型をヒップな自給自足生活者「Homesteader(ホームステッダー)に求めることができるといいます。

彼らが抱いているのは、「『大草原の小さな家』型ライフスタイルの幻想」です。これまでスタイリッシュに着飾り、インスタ映えするような場所に出向いていた彼らは、今、ソーシャルライフに投じていたエネルギーとお金を自宅での生活を変化させることに注ぎ始めているようです。

パンデミックによって登場した新たなタイプは、ほかにもあります。

たとえば「Screenhead」(スクリーンヘッド)は1日の大半を“冬眠”して過ごし、お金を主にEコマースとストリーミングに費やしています。「Overachiever」(オーバーアチーバー)は不安症でマルチタスクなタイプで、生活が変化するなかでも自身の身体とマインド、そして住処をよりよくするために目標設定をし、そのための努力を惜しみません。

これらのタイプは、重なり合うこともあります。たとえば、Zoomでのオンライン授業とグループチャットの隙間時間にTikTokダンスをマスターする10代は、ScreenheadとOverachiever両方の素質があるといえるでしょう。語学アプリDuolingoでポルトガル語を勉強しながら自身で大麻の水耕栽培をする人は、「Overachieving Hipsteader」とも呼べます。

今回は、今後も主要なポジションを築いていくと予想されるこれら3つタイプを紐解きながら、彼らの行動が経済の流れにどのように影響を与えているのか分析していきます。

#1 The Hipsteader

#1 DIYヒップスター

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  • パンデミック以前の生息地:地元のファーマーズマーケットやクラフトフェア、高級志向のショップなど。
  • パンデミック中の生息地:Instagramで最新のDIY作品を紹介(パンや庭いじり、マスクなど)し、投稿サイトRedditの「発酵とサワーブレッド」コミュニティで、酢漬け発酵について議論を展開。
  • パンデミック後の行動:裁縫、編み物、日曜大工、植栽、料理、堆肥作り、発酵、缶詰づくり、そしてインスタ映えするパン焼き用の“必需品”を揃えること。
  • 見分け方:爪にサワーブレッド生地または土が挟まっている。エプロンのポケットに鋤(すき)やキッチンバサミ、記録用のスマホ、ワンヒッター(ハーブを吸うためのパイプ)が入っている。それから、イチゴ柄のクロックス。

今、植物の種子を販売する業者が「前例にないほど消費者の注目を集めている」ようです。100年以上ホームガーデニング関連商品を扱っているScotts Miracle-Gro(スコッツ・ミラクル-グロー)も、3月28日までの3カ月の売り上げは前年比で23%伸びました。特に、多数の大麻栽培ブランドを傘下に置くグループ企業Hawthorne Gardeningが急成長。Hipsteaderは、ガラス瓶いっぱいの自家栽培用大麻のつぼみと、サワーブレッドやDIYマスクを物々交換するのです。

彼らの間で起きた手づくりサワーブレッドブームによって、イーストと小麦粉の売上は“膨らみ”ました。ベーキング用品を卸しているKing Arthur Flour(キング・アーサー・フラワー)では、売上げが全粒粉だけで3倍になったそうです。イーストメーカーRed Star Yeast(レッド・スター・イースト)は、「これほどの需要は今まで見たことがありません」と話します。

Crocsについていえば、医療従事者も含め、使い勝手も履き心地もよいサンダルのファンが多いのは当然です。しかし、靴業界の他メーカーに比べると、明らかにCrocsは成功しているといえるでしょう。

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調査会社NPDの2020年4月の報告によると、靴全体の売り上げは落ちているのに対し、Crocsが自宅生活関連カテゴリーを押し上げています

The StrategistのファッションエディターLaurel Pantinによると、Hipsteaderでモデル兼テキスタイルデザイナーであるHeather Taylor(ヘザー・テイラー)こそが、イチゴ柄のCrocsを履くインフルエンサーの第一人者といえるようです。

#2 The Screenhead

#2 リモートゾンビ

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  • パンデミック以前の生息地:映画館、スポーツイベント、コンサート、自宅でゲーム、Netflix、チルアウト。
  • パンデミック中の生息地:どこにでも出現する。Zoom、TikTok、Twitter、フードデリバリーのGrubhub、『どうぶつの森』やAmazon Primeでパンデミックを乗り切る。
  • パンデミック後の行動:基本的に新型コロナ以前と変わらない。ショッピング、社交、エクササイズ、食生活、そして自分のためのエンタテインメントも含め、テレビ、パソコン、タブレット、またはスマホ(あるいは全て)があれば総じて解決。
  • 見分け方:玄関前に大量のAmazonの箱が積まれている。テキストネック(携帯電話の見過ぎで首が前屈みになり、肩こりなどを引き起こす現代病)。ソファに人型の形がついている(ソファに長時間座るため)。

Netflixの会員数は、2020年に入ってからの数カ月だけで1,600万人も増えました。Adam Epsteinの報告によると、「これはストリーミング業界全体の利用が急増する最中で起こった」そうです。

Verizonによると、米国のネットワークにおける4月のストリーミング使用量は、41%増加。Nielsenによると、米国人は4月、1日合計270億回分のストリーミングコンテンツを視聴し、これは昨年の同月より100億回分増えています。ストリーミングメディアに特化した分析チームConviaのデータでは、世界的に見ると、3月末時点で日中のストリーミング利用が40%増加しました。

