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ここ数年のアフリカをみるかぎり、テック企業の資金調達は、主にナイジェリア、ケニア、南アフリカがフォーカスされてきました。それでは、フランス語圏の21カ国ではどのようなイノベーションが起きているのでしょうか。その疑問に対する答えのひとつが、セネガルのモバイルマネー企業、Waveです。先週、同社はシリーズAラウンドで2億ドルを調達しました。
Waveの評価額は17億ドルとなり、アフリカのフランス語圏の国として初めて10億ドル規模のスタートアップに。今年、アフリカではFlutterwave(4月)とOPay(9月)がそれぞれユニコーン企業になっていますが、Waveが本格的に事業を開始してから約2年しか経っていないことを考えると、3社の中では最も早くユニコーン企業に到達したと言えるでしょう。
Waveの急速な成長は、アフリカの一般的なスタートアップ・ストーリーとは少し趣が異なります。同社は、2018年、アフリカのユーザーに特化したアプリベースの送金サービスSendwaveを手がけた2人の米国人が立ち上げました。設立当初、Waveは2人にとってサイドプロジェクトでしたが、2020年、SendwaveをWorldRemitに5億ドルで売却した際にスピンアウト。つまり、既存の企業の中でインキュベートされた背景をもった企業なのです(ドイツに本社をもつ「アフリカのアマゾン」ことJumiaのように、Waveをアフリカ企業と呼ぶべきか議論のしどころでもあります)。
Waveを強力にサポートするのがSequoia Heritage、Founders Fund、Stripe、Ribbit Capitalといったシリコンバレーの世界的VCなことからも、いまフランス語圏のアフリカが無視できない市場だとわかります。Partech AfricaのTidjane Dèmeも「この地域には大規模かつ十全なマーケットがある。優れたファウンダーたちの前にはいくつもの機会が転がっている」と語っています。
Stories this week
今週のアフリカ
- 銀行ギライはイノベーションに好都合。西アフリカ・コートジボワールの国民の多くは銀行を信用していません。それは、何年にもわたってサービスの質が低下し、ATMは故障続きで銀行キャッシュカードやローンへのアクセスも困難だったから。だからこそモバイルマネーには大きな可能性が残されていますが、一方の銀行もそれに追いつこうと必死になっています。
- コロナで病気との戦いが後退…。アフリカでは、多くの国でCOVID-19が医療システムを圧迫。HIVや結核、マラリアとの戦いからリソースが奪われています。
- …同時に、旅行者への影響も深刻。従来、西アフリカでは、アフリカ外とのフライトよりも都市間のフライトのほうがはるかに高価でした。COVID-19の検査はこの問題をさらに悪化させており、例えばガーナのアクラからナイジェリア・ラゴスへの往復便の場合、検査だけでも航空券と同額の費用がかかっています。
Charting Nigeria’s love of bitcoin
愛してやまない暗号通貨
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ナイジェリアでは暗号通貨の取引が禁止されています。にもかかわらず、「LocalBitcoins」と「Paxful」の両プラットフォームでは、今年1〜2月に3,200万ドルだったビットコインの取引高が、8月には4,400万ドル以上に上昇しています。そのほとんどが、全世界に700万人、うちナイジェリアには150万人のユーザーを抱えるPaxfulにおける取引です。Paxful CEOのRay Youssefは、ナイジェリアの中央銀行がルールを設定し、取引を禁止する姿勢を見直すことを望んでいます。
Dealmaker
今週のディールメーカー
- 融資・決済のフィンテックスタートアップMNT-Halan(エジプト)が、Apis Growth Fund II、Development Partners International(DPI)、Middle East Venture Partners、Endeavor Catalyst、DisruptTechなど、プライベートエクイティやVCから1億2,000万ドルを調達。同社によると、2018年の設立以来、17億ドル以上を調達しているといいます。
- 車両販売マーケットプレイスを運営するAutochek(ナイジェリア)が、11年の歴史をもつオンラインクラシファイド事業者Chekiのケニア/ウガンダ部門を買収(金額非公表)。Autochekは、昨年Chekiのナイジェリア/ガーナの事業を買収しており、今回の取引によって東アフリカでの存在感を確立したといえます。
- 中小企業向けオンライン銀行Prospa(ナイジェリア)が、プレシード資金として380万ドルを調達。このラウンドには、Global Founders Capital、Liquid 2 Ventures、フィンテック企業Mercury・RampのファウンダーImmad Akhund、Karim Atiyeh、Teachable、Square、Facebook、Nubankの役員が参加しています。
Person of interest
アフリカ旬な映画

1991年のソマリア内戦を描く韓国の新作映画『Escape from Mogadishu』(モガディシュからの脱出)が、同国の今年の興行収入記録を更新しています。この映画は、北朝鮮人と韓国人が共通の目的のために逆境の中で思いがけず行動をともにするというストーリーです。
韓国の映画審議会によると、同作のチケット売上は2,690万ドル(9月12日現在)。話題の大作『ブラック・ウィドウ』『ワイルド・スピード9』よりも公開が遅く、上映スクリーン数も少なかったにもかかわらず、それらの売上を上回っています。
The lingering effects
反ワクチンの遺志
0.5%以下:タンザニアでCOVID-19ワクチン接種を受けた人口
タンザニアといえば、今年3月に亡くなったジョン・マグフリ大統領はウイルスの脅威を軽視し、ハーブ療法や祈祷を推進したことで知られています(故マグフリ大統領は、亡くなる1カ月前にも、ワクチンを購入する予定はないと述べています)。
現職のサミア・ハッサン大統領は、前任者の意思と真逆の姿勢をとっていますが、前政権時代の誤った情報はそれ自体、ウイルスのように拡散してしまっています。COVID-19政策の“Uターン”は、市民がワクチンを接種するよう説得するには少し遅すぎるかもしれません。
Other things we liked
その他の気になること
- 雇われインフルエンサー。Mozilla Foundationの新しいレポートでは、選挙や抗議活動の際に世論を操作するためにTwitterのインフルエンサーが雇われているケニアでの実態が調査されています。『Rest of World』のジャーナリストVittoria Elliottは、これは世界中で急増している「雇われ偽情報」産業の一環であると指摘しています。
- 波に(もっと深く)飛び込む。冒頭で紹介したとおり、シリコンバレーはWaveに大金を張っています。その理由をより詳細に知りたいなら、Founders FundのEverett Randleが投資家の視点から記した情報が参考になるはずです。
- ゾウの赤ちゃんを救うための団結。孤児となったゾウが生き残るのは大変なことですが、ナニアという名の子象はなんとか生き延びました。『The New York Times』のElizabeth Prestonは、DNA分析を使って子象を家族と再会させられるかもしれないという飼育員たちの期待を伝えています。
🎵 今週の「Weekly Africa」は、Mulatu Astatke & The Heliocentrics の「An epic story」を聴きながらお送りしました。
📺 『Off Topic』とのコラボレーション企画、4回連続ウェビナーシリーズの第2回は9月28日(火)に開催。詳細はこちらにて。先日開催した第1回のセッション全編動画も公開しています。