Wednesday: Africa Rising
躍動するアフリカ
強硬な反移民政策を取ってきたトランプ政権。しかし、その“矛先”となる国においても大きな支持を得ているようです。米大統領選挙の投開票を前に、Quartz Africaによるレポートをお届けします。
2016年、アメリカでドナルド・トランプが大統領に就任して以来、ナイジェリアはトランプ政権による反移民政策の標的のひとつとなっています。
しかし、世界最大の黒人国(人口比)であるナイジェリアにおいて、トランプは依然として、かなりの人気を誇っています。
それは、なぜなのか。まずは、最近の動きを見てみましょう。
immigrant visas
強硬な「反」移民政策
米国国土安全保障省による学生ビザの規則変更案によると、ナイジェリアの学生には、(他のアフリカの35カ国と同様に)学位プログラムにどれだけ時間がかかろうが、2年間のビザしか発給されないことになります。さらに、ビザの延長申請には費用がかかりますが、許可される保証はありません。
ナイジェリア人留学生の数は、過去10年間で倍増しています。そして、それによる経済効果は2019年だけで5億ドルを超えています。にもかかわらず、こうした制限が提出されているのです。
ほかにも、ナイジェリア人のビザ申請に対しては、面接免除の無期限停止やビザ料金の引き上げ、さらには発給禁止なども目立ちます。
しかし、こうした政策にもかかわらず、2017年の調査ではナイジェリア人の69%以上が米国を好意的に見ていることが示されています。最近でも、2020年1月のPew Research Centerの世論調査によると、「国民がトランプ政権の外交政策に信頼を寄せている国」として、フィリピン、イスラエル、ケニアに次いで、ナイジェリアが世界第4位にランクされていることがわかっています。
conservative values
「保守」はウケる
そうした支持の背景として、トランプ政権のもつ「保守的な価値観」が挙げられます。人工妊娠中絶への反対をはじめ、その姿勢は、人口の大部分が保守的なナイジェリアにおいては、多くの支持を集めているのです。
「ナイジェリア人の多くが宗教的な家庭で育っています。ゆえに、リベラルというよりは保守的なのです」と語るのは、ナイジェリアで大統領選挙運動に携わった経験をもつトランプ支持の政治通信ストラテジスト、アヨバミ・アデコジョ(Ayobami Adekojo)です。
アデコジョはQuartz Africaの取材に対して、「キリスト教徒もイスラム教徒も、保守主義的な核心部分においては多くのことで一致しています。そのことが、ナイジェリアにおけるトランプ支持を助長しているのです」と言います。
実際、ナイジェリアにおいて、キリスト教徒の人口は2060年までに倍増すると予測されています。ナイジェリアは世界で3番目にイスラム教徒とキリスト教徒の人口が多い国で、その予測によれば、2060年までに同国は「両宗教の人口が多い国」トップ10にランクインするほどです。
ナイジェリアのキリスト教徒がトランプを支持するのには、トランプと米国の福音派との蜜月関係も関係しています。
ここ数年、イスラム教徒が多いナイジェリア北部を含む一部の地域では、宗教的な背景からキリスト教徒が迫害されていると考える人々が増えています。2018年、ナイジェリアのムハンマドゥ・ブハリ大統領が訪米した際にも、トランプ大統領自身は、その迫害に対して言及していました。
その発言は、主に米国における福音派の歓心を買うことを目したものでしたが、ナイジェリアのキリスト教徒の心を動かすことになったのです。「ナイジェリアのキリスト教徒が自国での迫害を感じていて、一方で“自由世界の指導者”が彼らのために立ち上がったとしたら、彼が支持を得るのは間違いありません」と、前出のアデコジョは語ります。
また、同じくトランプを支持するオンド州議員であるレナード・アキンリビド(Leonard Akinribido)は、「トランプは宗教的なメッセージを声高に発信しています。彼の政策には反ナイジェリア的なものもありますが、そのメッセージは、一般的なナイジェリア人の心に響くのです」とも言います。
トランプがナイジェリア国民を惹きつけるのには、「過激派イスラムテロ」に対するトランプの厳しい姿勢も関係しています。
ナイジェリアでは、過去10年間、テロ組織ボコ・ハラム(Boko Haram)による反乱が国の北東部を荒廃させてきました。トランプが、ボコ・ハラムとの戦いを後押しするために、5億ドル相当の戦闘機や軍用機のナイジェリアへの売却を承認したことで、トランプの人気はさらに高まっています。
privileged minority
見落とされがちな事実
トランプのナイジェリアに対する反移民政策は明らかに強硬なものです。そのことで、2019年のナイジェリアの訪米者数は、大きな落ち込みを記録しました。
しかし、その“落ち込み”による影響を受けているのは、この国の少数派である特権階級の人たちだということは、見落とされがちです。
国民の多くが極度の貧困の中で生活しており、中産階級の規模も測りかねる国においては、大多数の人々が海外旅行などには手が届きません。そうした状況において、「反移民政策」が大きな関心事となることは得てして少ないのです。
headlines from Quartz Africa
今週のヘッドライン
- 投票が始まった、SNSをブロックしよう。タンザニアでは、10月28日(現地時間)の選挙を前に、ソーシャルメディアアプリがブロックされています。今回の大統領選挙は非常に緊迫したものになりそうで、投票の数時間前にも、42人の野党活動家がザンジバルの半自治島で逮捕されています。現時点でブロックが確認されているのは「Twitter」「WhatsApp」「Facebook」「Instagram」です。──Oct. 27
- 太陽光発電に追い風。この10年で、アフリカにおける小規模な再生可能エネルギーソリューションは一般的になってきています。その背景には、ソーラーパネルの低価格化だけでなく、決済ソフトウェアや発電量計測テクノロジーの導入コストが下がったことにあります。そうした流れのなか、太陽光発電デバイスメーカーや販売業者に対して、従量課金型の消費者向けサービスを提供を可能にするソフトウェアプロバイダーAngazaが1,350 万ドルを調達。同社の技術は、これまでにアフリカ33カ国で展開されています。──Oct. 27
- ビットコインが抗議活動を最大化する。ナイジェリアの「対強盗特殊部隊(SARS)」への抗議活動において、ナイジェリアの「フェミニスト連合(Feminist Coalition)」は、ビットコインで寄付を受け付け、ジャック・ドーシーの支援も受けました。同連合によると、通常の銀行取引において遅延が発生しており、その原因として当局からの圧力があったとする疑いも広がっています。──Oct. 27
(翻訳・編集:年吉聡太)
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