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3月末には「Zoom疲れ」や「Zoom“FOMO”」(FOMO: Fear of missing out、取り残されることに対する恐怖)、「Zoom二日酔い」といった新たな問題も生まれましたが、それらはすべてビデオチャットへの移行期間だったためといえます。

オンラインコミュニケーションについては、TikTok、Houseparty、Google Classroom、Google Hangoutが、無料iOSアプリの人気上位を占めます。5月10日の時点で、Zoomは2020年の米国上場株式において2番目に評価の高い銘柄になりました(1位は、COVID-19のワクチンを開発しているバイオテクノロジー企業のModernaです)。

株価が好調な企業といえば、Amazonです。第1四半期、総収益776億ドル(約8.3兆円)のうち56億ドル(約6,000億円)が、Amazon Primeの会員登録費を含むサブスクリプションによる利益でした。

Quartz記者のKaren Hoのレポートによると、CFOのBrian Olsavsky(ブライアン・オルサフスキー)は、Prime会員がより頻繁に、より多くの商品を購入しているという傾向を報告しています。3月は、Prime Videoや音楽、ビデオレンタルなどのデジタルサービスを初めて使うという利用者数も、倍近くになりました。

#3 The Overachiever

#3 神経質な意識高い系

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  • パンデミック以前の生息地:ジム、スパ、学校、ホームデポ(ホームセンター)
  • パンデミック中の生息地:YouTubeでのチュートリアル動画の閲覧やTEDトークを視聴。ワークアウトアプリPelotonの使用。オンライン教育プラットフォームMasterClassのサブスクリプションを最大限に活用。
  • パンデミック後の行動:マルチステップのフェイスケアを実行し、髪にハイライトを入れ、リス避け付きの餌台(バードフィーダー)を設置、シックスパックの腹筋、子どもたちにプログラミングを教える。
  • 見分け方:輝く素肌、目に見える筋肉のハリ、伸びた部分も綺麗に染められた髪、新しいスキル、汚れた洗濯物や食器が見当たらない家。

調査会社NPDによると、セラムやフェイスマスクなどのスキンケア商品のオンライン購入は、他の化粧品の売り上げを上回ったことがわかりました。

オンライン決済のSquareも、4月20日までの4週間で、自宅でできるフェイシャル、ヘアカラー、ペディキュアなどの売り上げが186%伸びたと報告しています。

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NGOのカーン・アカデミーは、若いOverachievers(家で学習する子どもたちなど)の影響による250%の伸びを記録し、サービス向上のためユーザーに仮想通貨での寄付を呼びかけています。

MasterClassは月々15ドルのサブスクリプションで受けられる、テキサススタイルバーベキューから脚本の書き方、ニール・デグラス・タイソン、ゴードン・ラムゼー、ダイアン・フォン・ファーステンバーグなどのセレブ講師によるホームライフや自己改善に役立つ講座を提供し、コロナ禍での増加を見せています。

YouTubeの「一緒に料理する」「一緒にエクササイズする」などのチュートリアル「with me」シリーズも3月15日以降、視聴が600%伸びています。

これまでは、“ブルジョワ”なOverachieversのジョークの対象になっていたPelotonは、今年株価が最も評価された企業のひとつでしょう。これも、自主隔離をしているOverachieversが、供給が間に合わないペースでエクササイズバイクを注文しているからです。

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ジムやブティックスタジオと競い合ってきたその他のホームエクササイズ企業たちも、デジタル時代の恩恵を受けています。

サブスクリプションで世界中のスタジオからエクササイズビデオをオンデマンドで提供するJetSweat(ジェットスウェット)の共同設立者Erin Frankel(エリン・フランケル)は、コロナ後の需要は「ありえないほどの多さ」だと話します。フィットネス界の著名人たちも恩恵を受けているようで、YouTubeの「Yoga with Adriene」は3月だけで、2,900万回(去年同月の約3倍)再生されました。


This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

  1. BoseがAR開発を終了。音響機器を展開するBoseは、AR業界からの撤退を決め、来月にはプラットフォーム上でのサードパーティ開発者へのサポートも終了することを明らかにしました。2018年、BoseはSXSWでARプログラムを開始するとともに、フレームにマイクを埋め込み、骨伝導オーディオを内蔵したサングラスBose Framesなどをリリースしていました。
  2. Primarkは店舗にこだわる。6月15日からロックダウンが緩和され、アイルランド・ダブリンを拠点とする衣料品小売店「Primark(プライマーク)」では、約3カ月ぶりの再開を心待ちにしていた人々で長蛇の列になりました。その理由として、Primarkは他の大手ファッション小売店とは全く異なるアプローチをとっており、Eコマースではなく店舗にこだわりをもつストラテジーがあるからです。
  3. 台湾へのビジネス渡航が可能に。台湾疾病管制局(CDC)の声明によると、6月22日から、資格のある同国への出張者は渡航可能になります。低リスクの国から来ている場合、ホテルに7日間の隔離。5日目に新型コロナウイルスの検査を行い、結果が陰性であれば、その後自由に動くことができます。ただ、21日目までは体温や健康状態を把握し、会った人の記録を残さなければなりません。
  4. ポルトガルは安全な旅先? ヨーロッパにおいて、多くの国が観光業を生業にしていますが、この夏の旅行先に求められるのは「安全性」になりそうです。ポルトガルはとくに、COVID-19の感染者がヨーロッパ内で最も少ない国のひとつ。観光客を取り戻せるよう、安全性を強調する新しいキャンペーンを開始しています。

(翻訳・編集:福津くるみ)


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